46歩目「交易の真似事」
翌日小鬼の指導者、ゴブロンというのだが、彼から一人の小鬼を紹介された。
小鬼にしては珍しく、動きやすさよりも見た目を重視するきっちりとしたシャツを着こみ、眼鏡をかけている。
「彼はゴブリースという、帝国といち早く商売を始めた小鬼じゃ」
「ゴブリースと申します、人族のお客様」
ゴブリースが丁寧に握手を求めてくる。
木乃美たちから見てもとても頭が良さそうに見える小鬼だ。
「彼は生まれつき頭が良くての、彼のお蔭で採掘や農業や狩りが大きく進歩したんじゃ」
「他の種族の良い所を真似ただけです。自分で考えだしたことは殆どありません」
自慢の息子を紹介するかのように自慢げにゴブリースを紹介するゴブロンにゴブリースは恐縮するように縮こまっている。
「身内自慢は結構なのだが、帝国と商売ができているなら俺たちは必要ないんじゃないか?」
「それはそうとも言えないのです」
ゴブリースはため息をついた。
「私と帝国との取引は小さい機械の馬車を通じて行っているのですが、大した量は運べないうえ、取引は機械が行います。私も何度か取引量の拡大や、実際に会っての取引を希望したのですが」
「拒否されたと?」
「はっきりとは申されませんでしたが、どうしてもというならば人族の代理人を立てよと」
小鬼たちにとっては無理難題だろう。王国はゴブリンを毛嫌いしているし、帝国の人間は機械兵に守られており近づくこともままならない。
運よくどちらかから人を確保できたとしても、信用がなければ任せられない。
そして亜人族の多くは信用は己の強さで勝ち取る者である。
確保されてきた……ようは小鬼に捕まるような人間では彼らも、そして恐らく相手も信用しないのだ。
「なるほどな」
「早速ですが勇者様方、ゴブリースと共に帝国への交渉へと赴いていただきたいのですが」
「待て」
にこやかに4人を送り出そうとしたゴブロンにマルスが待ったをかける。
何事かと驚いた顔をしているゴブロンを無視してマルスはゴブリースに話しかけた。
「商人というならば文字や数は分かるな? 調べてほしいことがある。この都市の鉱物の産出量と消費量、後は交易に使えそうな品物のリストとどれだけ出せるかの個数……あとは小鬼全体で何が不足しているか知りたい」
「……おお」
感心したようにゴブリースが眼鏡の奥で目を見開いた。
「其方の方は、思った以上に知恵が回るようですね。見た目の年齢よりも長い年月を過ごした所属なんですか?」
「なに、故郷で領地の管理の手伝いをしていた時に交易についても多少齧った程度だ」
「さようですか……鉱物関係の資料は用意してありますが他は盲点でした。すぐ調べてきます」
ゴブリースが張り切って出ていくのを見ながら満足げに椅子に腰かけるマルスに木乃美がそっと話しかけた。
「……本当に貴族様だったんだね」
「貴族じゃない……皇族だ」
いつもお読みいただきありがとうございます。
このお話は異世界召喚物として大分テンプレを外していることに最近ようやく気付いたのですが、皆さん楽しんで頂けているのでしょうか?よろしければ感想等よろしくお願いいたします。




