38歩目「オーガと少女の空中戦」
攻撃が振り下ろされた瞬間、赤が取れる行動は辛うじて二つ程度だった。
確認して、受ける。あるいは確認して避ける。
確認という行動が無ければ相手の攻撃がどういうものか判断できないし、確認すると確実に行動は一歩遅れる。
そして受けることは勿論、ギリギリのタイミングで避けることすら赤にとっては致命的なダメージなる。
オグリアスの読みではこの時点で赤は完全に詰んでいた。
筈であった。
突き飛ばされてまず赤がやったことは地面を殴りつけることだ。
負けた悔しさに地面を叩いたようにも見えたが少し違う。彼女はその衝撃で尻もちの状態から、前傾姿勢へと無理矢理体を起こしたのだ。
さらに地面に一撃を加えつつ前方へ身を投げ出すように跳躍した。
ここまで一切オグリアスの動向を確認していない。
仮にオグリアスが赤を突き飛ばした後、体勢を立て直していた場合彼女は無防備にその前面に飛び出したことになる。
仮にオグリアスが振り下ろしではなく横に薙ぐように棍棒を振っていた場合、彼女は頭から棍棒に突っ込む結果になっていただろう。
オグリアスはその行動に顔を歪ませる。それは彼女が、攻撃を確認するまでもなくオグリアスの行動を読んだ。
そのようにしか見えない行動をとったからだ。
実際赤にそこまで確信があったわけではない。唯彼女は軍神の能力として与えられた戦術眼から導き出した一つの可能性に賭けたのだ。
その結果、彼女はオグリアスの渾身の一撃をすり抜けながら、空中にいて身動きの取れないオグリアスの真下にいる。
「うりゃ!」
そのまま地面を殴りその勢いで反対のひじをオグリアスに叩き込む。
「ぬぐっ」
咄嗟のことで気甲拳を使うこともできず、真面にひじがオグリアスの腹に叩き込まれその体が浮き上がる。
「まだだぁ!」
さらにオグリアスが僅かに浮かびあがった落下中に着地した赤が両腕で渾身の突き上げを叩き込む。
「ぬうう」
今度は気甲拳を使い防御することができたが、先ほどの一撃のダメージが響きその部分だけ通常の半分ほどしか防御力を上げることができない。
「まだまだぁ!!」
空中で回避ができないオグリアスに、赤のアッパーが叩き込まれる。
先ほどよりもダメージは軽減できたが、さらにオグリアスの体は浮き上がり、闘技場の一番高い席からでも見上げるほどとなった。
オグリアスは痛みに顔をしかめながらも、棍棒をもう一度握りしめる。
先ほどの数回の攻撃で攻撃の軌道は見切った。空中にいる間回避ができないのは赤も同じことだ。
「(くるがいい……次は叩き落してくれよう)」
跪き、ジャンプと同時に地面を叩きつけ今まで以上の速度で迫ってくる赤に驚きつつも、オグリアスは
先ほどまでの軌道に合わせる様に棍棒を振り下ろす。
闘技場に何かを叩きつけたような大きな音が響き渡った。
昨日は完全に寝坊しました。
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