34歩目「オグリアスの気甲拳」
「オグ!オグ!オグ!」
大歓声を受けて闘技場に上がった大鬼は赤を見た途端に怪訝な顔になる。
「なんじゃい、『強者の試練』を受ける者と聞いてどんな屈強な男か、あるいは無理やり試練を受ける恐怖に震える女子かと思っておったら……お嬢ちゃんは随分楽しそうじゃな」
「どうなんだろう? どことなく高揚感はあるよ?」
赤本人は気づいていないが、彼女の中の軍神が高揚感を生み出していた。
赤は元々『守るため』に生まれた存在だ、そこに戦術の本に書かれていた『攻撃は最大の防御』概念が加わり赤は変わろうとしていた。
肉体を得たことで彼女たち成長を始めたのだ。
「はっはっは、そうかそうか元気があるのは良い。しかし人間の女児では俺の相手は難しいかもなあ。よし! ハンデをやろう、まずは一発ぶち込んで来い」
オグリアスとしてはすぐに終わってはつまらない、その程度の発言だ。自分が負けるということは想像もしていない強者の発言でもある。
赤はそれを『自分を軽んじた』と感じたようだ。
「僕そういうの嫌いだな……僕らが舐められているみたいでさ!!」
ゆっくりと近づいて行った赤が腕を大きく振りかぶる、完全に油断して武器を持つ腕ごと両腕を広げて待ち構えるオグリアスに強烈な一撃が叩き込まれた。
「ぐっ!?」
オグリアスの巨体が闘技場の壁に叩きつけられ、周囲の観客の声が途絶えた。
自分の数倍はあろうかという巨体を少女が殴り飛ばしたのだ、あまりの辞退に誰もが言葉を失った。
「はっはっはっはっはっは!!」
沈黙を破ったのはオグリアスの笑い声だ、大したダメージも受けていない様に立ち上がると、気を引き締める様に自身の頬を叩く。
「俺としたことが、アグリアス兄いの教えを忘れていたようだ。『真に見るべきは相手の体格でも武器でも防具でも……ましてや性別や種族などではない。そのうちに潜む生命力そのもの』だと」
赤を見るオグリアスに先ほどまでの油断したような表情はない。
「……お前の中に信じられないほどの生命力が溢れているな。しかも複数の生命力が縺れ合う様に……何者じゃお前は……英雄というだけではないな?」
対する赤は肩をすくめて、ファイティングポーズをとる。
「僕は赤、黒を守るために生まれた盾。それだけだよ」
オグリアスが雄たけびを上げながら走り出す。並の兵士ならばその光景だけで逃げ出しそうだ。
赤に近づき大ぶりの一撃が繰り出される、その一撃を赤は少々怪訝な顔をしながらも内側に入り込むように掻い潜りカウンターでもう一撃を与えようとした。
「気甲拳!」
オフリアスの叫びと共にうっすらと体が光る。
「あれは……小鬼たちが機械兵の攻撃を防いでいたとの同じ方法か!」
思わぬ固さに、赤の体が止まる。その隙を狙っていたオグリアスの第二撃が赤の体を吹き飛ばした。
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