43歩目「衝動の産物」
前半は昨日に入れれば良かった。
「おお、やっていただけますか!」
「おい、まだやるとは―――」
マルスが制するよりも早く、小鬼の指導者は部屋中に聞こえるような大声で叫ぶ。
「聞け皆の衆! 勇者殿が帝国との橋渡し、引き受けてくれるようじゃ!!」
「「「うおおおーーー!!!」」」
言質を取られ、それをあっという間に周囲に広められる。マルスが口を早む余裕すらない。
「腐っても為政者ということだな……一本取られたけどどうするよ?」
「……えっと……ごめんね?」
未だほろ酔いで楽しそうなラドリオと、申し訳なさそうに木乃美に、マルスは大きくため息をついた。
「まあ、その案は悪くないと思っていたからな。どうにかして見せるさ」
―――
深夜就寝前の木乃美に断りを入れて、マルスは再びあの場所を、木乃美の心の円卓を訪れていた。
「随分遅かったじゃない、お楽しみだったみたいね?」
「まあ偶には地方の味も悪くない」
闇の若干卑猥な発言を真面目に返すマルス、こいつ若干木乃美の能天気がうつったか? と闇はため息をついた。
円卓には、外に出てくることのできるはずの赤やあの黄色い少女はいない。
足に痛々しく包帯を巻き何かで固定してあるらしい闇が、足を円卓の上に投げ出して不機嫌そうに座っているだけだ。
木乃美はいつも通り玉座で眠りについている。
「あの五人目について聞きたい」
「なに?アンタああいうタイプが好みなわけ? スリーサイズとか好きな食べ物は本人に聞きなさいよ」
マルスの質問に闇は冗談を言って顔を背けた。
どうやら半端に怪我をしたせいで相当機嫌が悪い様だ。
「そうじゃない……恐らくだがあの五人目と撃ち合った王国の英雄が出てきたら赤じゃ勝ち目がない。お前もしばらくは出られないだろう? どういう奴か知っておきたい……それに……」
「それに?」
「何だろうな? あいつは赤たち三人ともお前とも違う気がするんだが」
観察するように闇を見つめるマルスに、闇は楽しそうに笑いかける。
「意外と見てるじゃない……いえ、為政者の卵としての直感かしら? 確かにあの信号機トリオとは違うわね。あれは基本そこの黒を守ろうとして生まれた存在。一番御しやすいけど一番弱い人格ね」
まあ本当に御しやすいかどうかは今のあたしにもわからないという台詞を飲み込んで闇は続ける。
「あたしは、所謂本能が呼び覚ました人格。だから抗う力は強いわよ? 最も御すのは不可能だけど。もし本当に邪魔ならマルスでも殺すから」
「どれは言われずとも知っている。それで?あの女はどうなんだ?」
マルスに問われ闇は視線を黄色い扉へと移す。
「あれは衝動から生まれた存在。あたしより総合力は弱い、だけど特定の場面ではあたし以上の力を発揮する。それが『黄』って女よ」
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