54歩目「予期せぬ援軍」
ある程度バリーたちが距離を詰めた所で、戦いは千日手の様相を呈していた。
バリーたちは鎧と盾、そして『土地平坦』の魔法のお蔭でダメージを負うことはないが、魔法や矢はすべて撃ち落とされあるいは勢いを削がれたり軸をずらされたりして当たらない。
逆に黄の銃撃もバリーたちを足止めるのが精いっぱいで鎧を破壊することも盾を破壊することも、跳弾を使って直接攻撃することもできない。
「ちっ……隠れてないで出て来いよ! チキン野郎共!!」
「攻撃されているのに顔を出すのは間抜けだけです! 貴女のようなね!」
苛立った様な黄の声に、バリーはにやりとした笑みを浮かべる。
持久戦になったら不利なのはどちらなのか、バリーも黄も良く分かっていた。
バリーたちにとっては長引けば長引くほど、装備と魔力を消耗し、さらに亜人種と帝国が結びつくことを許してしまう。
黄にとっては長引けば長引くほど、集中力と魔力と握力と体力が落ちる。
装備の消耗と魔力については、バリーたちの部隊が一週間は補給無しで戦える備蓄がある。
帝国と亜人の結びつきについては悩む必要もない。彼らにとってはどちらも敵だからだ。
黄にとっては四つのうちどれか一つでも下がってしまえば、現在の拮抗が崩れる。
持久戦に持ち込まれた時点で、黄に出来ることは出てくるはずもない相手への挑発と、少しでもこの状況を長引かせることだけだ。
膠着状態を破ったのは、一つの小さな音だ。
腹に響くような重低音を響かせながら、黄の後方、砂を巻き上げながら何かが飛んでくる。
「馬鹿な!?」
あまりにも予想外のことにバリーは帽子を思わず握りしめる。
援軍が来たこと自体にではない、援軍に来た存在が問題だったのだ。
援軍にやってきたのは銀色の物体だ。形状はバリーたちにはうまく説明できない。
木乃美が見ていたらこう言ったことだろう
「バイクと飛行機がくっついたみたいな形」と
地上すれすれを滑るように高速飛行をするその物体は、錬金馬車と同じ動力を持っていた。
発明王トーラが作り出した錬金馬車、正式名称『錬金結晶式自動車両輸送型』は当人曰く廉価版だ。
本来彼女が作り出した物は錬金馬車よりも速くより高出力であったが、それ故に熟練の騎士を初め大道芸人や英雄たちの力を持っても真面に乗りこなすことは出来なかったのだ。
だからトーラは使えない超兵器よりも、使い易い輸送車両を作らざる負えなかった。
唯一作られた『錬金結晶式自動飛行騎・試作一号』は彼女の友人にプレゼントされることになった。
そしてその機械を持て余した友人である宿の主は、馴染みのフリーの運び屋にそれを売り張ったのである。
「女の子のピンチだ! かっこよくいくぜ! ジェラート!!」
運び屋ラドリオ、彼の英雄としての能力は『騎乗する者』ありとあらゆる乗り物を乗りこなす能力である。
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