27歩目「聖地、ンデルナ」
「お二人さん、大丈夫か?」
「話しかけるな、ちょっと刺されただろうが」
王国の英雄を退けた後俺たちは小鬼たちに大歓迎……されるはずもなかった。
先ほどまでは数人がこちらを囲むように監視する程度だったのだが、今は槍を構えた小鬼たちに周囲を囲まれながら歩いている。
馬車の上から足を負傷した小鬼が弓を構えている徹底ぶりだ。手をほんの少し動かしただけで槍で突っつかれる始末。
「いいか、動くなよ、後あのへんな魔法も禁止だ」
「分かりました……あの流石に後ろ歩きは危ないと思うけど」
「だ、だまれ!」
木乃美の方も大体同じような状況だがあちらは槍の有効範囲の少し外から囲むような感じだ、しかも前からも後ろからも。
マルスを囲んでいる小鬼たちに比べても行動がぎこちない。明らかに木乃美の力に恐怖を感じているのだ。
帝国の機械兵を撃退しただけでなく、王国の英雄たちを一人で撃退したとなれば当然の処置かもしれないが。
そのしわ寄せが自分に来るのはやめてほしいものだとマルスはため息をつく。
「おいうごくな!」
「息ぐらいはかせろ!」
小一時間ぐらい歩いていくと巨大な岩製の門が見えてきた。谷の突き当りにあり谷を塞ぐほど大きい大門は細かく文様が掘られており唯の門ではなく彼らの力を見せ付けているようにも見える。
「どうやってあけるんだ?」
「王の門が空くわけないだろう、横の兵の門から入るんだ」
どうやら横から普段使っている門があるらしい、部外者に場所を教えるつもりはないらしくマルスたち全員は目隠しをされる。
岩の擦れるような音と金属のきしむ音を聞きながら歩を進めていくと、目隠し越しでも分かるほど周囲が暗くなる。
目隠しを外されたマルスたちの目に映ったのは、光る鉱石に照らされた洞窟だった。
「この先が我々の最後にして最大の都市だ、歩け!」
谷の中にある町など谷の上から攻撃してしまえば終わりかマルスは思っていたが、どうやら町時代は地下にあるようだ。
道の横に松明の様に掲げられている鉱石が、この辺りの主要な光源らしい。
「おい……あの光っている石は何だ?」
「ふん、人間は精霊の石も知らないのか」
自分たちのテリトリーに入って安心したのか、あるいはマルスが知らないことに優越感を覚えたのか、小鬼は先ほどよりも落ち着いた態度で質問に答える。
「あれは精霊の石、精霊の魂が眠っていて、俺たちが力を注ぐと光る」
「ふーん(ようは魔力だか気力だかしらないが、生命力を注ぐと光る石か)」
「……すごい」
小鬼と雑談していたマルスは、木乃美の息をのむような声を聞いて正面に目を向けた。
「……確かにこれはすごいな」
天井には精霊の石、しかも通路に掲げられている物よりも数千倍はあろうかという巨大な石が大きな空洞内を照らしており、岩を削ったような大小さまざまな家が立ち並んでいる。
中でも目を引くのは円形の闘技場なようなものと、石造りの巨大な建物だ。
「ようこそと言っておこう、俺たち小鬼の聖地、ンデルナだ」
形を整えるのは時間がかかりそうです。
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