46歩目「交易の真似事の詰め」
岩を削っただけの粗末な机の上で、ゴブリースの持ってきた資料。マルスが知る物に比べれば大分劣るがしっかりとした紙を見ながら、マルスは話を詰めていく。
交易ではなく人の運搬が主なラドリオは補助に、木乃美は後ろからそっと見守っている状態だ。
「ほう……思ったよりも鉄や銅の産出量が多いな……わずかではあるが希少鉱物もでると」
「ただこちらは帝国との交易に使えるかどうかは微妙ですな、僅か過ぎて小鬼ないで消費する分も不足しているほどですし」
ゴブリースの資料は、小鬼の癖字で少々読みにくかったが必要なことはしっかりと書かれていたようで、マルスは細部まで目を通しながら話を進めていく。
「やはり木材と穀物は不足気味か……反対に魚と肉は多いな」
「穀物の変わりは洞窟芋があります。魚と肉はゴブリアス様が持ち込んだ本を元に、畜産と養殖がおこなわれております」
洞窟芋は暗い所でも育つ芋類で、味は良くないが大量に身を付けることで有名らしい。
「ゴブリアスさんは随分となんというか……」
「小鬼らしくない?」
戦士だけではなく学者?としても有名らしいゴブリアスへのラドリオの感想に、ゴブリースハ苦笑いしながら補足した。
「ゴブリアス様はあるいは小鬼の進化種、あるいは小鬼の姿をした別の種族だったという言い伝えすらあります。及ばずながら小鬼らしくない学を持っている私ですら、遠く及ばない英知の持ち主のようですから」
「すごい人だったんだね」
感傷に浸るゴブリースと木乃美たちを見ながら、マルスは咳払いをして話を元に戻す。
「こほん……で小鬼側が欲しい物の優先順位としてはやはり野菜や果物、次いで木材というところか?」
「そうですね、後は金属の加工品や宝飾類もほしい所ですが、この辺りはなくとも困らない物ですし。ただ果物についてはサボテン苺がありますから、もう少し優先順位を下げてもいいでしょう」
「ほう、そういう苺があるのだな」
ちなみにサボテン苺は、味と栄養が苺に似ている赤いサボテンなのだそうだ。
「まとめると、こちらから出せる物は、鉄や銅、サボテン苺……奥の手として精霊の石というところか」
「精霊の石はできれば放出したくはないですが……そこは交渉の腕次第と言ったところでしょうね」
「まあ交渉だったら俺に任せておきな……こう見えてもフリーの運び屋として交渉の場数は踏んでいるんだ」
交渉の内容をまとめる男性陣を見ながら木乃美は少しだけ残念そうな顔をする。
「今回は私は役に立ちそうにないね」
「なに、その方がいい。荒事がないってことだからな」
いつもお読みいただきありがとうございます。
六月に入ったら不定期で別のお話を描こうかと思います。
ジャンルはローファンタジー、現代(ちっくな世界)に転生した元魔王様が主役の予定です。




