52歩目「跳弾」
身の危険を感じ馬車の中に転がり込むように逃げ込んだバリーの頭を銃弾がかすめる。
さらに御者台に座っていた男も足を抑えながら室内に転がり込んできた。
「いきなり撃たれた、障壁を破ったのか?」
「いえ障壁は健在です」
「じゃあ奴の攻撃は、空間を飛び越えるとでも? 最高レベルの魔法使いでも難しい芸当だ!?」
相手からどのように攻撃されているのか分からず、馬車内の英雄たちはパニックになる。
御者台に座っていなくとも馬車を動かすことはできるが、錬金馬車には前方と後方にしか窓がないため視界の確保が難しくなる。
馬車の横に回られた時点でかなり不利になるが、だからと言って顔を出せば謎の攻撃だ。
「おい、バリー隊長! アンタの目なら銃弾の進路が分かるはずだよな?」
「そうですよ、銃口から発射された弾なら知覚できたはずですよね? なぜ不意打ちするつもりが逆に不意打ちされたんですか?」
混乱の矛先が黙り込んでいるバリーに向けられる。
「見えなかった」
「え?」
「私の武器を破壊した弾の進路は見えませんでした」
バリーの能力、『銃弾予測』は銃口から放たれた弾ならばすべて予測することができる。
超遠距離からの狙撃であろうと、空間を捻じ曲げた攻撃であろうとだ。
バリーの目には銃弾が進むであろう進路が彼だけに見える線という形で現れる。
この線を見逃さなければバリーに対して銃弾の攻撃は無意味だ。
「……そうか、跳弾ですね」
銃弾予測を銃撃で突破する方法は無いわけではない。
一つは対処できないレベルで連続、あるいは広範囲に銃弾をばらまくこと。
いくら銃弾がどのように飛んでくるか理解していても避けられなければ意味はない。
もう一つは跳弾、障害物などに当たり跳ね返った弾を使用する方法だ。
銃弾予測が予測するのは『弾が何かに当たるまで』の予測だ。
一度当たってしまった弾は予測することができない。
「相手は跳弾を操れる、もしくは跳弾を狙ってできるほどの精密射撃のできる能力なのでしょう」
「そんな相手にどう対応するつもりだ?」
「いつもと同じです。いくら跳弾を使おうとも隙間がなければ支給された鎧で防ぐことができます。
前衛で魔法使い部隊を囲み、銃弾を防ぎつつ高威力広範囲の魔法を叩き込みます」
王国部隊の対帝国機械兵必勝法は二つ。
先手必勝で高威力魔法を叩き込むこと。
そしてもう一つが、先ほどバリーが提案した銃弾を防ぎつつ魔法使いによる攻撃を敢行する方法。
『対銃撃陣』と呼ばれる方法である。
いつもお読みいただきありがとうございます。




