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もう、恋なんてしない  作者: 桐島ヒスイ
第三部

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温かいコメントありがとうございました!

励みになっています(´;;`)ウッ…





 王家と聖堂院の対魔女対策の第一回会合の後、オズワルドはふらふらと自室へと戻った。

 そのままよろよろと寝台に倒れ込む。

 疲労困憊だった。


 先ほどのヴィンセントとの対面を思い出す。



 ―――ヴィンセントを目にした瞬間、どくりと心臓が跳ねた。

(メイ、ナード………)

 一瞬、自分がエルバートに戻ったかのような錯覚に陥った。

 王家と聖堂院との会談は和やかに進んでいく。その間、オズワルドはヴィンセントから目を離せなかった。



 オズワルドが意識を戻したのは挨拶が終わって、母や兄が退室してから父に声を掛けられた時だった。

「オズ……、この場にそなたを残したのは何故かわかるか」

王妃と王太子妃、さらには兄である第二王子すら退室をさせられた場に、末子の第三王子である自分が残された意味。

父と兄が問うような視線を自分に向けていた。

「父上……。私は……」

 ――知られているのだろうか。

(私が……赦されざる過ちを犯した者だということを――)

 喉がカラカラに渇いて心臓がどくどくと早鐘を打つ。父と兄の顔を見るのが怖かった。

 軽蔑の眼差しを向けられるだろう。さらには親子の縁を切られるかもしれない。

 ぎゅっと目を瞑る。

「オズワルド。私はそなたを守りたい」

 オズワルドはハッとして王に顔を向けた。

「そなたがエルバート王子の生まれ変わりだとしても……、いや、だからこそ。エルバート王子の過ちを検証し、防衛に役立てる協力を頼みたい。そなた一人で立ち向かう必要はない。我らを頼れ。我らもそなたの情報が欲しい。……聖堂院も王家も、教訓を今日まで伝えてきたのは過ちを咎めるためではなく、二度と悲劇を起こさぬためだ」

「……………!………………………は、い」

 ポロポロと、涙が零れ落ちる。

 王太子は苦笑してぽんぽんとオズワルドの肩を叩いた。



 王と王太子である父と兄に自分がエルバート王子の生まれ変わりであることを告白できたことは一歩前進だった。

 メイナードの生まれ変わりであるヴィンセントと出会えたことも。


 対魔女対策について聖堂院と話し合えた。そのこともオズワルドの心を軽くしていた。

(……それなのに、なんだこの疲労感は………)

 ぐったりと重い身体を寝台に横たえる。

(それもこれもヴィンセントがおかしな魔術をしかけてくるからだ……!!)

 危うくヴィンセントに魅了をかけられるところだった。嫌すぎる。

 だがオズワルドにも分かっていた。疲労の本当の原因は―――。



 ココンと軽快なノックの音と同時に返事を待たずガチャリと扉が開いた。

「どうした、オズ。疲れてるな?」

 ハワードが無遠慮にずかずかと寝室に侵入してきた。横たわるオズワルドの横にどさりと腰かける。

 予め訪ねてくるようにお願いしていたのだ。


(聖堂院との話し合いについて、ハワードとも共有しておくべきだと思ったからな……)


 勿論、魔女対策について言えることは限られている。

 それでも自分がエルバート王子の生まれ変わりであることを唯一打ち明けられた相手だ。


 オズワルドは寝台にうつ伏せに寝転んだままぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。


「今日父上と……聖堂院とも魔女対策の話をした。私が……エルバートの生まれ変わりであることも……打ち明けた」

 ハワードは黙って聞いていた。

「父上は……私を守りたいと仰ってくださった」

「そか」

 少し嬉しそうに微笑むオズワルドにハワードも微笑んだ。


「…………」


 そのままオズワルドは考えに耽るように目を閉じた。

 最後にヴィンセントと交わした会話を反芻する。


 ヴィンセントはレオノーラが生まれ変わっている可能性を否定しなかった。(肯定もしていないけれど)

 オズワルドにはそれだけで十分だった。

 恐らくレオノーラも生まれ変わっているのだろうと思った。

『魔女』に続いてメイナードの生まれ変わりも現れたのだ。

 この世界のどこかに彼女の生まれ変わりはいる。……そう、思いたいだけかもしれないけれど。


 ただ、彼女はまだ覚醒していないか、あるいは自分とは会いたくないと思っている可能性が高い――。


「………………………………」


 オズワルドは泣きそうになった。いや、泣いていた。

 薄々はそんな気がしていたのだ、気付かない振りをしていたけれど。気付きたくなかった。

 出来れば気付かなかったことにしたい。

 でもはっきりと言われてしまった、ヴィンセントに。


(いや、そんなストレートに言わなくても……!!)


 もしや既にヴィンセントはレオノーラを見つけているのではないだろうか。

 そして聖堂院で保護している?


(可能性はなくはないか………)


 恐らくは聞いても教えてくれないだろうけれど。


「ハワード。明日聖堂院に礼拝に行く。一緒に行ってくれ」

「は?唐突だな。……いいけど」


 寄進。ひとまず寄進しよう。ヴィンセントに。聖堂院に。

 レオノーラを保護しているかもしれないのなら、金額は惜しまない。


(もしかしたらヴィンセントも絆されていつかレオノーラに会わせてくれるかもしれないし!)


 疲弊しきったオズワルドの脳内は現実逃避のため幸せな妄想に侵食された。

 一縷の希望を胸にその夜オズワルドは久々にぐっすりと眠るのだった。









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