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12歩目「逃亡戦」

ラドリオが馬車を道の右に寄せる。このような街道で馬車同市交差する場合、右側に寄るのが慣例だからだ。

「おい、ラドリオあいつらは多分」

「いやいやもしもってことがあるじゃん?」

 ラドリオの願望もむなしく、錬金馬車は三台で街道を封鎖するように布陣して停車した。明らかにこちらの前を遮る気満々だ。これが唯の馬車ならば、ちょっと頭のいい夜盗の可能性もあるが錬金馬車の場合はそれはありえない。


『錬金馬車』は発明王トーラの生み出した発明の一つだ。見た目は箱型の馬車だが引く馬を必要としない、車輪ではなくソリのような部位があるがこれは停車時車体を固定するもので走行には使わない。錬金馬車はわずかに浮遊しながら移動するのだ、このためどんな悪路でも速度を落とさず移動できる。さらに周囲の魔力を使って稼働するため燃料や飼料が不要だ。

 ただし製造にはトーラの力をもってしても精製の難しい触媒を動力に使用するため、王国でも総数は十数台、王国に献上されたものを除きその所有者はすべて『勇者組合』となっている。


「おーい、そうやって道を塞がれると困るんだけど!組合は夜盗の真似事でも始めたのか?」

 文句を言いつつもラドリオが馬車を反転させようとすると、今度は後続の馬車が停車して完全に退路を塞ぐ。

「こちらは勇者組合本部だ、お前の馬車の中に王国と組合の指名手配犯をかくまっているという情報がある。国に貢献する偉大な英雄を含め多くの英雄と国民に手をかけ更には放火の疑いもある。大人しく差し出せば安全は保障しよう、しかし隠し立てしたり抵抗するようならば命の補償はしない」

 馬車から何人かの兵士や近接型と思しき英雄たちが下りてきて馬車を包囲しようと接近してくる。

「え?お前らそんなに派手なことやったの?」

「濡れ衣だ馬鹿、確かに襲ってきた奴らを返り討ちにはしたがな」

「ラドリオさん……私たちを引き渡しますか?」

 王国組合の言葉と少年の言葉、何方を信じるかという話だ。少年と知己あるいは王国に不満を持つものならば少年を信じるかもしれないが。大抵の人間は組合の人間を選ぶだろう。一人の言葉よりも国の言葉の方が説得力がある物だ、木乃美の何処か諦めたような問いにラドリオは苦笑いを返す。

「はぁ……わかってないなぁお二人さん。ハイヤー!ジェラート!」

 鞭を打たれた馬が勢いよく街道を離れて走り出す。まさかいきなり逃げ出すとは思っていなかったのだろう。兵士と英雄たちが慌てて自分たちの馬車に戻っていく。

「運び屋としちゃ、よそ様に何言われようがお客を見捨てちゃ商売あがったりなんだよ!」

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