53歩目「対銃撃陣」
「両馬車停止! 錬金鎧装着し盾役は出撃してください!」
バリーの指示が両馬車に飛ぶ、馬車同士は通信兵と呼ばれる錬金術による通信装置を持った人員がいる為お互いの意思疎通はお手の物だ。
停止した馬車から出てきたのは、人間よりも一回り大きい金属の全身鎧だ。更にその全身を隠せるほどの巨大なタワーシールドを所持している。
これが対帝国用に開発された錬金鎧だ。関節部は勿論、周囲を確保する穴すらない、完全な密閉型。
強度は盾無しでも機械兵の機関銃を数分防げる程度あり、重量は合金のお蔭で普通の金属よりは軽い。
それでも通常の全身鎧以上の重量があるため、魔法によるアシストが視界確保を含め複数仕込まれている。
これ一着で王都で家が一軒建つほどの値段がかかっているのだ。
「魔法部隊、土魔法展開してください」
「「荒涼たる大地よ、我らが命に従い、平坦にみちよ!」」
魔法部隊が使った土魔法は、『土地平坦』と呼ばれる魔法で普段畑を耕す前や家を建てる際に使用される魔法で、言葉の通り『周囲の地面を平たんにする』効果がある。
戦場では穴を埋めるくらいしか使い道のない魔法なのだが、今回の目的は平坦にすること自体にある。
この平坦魔法は、周囲を平坦な土にしてしまうため、小石一つなくなってしまう。
固い障害物がなければ盾役を迂回するようにして跳弾されることは難しいだろう。
「盾部隊は自己修復機能を展開しつつじりじりと前進、土魔法は定期的にかけ直してください。魔法部隊と射撃部隊は曲射で攻撃開始!」
圧倒的な防御力を持つ盾部隊が攻撃を受け止め、その後ろから相手に向けて攻撃をする。
盾には自己修復機能がついており、一か所を攻撃し続けて破壊するような戦法は取らせない、勿論修復に限界はあるが、その限界よりも後衛が敵を撃破する方がまず早い。
これが王国が生み出した、対帝国必勝の陣形『対銃撃陣』だ。
さらに今回は『土地平坦』を使用することにより、相手の跳弾を封じた形だ。
差し詰め『対黄陣』とでもいうべきか。
「バリー隊長、正面から撃たれてる音が止まらない」
「こちら副隊長、こちらも射撃を受けている」
「ひゃっ!? 土魔法の展開感覚を半分にします、今のスピードだと偶に跳弾が」
「くっ 魔法が撃ち落とされる。矢もダメだ」
部下から次々と上がる報告にバリーは冷や汗を流す。
圧倒的に有利な状況で挟み撃ちしておきながら、五分と五分だとは。
「盾の自己修復はどれくらい持ちますか?」
「このペースならまだ半日は持つ」
「魔力の方はどうですか?」
「魔力薬の蓄えは十分です、同じペースでも四半日は」
「持久戦になりそうですね……撃ち落とすのが難しい魔法を試してください」
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