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10歩目「一時の休息」

「よし、じゃあさっそく行くか」

 ルートも確認したことだしさっそく出発しようとしたマルスの服の裾を木乃美がつかむ。

「マルス君……何か忘れてない?」

「俺が?」

 マルスは座り直してもう一度地図を見る。ルートも確認したし脅威を確認した、後は実物を見て見定めるしかないだろう。あと確認すべきは目の前で苦笑しているラドリオの実力と能力、そして乗り物ぐらいだと思うがそれこそ移動しないと分からないだろう。

「なにも見落としはないとは思うがな?」

 自信満々に再び席を立とうとするマルスを再び木乃美が、今度は腕をしっかりとつかんで座らせる。とうとうラドリオが盛大に噴き出した。

「ぶはっ、もう無理、ひひひ、マルスの旦那ここが何屋か忘れたか?」

「お待たせしました!今日のオススメ鶏肉の香草焼きお二つとラドリオのミートパイよ」

 マルスが答えるよりも早く、このタイミングを狙っていたんじゃないというくらいのベストタイミングで笑顔の女性がマルスたちの前に注文していた料理を並べる。この先を話し合うのに夢中ですっかり料理を頼んでいたことを忘れていたことにマルス思わず顔を覆った。

「ささ、少年特有の夢中になると周りが見えなくなる現象は忘れて、温かいうちに食べようぞ」

「……よくあることだよ、マルス君」

「あってたまるか」

 憮然とした表情で付け合わせの野菜をマルスは口の中に放り込む。野菜特有の甘さと皿に一緒にあふれ出た肉汁のうまみが絡み合い食欲が進む。マルスが昔食べていたような堅苦しい冷めた料理とはまた違う温かみのある料理だ。


「(こんなことは滅多に……この世界に来てからはなかったのだがな)」

 昔から夢中になると寝食を忘れたりしてしまうことは偶に合った、しかしこの世界ではこれが初めてだ。何しろ桃色の蜂蜜亭にいたことは情報を集めることに必死だったし、配下と呼べるものがいない以上周りの全ての人間は仮想の敵だった。口には出さなかったが『マハリ』のことすら最後の最後まで信用していなかったのだ。それや今やこの体たらく、気が緩んでいるとしか思えない。


「……もう少しうまそうに食べたらどうだ?」

 マルスは八つ当たり気味に、気の緩む原因を睨みつける。原因の少女は湯気の立つ鶏肉を必死にふーふー冷ましている最中だった。

「美味しいよ?……ところでこれって『鶏の肉』なのかな?」

「ああ、『鶏の肉』だろうな……といっても俺たちに同じように聞こえるだけで実際は別のことを言っているようだが」

「英雄たちはそれぞれ世界が違うから物の名称も違う。だが不思議と生き物に差はないそうだ、なんでかね?」

神様デザイナーが同じだからだろう?変に気を衒うより安定した物を使いまわす方が都合がいいんだろうな。最初は「この世界では巨大カエルが食用です」とでも言われたらどうしようかと思っていた所だ」

 マルスの冗談に木乃美はくすりと笑い、ラドリオはまた盛大に噴き出した。そのお蔭でマルスはパンくずまみれになったわけだが。

そろそろ戦闘を挟まないと……といいつつも町を出るまで戦闘はなさそうです。

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