28歩目「余所者たち」
聖地ンデルナは巨大な精霊石を見上げる様に人工的に掘られた空洞のようだった。
いったいどれほどの時間と労力を使って作り上げられたのかは分からないが、その壮大な風景は木乃美たちの口をふさぐのに十分だった。
「ふふ、圧倒的な光景に言葉もないのは分かるが早く進んでくれ」
三人の驚いた様子に気を良くしたのか小鬼の態度が目に見えて柔らかくなる。
警戒するように前後を挟まれているのは間違いないが、武器を突きつけられることはなくなった。
ここまでの道中で事あるごとに槍で突かれていたマルスは小さな切り傷があちこちに出来たようで忌々しそうに歩いている。
「……くそっ、こっちは傷だらけだ」
「後で治療するね」
ラドリオの馬車がすれ違えるほどの大きな坂をゆっくりと下っていくと、上から見えていた大通りと思しきところを通りかかる。
住民たちには木乃美たち人間が珍しいようで、ひそひそと声を潜めながら遠くから様子を窺っているようだ。
「どうも~お騒がせしてま~す、こんにちわ~」
「……ふん」
ラドリオがおどけた声で小さく手を振りながら挨拶をするが、声をかけられた小鬼は小さく鼻を鳴らして家の中に引っ込んでしまった。
友好的ではないようだな……だからか?」
「え?」
「子供が……多分子供なんだと思う小さい個体が妙に少ない」
扉の陰から、あるいは窓の向こうからそっとこちらを覗き込んでいる小さな小鬼が何匹か見えるのだが、その数が妙に少ないようにマルスは感じた。
これだけ大きな集落、いや都市ならばもっと子供がいてもいいような気がするのだが、その割にこちらを覗いている子供は少ない。
友好的でない態度から子供たちに出てこない様に言い聞かせているのかもしれないが、本当に少ないのか見えていないだけでたくさんいるのかは木乃美達には分からない。
大通りをしばらく進むと十字路のようなところに出た。
正面は上から見て一番大きく見えた神殿のような場所で、左右にもいくつか大きな建物があるようだ。
「お前はこっちだ」
「え?」
十字路まで来たところで馬車だけが右折させられる。どうやらラドリオとは別行動になるようだ。
「あの……私たちはどこに連れていかれるんですか?」
「お前たちの処遇は難しい……人間は敵だ、敵ならば死刑。だがお前たちは人間の敵でもあるようだ。俺たちの祖先の言葉にこうある『別の部族同士で争っていたとしても、狼が来たら協力しなければならない』お前たちの処遇は我らの王と部族会できめる」
小鬼が神殿を指さす。
どうやら木乃美たちの運命はあの中に居るという王と部族会とやらの手に握られているようだ。
読んでいただきありがとうございます。
近々章ごとにまとめて一つの物語に変更しようと思っております。その方が読みやすいように感じましたので。




