18歩目「救うということ」
「くそっ寄りにもよって帝国の小鬼狩りの真っただ中だと」
「何か問題か?」
冷酷なマルスの意見に、ラドリオはちらりと、緑は非難の目線をじっとりと送ってくる。説明するのも面倒だと言わんばかりにマルスはため息をつく。
「何か言いたげだな」
「だって目の前で襲われているんだよ!? 助けなきゃ!」
「……お人よしは結構だがどうやってだ?」
魔法を唱えようとした緑の口を押さえつけ、そのまま馬車の床に押さえつけながらマルスは話を続ける。
「むぐっ!」
「誰かを助ける助けないなんていうのは、それが自分自身を守る力と、助けることができる力と時間に余裕がある奴の特権だ。今のお前に出来るのか?自分と俺たちの身を守りながら、アイツらを無事に助けることが。身の安全は今だけじゃない今後のことも考えろ、今帝国とも敵対して生き残れるのか?」
口を掴まれたままの緑の瞳が段々揺らいでくる。今にも泣きだしそうな症状になりながら訴える様にマルスの瞳を睨み続ける。
「喧嘩中の所悪いがね……お二人さんに悲報だ! 帝国の連中の包囲網が予想外に広すぎる、このままじゃ俺たちも射程内に捕らえられる。アイツらは近づく奴は無差別だぞ!」
二人の沈黙を破ったのはラドリオの悲鳴のような報告だ。王国と帝国の間を渡り歩いてるフリーランスのラドリオだからこそ、帝国の機械兵の恐ろしさを良く分かっていた。彼らは本当に無差別なのだ、プログラムによって対象外となっているもの以外をすべて攻撃する。そのため帝国内で機械兵が動くときは事前に退避勧告が出されるのが通例となっていた。
「どいてよ! 緑は黒を守るんだから!」
ラドリオの報告でマルスの腕が緩んだうちに、緑がマルスを押しのけて馬車の幌から身を乗り出す。
「待て、木乃美ちゃん。近い連中から順番に……え? 誰この子!?」
ラドリオが今更人が違うことに驚きの声を上げる。今までは相手からの逃亡や渓谷越えで興奮して気が付かなかったのだろう。例えそうだとしてもこれだけ違う声が飛び交っていたというのに今更気付いたというのは大分鈍いとマルスは思うのだが、先ほどなど横から顔を出して指まで刺していたというのに、恐らく帝国の機械兵を見て冷静になった結果はじめて気づいたのだろう。
「え? その子誰!? 運ぶのは二人だけって話じゃ」
「アレも木乃美だ! 黙ってろ!」
混乱してパニックになっているのか御者台に座ってジェニファーを操りながらもマするの肩を揺さぶってくるラドリオの手を、マルスは払いのける。こんなことをしてる場合ではない、やるならやるで緑を補佐しなければならないというのに。
「へびよはぜよ!」
「緑! 待て!」
マルスが止めるよりも早く、決定的な一撃が機械兵に向かって撃ち込まれてた。
ラドリオ君今更過ぎた。




