24歩目「黄色い少女」
勇者組合から派遣された部隊の隊長を務めていたのはライオット・サーフ、発明王の弟子のひとりでありその中で最も戦闘に優れた青年だった。
ライオットの目の前でその不可解な現象は起こった。
強烈な砂嵐が一瞬だけ目の前をよぎったような感覚、その感覚が薄れた後目の前の状況は一変していた。
ライオットが銃を、正確に言えば師匠謹製の錬金銃を向けていたのは一同の中で最も大人しそうな少女に対してだった。
無論撃つつもりはなかった、怯えている様子であったのでそれを逆手にとって交渉を優位に進めようと思ったのだ。
その少女は突然別人に変わった。そうとしか言いようがない。
特殊な転移魔法かあるいは能力か、それは定かではないが自分たちの誰にも気づかれることはなく目の前の彼女は入れ替わったのだ。
目立つ特徴はその色だ、ライオットが彼女を見てはじめて思ったのは「まるで蜂のようだ」という感想だ。
上下ともにどぎつい黄色に黒のラインの入った服を着ている、一見して素材までは分からないが伸縮性が高く動きやすそうだ、その点頑丈さは見られないので運動用の服装だと思われる。
そして日光の元輝く金髪にやや小麦色の肌と黄色い目、その瞳が容赦なくライオットを見据えている。
年の頃は14~5さい、見た目は勝気そうなところ差し引いても美少女と言えるだろう、体の凹凸は色気があるというのは足りないが野生の獣のような美しさがある。
ここまでなら運動が得意そうな唯の少女だ。
問題は彼女の装備にある、彼女の腰に二重に巻きつけられたガンベルトとホルスター。
間違いなく彼女はライオットと同じ銃使いだ。
「なあ、お前」
少女が短いながらも鋭い語調で言葉を発する。そこから感じられるのは怒りだ。
自分が襲われたからか、それとも自分が追われていることに対する怒りだろうか?
そう思っていたライオットの予測は外れた。
「人様に銃を向けておいて……脅しでしたで済むと思ってんのか?」
言葉と同時に彼女の手が動き出す、至近距離で頭に銃口を向けられているのにもかかわらずだ。
驚いたライオットの反応は当然遅れる、そして迷いながらも少女の動きを制するため銃口を相手の腕に合わせようとした。
その瞬間一筋の線が自身の頭を貫く。
ライオットの英雄としての能力は『銃弾予測』銃弾やそれに準ずる飛翔物に限りの未来予測のような能力、その能力が彼に銃弾が自身の頭に対して、正確にはその右目に対して撃ち込まれると予測する。
どこから?当然目の前の少女からだ。
少女が腰だめに構えようとしている拳銃からその予測された弾道の線は伸びている。
自信と同等かそれ以上の速度の早撃ち、今から腕を撃っても相打ちになる。
本来ならばそうなるはずだ、しかしライオットにはその弾道が見えている。見えているならば躱せばいいだけの話だ。
ほぼ同時に放たれた弾丸をライオットは紙一重で回避する。見えていると言ってもここまで近づいてしまえば猶予はない、どうにか頬をかすめるような形で銃弾をやり過ごす。
確認する余裕はなかったが相手にこの至近距離で弾丸が避けられるとも思えない。
「なにっ!?」
「なんだと!?」
そう思って銃を構えながら相手の方を見たライオットは驚愕した、相手の少女も腕にかすり傷を負った程度だ。
そして同様にこちらに銃を向けながら驚いている。
相手もこちらがあの距離の弾丸をよけられるとは思っていなかったらしい。
「驚いたな、君は銃弾を避けられるほど反射神経が素早いのかい?」
「さあな、そういうお前は未来予知でもできるのか?」
彼女の服のイメージは黄色いジャージです。




