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5歩目「記憶と回復」

 先ほどの様にあまりきょろきょろしていると、また余計な連中に絡まれるかもしれない。自然にウィンドウショッピングをしている風を装いながらだと目的地を探すのは時間がかかる。地図か何かをもらっておくべきだったかと後悔しつつ、マルスはふと気になったことを木乃美に尋ねた。

「そういえば、お前。この前から一体何の本を読んでいるんだ?」

 木乃美が出発してからずっと読んでいる三冊の本は、桃色の蜂蜜亭での悲劇が起きる前日にマハリから受け取っていたものだ。マルスも暇つぶしに一冊読もうかと思ったが自分の細腕では本が重すぎる、机があるならばともかく移動中の馬車の中では読んでいられなかったのだ。

「えっと……近接武器とその運用初歩、王立魔法学校魔法基礎、近代における戦略の基礎、の三冊だけど」

「ジャンルも何もバラバラだな。娯楽用って訳でもないしいったい何のためだ?」

 ずいぶん熱心に読んでいると思ったら随分と分かった本だったことにマルスは驚いた。役に立たないとは言わないが直接戦うことのない木乃美には不要なようにも思える。他の『人格』ならばそうとも思えないが。

「……お前、記憶は共有しているのか……なるほど」

「うん、先生……あ、私の世界にいた担当のお医者さんは、記憶を共有しているのは珍しいって言っていたけど。私たちの場合は細部まできちんと共有しているから私が読むことであの子たちの力になるの」

 彼女の別人格の中でも比較的真面、とマルスは思っている三人はそれぞれ近接、知能、魔法のエキスパートではあるが、圧倒的に経験と知識何より戦意が不足している。最後の一つはマルスにもどうにもできないが、後の二つは本のお蔭で多少は補うことができるかもしれない。

「ああ、アイツらと言えば……怪我の具合はどうなんだ?」

 前回の戦闘で判明した、というより最初の戦闘の時にマルスが確認することを失念していたのだが、あの三人は戦闘不能になるようなダメージを受けると自然と木乃美の中に戻ってしまうが、戻ってすぐまた出てこられるわけではないらしい。普通の人間と同じように回復する時間が必要なのだ、最も普通の人間よりははるかに短い時間で回復するようだが。

「うん、青も緑ちゃんも、もう出てこられそう」

「赤に遅れること二日か……やはり怪我の種類や具合で回復する速度に影響するみたいだな」

 前回のダメージは、赤は首の骨折と全身の打撲、青と緑は致命傷となる首と心臓へのナイフの一突きだった。どれも即死級のダメージであることには違いないが、後者の回復が遅れたのは出血も関係しているのではないかというのがマルスの推測だ。

 なんにしてももしもの場合に『一番やばいアイツ』に頼る事態はこれで回避できそうだ。


「あれ?ここじゃないマルス君」

「おっと、考え事をしながら歩くモノじゃないな」

 木乃美の人格の怪我について考えているうちに、いつの間にか合流場所の宿屋についていたようだ。


「ん?」

 宿に入る直前に木乃美がふと背後を振り返った。また気になる物でも見つけたのだろうか?建物の入り口に突っ立っていてまた絡まれても厄介なのでマルスは上でを引っ張って木乃美を急かす。

「いいから早くいくぞ」

「あ、うん」


こういうなんでもない会話だとサブタイトルを付けるのが大変です。

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