エピローグ
その一報は最速の鷹便で齎された。通常荷馬車で運ばれる手紙は隣国の首都まで二十日かかり、それより急ぎの場合は早馬便で十日の速達を使う。だが稀に緊急を要する報せを届ける場合は最速の鷹便が使用される。隣国まで三日で届く。
授業が終わった直後、教室から出たアデレイドにアマンダが駆け寄って来た。
「アデレイドさま、ご実家から緊急のお知らせのようです」
アデレイドはアマンダからそれが鷹便で届いたことを聞いて驚いた。それと同時に不安がこみ上げる。
(よくない報せ…?)
鷹便は滅多に使われない。
胸騒ぎに心臓がどくどくと脈打ち、指先が冷たく強張るが努めて冷静を装い、急ぎ足で寮へと帰った。
部屋へ入るなり封を切り、手紙に目を通したアデレイドは小さく悲鳴を上げてその場に 膝を付いた。
「アデレイドさま!」
ハロルドとアマンダがすぐさまアデレイドに駆け寄りハロルドはアデレイドを抱き上げ寝台へそっと下ろした。アマンダは落ちた手紙を拾い、寝台の横の台に置くと、水を取りに別室へと向かった。
「アデレイドさま、手紙を読んでも?」
アデレイドの前に跪いてハロルドが問うと、アデレイドは蒼白な顔で震えながらも小さく頷いた。
ハロルドは軽く頷き返し、素早く手紙に目を通すと、顔を強張らせた。
手紙はジェラルドからで簡潔に一文だけ認められていた。
『ローランドの父上が亡くなった。すぐ帰れ』
それは何の前触れもなく突如突きつけられた悲報だった。
第2部終わりです。




