20歩目「とある機械兵の悲劇」
帝国機械兵、その中でTG-003タイプ識別番号10321号と呼ばれていた彼は自身の全索敵能力を駆使して先ほど自分を攻撃してきた対象を探していた。彼らに焦るという意識はないのだが、人間に当てはめるならば今彼は焦っていた。
旧世代の動物に引かせる木製の車の背後から飛び出した小さな影、人属の幼体と思われる相手から脅威度の低い魔法攻撃を受けた。その程度の攻撃では自分はびくともしない、即ガトリングガンで反撃したのはいいのだが、その個体反応が突然消えたのだ。
熱源モニター、光学モニター、魔法感知モニターのいずれにも反応はなかった。つまり熱から見た目からそして魔法的観点から見ても先ほど自分を攻撃してきた存在が消えたのだ。予測ダメージレポートではほぼ即死と出ているが死体を確認できていない以上反撃を受ける可能性がある。実際過去にそういう予測をして油断した瞬間を狙われ破壊された同胞もいる。彼は油断なく旧世代の乗り物に乗っている三つの熱源を監視していた。
一つの影が飛び出してきた時、彼の反応は少し遅れた。人間でいうところの驚いていたのだ。監視していた熱源の一つが唐突に別の存在に入れ替わった……そのようにしか見えない現象が発生したためだ。
しかし彼が止まっていたのはほんの一瞬だ、彼はすぐさまターゲットに対して攻撃を仕掛ける。
速い、人間の平均どころか今まで観測してきたデータの最高値だ。
人間の移動速度を想定していた攻撃は相手に躱される、その距離は馬車から半分ほどに迫っていた。しかし彼らは人間相手だけの兵器ではない、速く動くというのならばそのように対処するだけだ。
こちらが旋回速度を上げると相手も移動速度を上げた。彼は素早く計算する、このままではこちらの砲塔が相手に追いつくまでの時間の半分の時間で、相手は此方に到着する。射角の内側に入られてしまえば彼に勝ち目はない。事実彼だけならこの時点で詰んでいた。
彼はすぐさま仲間に援護を要請する、相手の速度を考慮しての十字砲火、仮に空中に逃れたとしてもそれまで射線が通らなかった三台目が空中を薙ぎ払う。逆転王手、人属の構造上、一撃でも掠れば今の速度は出せない。そしてどちらかの銃弾の雨を通り抜けなければこちらには接近できない。計算上は彼の勝ちだった。
計算上ではだが……ターゲットが銃弾の雨を通り抜ける瞬間対象が武器を振るった、信じられないことに銃弾が切り落とされる。
「ねえ! 機械って殺される恐怖を感じるの?!」
ターゲットの表情、その瞳を見た瞬間彼の戦術回路は停止してしまった。それは彼が初めて味わう感覚でありそして最後に味わった感覚。
恐怖だ。
機械兵も排除対象の様子です。




