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39歩目「長期戦の不利」

「やああ!!」

 再び赤の一撃がオグリアスに突き刺さるが、同じように気甲拳で止められる。

 今度は赤はそれで止まらず相手を翻弄するように連続で攻撃を繰り出していく。


「ダメだな、ほとんど効いてない」

「そりゃ女の子の細腕……って最初は殴り飛ばしていたよな?」


 ここで改めてマルスはラドリオに赤のことを説明する。

 その間にも、赤はオグリアスの大振りの攻撃を避けながら何度も攻撃を与えているが、やはりびくともしないようだ。


「へえ、軍神とはまた……とするの今の木乃美ちゃん……じゃなくて赤嬢ちゃんの攻撃は一発一発が大砲みたいなもんだろ?それが効かないとなると……やばいんじゃないか?」

「ああ、このままだと赤のスタミナが切れる。あっちの大鬼(オーガ)はそれまで適当に弄っておけばいいって話だ」


 ちなみに赤ちゃんでなく赤嬢ちゃんなのは、前者の呼び方だと赤ん坊と紛らわしいからだ。


 マルスの指摘通り、オグリアスの攻撃は当てる為というよりも赤をより焦らせるためのようだ。

 オグリアスの大振りの攻撃は、たとえ掠っただけでも赤の体勢を崩してしまう。

 赤はダメージを受けないためにも大きく回避せざる負えない


「でも赤嬢ちゃんの能力は軍神なんだろ?最強の肉体強化系能力がこうもあっさりと」

「地の力が違い過ぎるんだ。前の時もそれが原因で負けたからな……あっちの大鬼(オーガ)がどんな能力かは知らないが、あの腕力は既に赤を超えているらしい。殴られても負け、組みつかれても負け、おまけにこっちは打つ手なしか」


 周囲から見て圧倒的に優位に見えていたこの戦いだったが、実はオグリアスは内心焦っていた。


「(ぐぬぬ、なんと重い攻撃じゃ。僅かづつではあるがこちらの防御を超えてきておる)」

 全く効いていないように見せたのはハッタリ。実は少しづつダメージが蓄積されてきていた。


 というのも赤は先程からオグリアスの腹の下、人間でいうところの鳩尾あたりを執拗に攻撃してきている。

 単にちょうどいい高さがそのあたりなのか、狙っての行動なのかはオグリアスには分からない。

 幸いいまだクリーンヒットには至っていないが、そこにこの重い攻撃を叩き込まれたらさすがにオグリアスもノーダメージのフリは難しいかもしれない。

 ほんの僅かでも違和感を覚えれば、目の前の少女は容赦なく集中攻撃をしてくるだろう。


 いつの間にか長期戦を仕掛ければ不利なのはオグリアスの方になっていたのだ。


「(幸い嬢ちゃんは此方の本気をまだ知らん……一気に叩き潰す)」


 瞬間今まで鈍重にも見えたオグリアスの動きが目に見えて早くなった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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