30歩目「会議は踊る」
護送してきた小鬼のこれまでの経緯を聞いた部族会は大いに荒れた。
それは彼らがこれまで人間に対して行ってきた行為に原因がある。
これまでは捕まえた人間の末路は三つしかなかった、放逐か人質か処刑である。
放逐は簡単に言えば適当に持ち物を奪って外に放り出すことだ、最近はあまりいないが村に迷い込んだ悪意無き人間に対する行為である。
荷物を奪うのは戒めのためだ、二度と危険な所に踏み込まぬよう、道に迷うような失態を踏まぬよう入念に準備せよという彼らなりの優しさなのである。
人質は文字通り王国や帝国への人質とすることだ。
人質になるような人間は限られる、ヒラヒラした服を来た者や豪華な馬車に乗った者……要するに金持ちだ。
彼らの解放の代わりに人間にしか扱えない食料や香辛料、或いは金属などを要求するのである。
処刑は文字通りの意味だ、大半の人間は処刑されることになる。
何故なら人間と小鬼は殆ど敵対していると言って良い状況だからだ。
特に英雄たちの中には小鬼を理性も何もない残虐な魔物だと思っているものが多い。
あるいは裏で国の指導者達がそう吹聴しているのかもしれないが、それは彼らには分からないことだ。
襲ってきた者は殺す、彼らにとってはこれもまた当然のことだった。
しかし今回の彼らは扱いが難しい。それゆえに彼らは揉めたのだ。
「状況は兎も角彼らは迷い人なのでしょう? ならば放逐でよいのでは?」
穏健派の部族がまずそう切り出した。
基本的なこととして三つのうちどれを選ぶかといえば放逐だろう、彼らの通っていた場所は小鬼の勢力下ではないが、活動圏内ではある。
迷い込んだ罰として馬車と荷物を奪い外に放逐するのが一番かもしれない。
「馬鹿な! 彼らにはこの聖都を見られているのですぞ! それにその人間の女は機械兵を蹴散らし、王国の英雄を抑え込むほどの実力者。復讐に暴れられる前に処刑すべきだ」
武闘派の部族はそう切り返す。
今まで聖都に迷い込む人間は居なかった。場所は知っていたが正門を突破する手段がなかったからだ。
そして帝国と王国に追われる彼らにとってここは文字通り最後の砦だ。
その情報を知る人間を生かして返す理由がないというのも事実であった。
「待て待て、そもそも彼らは我らを助けてくれたのだぞ? 恩人に対して剣を向けるのが我らの礼儀ではないだろう……前例はないが客としてもてなすべきではなかろうか?」
そう切り出したのは人間と取引を行っていた部族だ。
成り行きとはいえ木乃美が彼らを助けたのもまた事実、ここで彼らを殺しては自分たちで小鬼は野蛮な魔物だと認めることになる。
部族会は揉めた、一つが正解で他が間違っているからではない。
どれも正しいからこそ彼らはもめにもめたのだ。
「……長いな」
「そうだね」
付き合わされるマルスと木乃美にはたまったものではなかったが。
「……このままではらちが明かん……どうだね?偉大なる小鬼の部族長たちよ。ここは昔ながらの『強者の試練』で決着をつけるというのは」
あるいは彼もそう思ったのかもしれない。長いと。
今まで沈黙を保っていた小鬼の指導者の鶴の一声が会場に響いた。
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