13歩目「閃光玉・改」
こちらが道を逸れた数秒後に背後に迫っていた馬車が、そして少し遅れて錬金馬車が走り出す。どうやら錬金馬車は完全に停車してから発進するまでに少々時間がかかるようだ。
「おい、向こうは四頭だて、こっちは一頭だ。あっという間に追いつかれるぞ?」
「そこは俺っちの力量で……と言いたいところだけどさ。流石に4倍じゃあね、正確には重さやらいろいろあるから4倍じゃないけども、このままじゃ直ぐに追いつかれる。迎撃はそっちでたのむ!あんた達だって捕まりたくはないだろう?」
すでに敵の馬車は御者や横に捕まる者たちの表情が視認できるほど近づいてきている。このまま手を打たなければあっという間にこちらの馬車は制圧されるだろう。何しろ今この馬車に戦闘要員はいないのだ。『今』はだが。
「……木乃美やれるか?」
「……私だって捕まりたくない。やるよ」
マルスの目の前で世界が『ブレた』
今までマルスの横に立っていた黒髪の町娘風の少女はいない。今その場にいるのは青い髪をなびかせる女性だ。
「青か!」
「ラドリオさん、マルス君、合図したら耳を塞いで目を閉じなさい!」
青が手持ちのウェストバッグから取り出したのは小さな玉のような物。彼女が変わった道具を出したのは初めてではないが、これはマルスは見たことがない。しかしどこかで見た覚えはあった。
「今!」
青が何かを投げた瞬間、マルスは柔らかいものに覆いかぶさられた。恐らく青が抱きかかえるように伏せたのだろう。従者として主人を守る心構えができて来たと思う反面どことなく落ち着かない気持ちだ。
投げられた玉は、相手の馬車の馬の前で甲高い破裂音を響かせながら強烈な光を発する。この光は目を瞑って伏せたマルスや違う方向を向いて目を瞑っていたラドリオにすら感じられるほどの強烈な光だった。そんなものを至近距離で、しかも耳を劈くような音と共に破裂したのだ。いくら訓練された馬や御者だろうと動揺しない筈はない。
「ぐわっ、目がっ!?」
馬車の御者が悲鳴を上げ同時に嘶き声を上げて馬たちが足を止めようと踏ん張る。急激にバランスを崩し速度を落とした馬車に、背後から追撃していた錬金馬車の一台が衝突した。
木が砕ける音と共に馬車を破壊しながら錬金馬車も大きく体勢を崩して横転し、数回転した後にようやく停止する。動力部と思われる部分から光が失われていく様子を見るにすぐに動き出すことはないだろう。
「よし、馬車と錬金馬車を一台潰した。あとはどうにかなるか?」
「あーどうかな?むしろ厄介なのは錬金馬車の方なんだが」
「そのようね。それにたぶん同じ手は通じないわ」
残った錬金馬車の御者二人も先ほどの閃光を諸にくらったらしく御者席で蹲っているが、錬金馬車はまっすぐこちらを追いかけてくる。どうやら御者がいなくともある程度勝手に走行することができるらしい。
「注意しろ!次は英雄様の攻撃が来るぞ!」
今のところ一日千字程度を目安に頑張ってきましたが、もう少し分量があった方がいいでしょうか?
モチベーション維持のため軽くで良いので感想、ご意見等よろしくお願いします。




