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14歩目「馬車上魔法戦」

「来るって言ってもどうすれば」

「だめ伏せて!」

 錬金馬車を確認しようと頭を上げたマルスを再び青が抱きかかえるように包み込んで伏せる。それと同時に自分たちの肩があった位置に矢が数本通り過ぎた。

「いくら揺れそうにない変わった馬車だからってこんな簡単に……」

「多分弓使いの英雄が混ざっているんだろ……こちらを殺すつもりはないみたいだが下手に頭を上げたら狙い打たれるぞ」

 さらに数本の矢が頭上を越えて背後の幌の中央、ちょうど御者が座っていそうな位置へと放たれる。

「おい、そっちは大丈夫か?」

「背もたれに伏せてるからどうにかな!問題は弓じゃなくて魔法の方だ!」


 弓では馬車を行動不能にするのは難しい、馬を狙えれば別かもしれないが後ろから追いかけている状況では難しいだろう。山なりに飛ばせば馬に当てることもできるだろうが、それはさすがにラドリオが馬を操って回避できる。ならば危険なのは馬車を破壊できる可能性のある魔法の方だ。


 ふとマルスの上に覆いかぶさっていた重みが軽くなり柔らかさの質が変わる。魔法に対抗するのは魔法ということだろう。


「燃える猟犬……敵を……」

 途切れ途切れに聞こえてくるのは魔法の詠唱と思われるもの。恐らく唱えているのは移動中でも問題なく使える追尾型の魔法で且つ馬車にダメージを与えられるもの、こればかりは馬車を操る者の腕で如何にかできるものではない。

「おい、お前の蛇で迎撃できるのか?」

「お前じゃないよ、緑だよ。顔を上げたら危ないからそれはちょっと難しいよ。でも任せて!」

「……かみ砕け!」

 背後で魔法使いと思しき叫びが響き、それと同時に炎で形どられた犬が空へと駆け上がり馬車へとまっすぐ突っ込んでくる。


「はじけるねずみ、てきをさそいだせ!」


 短い詠唱で、緑の手から同じく炎で出来た小さな鼠が飛び出してきた。サイズ外力に直結しているのだとすれば、この鼠では犬には勝てそうにない。

「いや、それで相殺するのは無理だろ」

「良いからみてて!」


 炎の鼠を犬が確認した途端、犬の目が変わった……様な気がした。馬車に一直線に向かっていた犬がそれ以上の速度で鼠を追いかけ始める。鼠もそれだけ素早いのだがそれ以上の速度で犬は鼠を押しかけそして二匹が接触した瞬間、二つの魔法の効果が発動し空に大きな爆発を作った。


「へびよはぜよ!」

 さらに追撃の魔法を放つ緑、爆発に紛れて小さな蛇は狙い通り相手の馬車に激突するかに見えた。だが青白い半透明の壁が蛇とその爆発を防ぐ。

「うそ、ずるいよそれ!」

「言い忘れてたけど錬金馬車は追尾型と直接狙った魔法を防ぐ防御魔法がかかってる。狙うなら車輪の足元とかにしろよ!」

「早く言えよ……よし緑、もっと威力の高い魔法で」


 次の魔法を促そうとした瞬間、緑がばつの悪そうな顔でそっぽを向く。まるで悪戯がばれた子供の様な態度にマルスは嫌な予感を感じだ。

「お前まさか……」

「だってだって基本魔法集には攻撃魔法が載ってなかったんだもん!」

便利な防御魔法も登場です。

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