40歩目「宴」
「試練の勝者にして新たなるチャンピオンに……乾杯!!」
「かんぱーい!!」
唖然とする木乃美と憮然とするマルス、そして同じようにはしゃぐラドリオの前で宴が始まった。
オグリアスに勝利した後の小鬼たちの態度の変わりようはマルスが驚くほどだった。
敵に向ける物から、尊敬すら含んだ眼差しへ。
直接戦った赤こと木乃美だけでなく、その仲間である(と認識されている)マルスたちに対しても同じ態度を向けて来たのだ。
一部の小鬼はなぜかマルスに色目を使いだしたのでマルスは不機嫌だったが。
「おう、飲んでおるか? 『勇者殿』」
「えっと……オグリアスさんでしたっけ? これは一体……」
未だ無理矢理渡された杯を持ったまま固まっていた木乃美に、治療を終えたばかりのオグリアスがにこやかに話しかけてきた。
「なにって宴じゃよ、お主たちを歓迎するためのな」
「はぁ」
未だ混乱しているのか口数の少ない木乃美をオグリアスは横目で観察する。
あの試合が終わった後オグリアスの目の前で世界がぶれて彼女が現れた。
寸分たがわぬ位置に、そのうちに内包する力は間違いなく先ほどと同じ少女であるのに姿かたちが違うことにオグリアスは初めは戸惑ったのだが、すぐにそういうものかと気にしないことにした。
どちらにしても彼女が自分を倒したことには違いないからだ。
「こいつが言いたいのは、なんでこんなに歓待されているのか?ってことだ大鬼。先ほどまでは親の仇を見る様な目立ったのに、今は勇者様に騎士様に賢者様だ。ふざけているにもほどがある」
「さすがは『賢者殿』小難しいことを気にしおる。一つは小鬼という種族……いや亜人種というやつは強き者には敬意を払うのじゃ。それが腕力であったり知恵であったり魔力であったりはするがな」
ちなみに騎士様はラドリオのことである。
「そんなことは分かっている……そうじゃなくてなんて俺たちは勇者だ、賢者だと持ち上げられているか? ってことだ。第一なんで此奴が勇者で、俺が賢者なんだ?」
「それはおいおいわかるじゃろう。そしてお嬢ちゃんが勇者なのは戦ったのがお嬢ちゃんだからで、お前さんが賢者なのは、額に都市不相応のしわがあるのとそれ以外の職がしっくりこないからじゃよ」
はっはっはと笑い声をあげるオグリアスに、マルスは無言の抗議として足に蹴りを入れる。
まるで岩を蹴ったようにまるで効いている感じがしなかった。
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今日は短めです。




