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もう、恋なんてしない  作者: 桐島ヒスイ
第三部

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閑話4

サイラス参戦✽レオノーラのカメオ




 会議が終了して参加者はそれぞれ会議室を後にした。

 サイラスは最後に退出しようとしたエリスティア聖導師長に声を掛けた。


「コーエン聖導師長、少々確認したいことが……」

「はい、何でしょうか」

 他の参加者は既に退出し室内には二人だけだ。

 サイラスは会議が始まる前から気になっていたことがあった。

「その、首元のカメオについてですが……」

「!………グランヴィル卿、もしや……」

 ニコラスは首元に巻いたクラバットをカメオのブローチで留めていた。

 二人は目と目で何かを確認し合った。


「……よろしければ聖堂院へお立ち寄りください。卿とはこれから魔女対策における同志。親交を深めていければと思います」

 ニコラスはにっこりと愛想よく微笑んだ。

 サイラスも微笑する。



 その後、サイラスは聖堂院に立ち寄った。そのまま聖導師長の部屋に通される。


「……そのカメオ、聖女の肖像ですね」

「ご慧眼ですね。さすがはグランヴィル卿」

「……聖女は我がグランヴィル公爵家の出ですからね」


 サイラスから冷気が漂う。笑顔なのにひやりとする。

 ニコラスはあれ、と遅ればせながら何か拙いと気付いた。

「あ、ええ……、そうですね」

「……レオノーラの肖像権はグランヴィル公爵家のものです」

「……!!」

「貴方にとっては三百年前の女性でしかないでしょうが、私にとっては……軽々しく触れて欲しくない大切な存在なのです」

「う……、そ、そうですね…………」

(あ―これは同担拒否の強火ガチ勢――――)

 ニコラスは自分の読み違いを悟った。サイラスも聖女崇拝者だと思い、同士として聖女トークが出来るのではと期待した自分を殴りたい。


「それは没収します」

「!!そ、それは!!」


 ぷつりと音を立ててブローチを剥ぎ取られてしまった。

 ニコラスは慌てた。

(拙い、既に増産を発注済み―――!!)


 サイラスは手に取ったカメオをまじまじと見つめて、その細工の美しさに呆れと共に感嘆した。

「……良い腕の職人ですね……材質も一級品だ」

「あー、グランヴィル卿!我々は聖女さまを冒涜するつもりは一切なくてですね、これは聖女さまを崇拝するが故の敬愛の象徴として――」

「……『我々』……?象徴…………。つまり、これは一つだけではない、と?」

「あっ……、ええっと………。…………………………ハイ」

(しまった、私の人生終わった――――――――……………………)


 ニコラスは断頭台へ上げられてしまった気分だった。

 そこへコンコンと遠慮がちなノックの音が響いた。

「あ―…すまない、グランヴィル卿……。カメオは既に百個製作済みだ。……私が許可した、すまない」

 大聖師ヴィンセントが現れ、腰を九十度に曲げて謝罪した。潔い。


「……どういうことです」

「……我が聖堂院には聖女崇拝同盟がある」

「………………………………………………」


 サイラスの瞳が胡乱気に細められる。


「純粋に、聖女を崇拝しているのだ。聖堂院は三百年前の悲劇を語り継いでいる組織だ。故に聖女への傾倒も強い。……中には人生を聖女に捧げると公言している者もいるくらいだ」


「………それで?」


「………彼らの忠誠心と崇拝と熱狂をうまく取りまとめるためには聖女と繋がる共通の記念品が必要なのだ!どうか許可して頂きたい!というか、このレオノーラさまの横顔の美しさを見たら肌身離さず持ち歩きたいと思うのは当然の真理だろう!」


 言い切った。うっかり本音まで。

 しかしサイラスの絶対零度の微笑は冷ややかさを増した。

 ヴィンセントはたじろいだ。サイラス手ごわい。


「くっ……ではこれを特別に………」


 ヴィンセントは断腸の思いで懐からカメオのブローチを取り出してサイラスの手に乗せた。

 サイラスがブローチを摘まむと、裏側に凹凸があることが分かった。

 ひっくり返してみると、見事な紫紺色の宝石が嵌っていた。

 紫がかったブルーサファイア。

 これ一つでも相当な価値があると一目でわかる逸品だった。

 まさしくレオノーラのあるいはアデレイドの瞳の色。


「これは……」

「かなり時間をかけて探し出した。その色はなかなかなくてな」


 ヴィンセントがユディネに居た頃に見つけた物だ。

 それをカメオに装飾して貰った、世界に一つだけのブローチだ。


 裏側に付けたのは、この色を知る者は自分だけでいいとの想いからだ。

 それと、聖女崇拝同盟の序列を表す物でもある。


「今回、カメオのブローチは百個製作した。それを聖女崇拝同盟の会員に配布する予定だが、全員ではない。これはいかに聖女を崇拝しているかを表すものだ。正しく聖女の尊さと美しさと悲劇を理解し、彼女の生まれ変わりを守るために命を捨てられる者にしか授与されない」


 そして、百個のうち、七つだけ裏に聖女の瞳の色の宝石が嵌めこまれている。

 大きさの違う宝石がその会員の序列を表す。


「それは会長用だ。貴殿に進呈しよう」


 サイラスは宝石をじっと見つめた。

 そしてにっこりと微笑んだ、花が開くように艶やかに。


「………いいでしょう。聖女の生まれ変わりを命に代えても守るというその理念、気に入りました」


 こうしてサイラスは聖女崇拝同盟の会長に就任した。

 ヴィンセントは副会長である。








(続く)


お知らせです

1月から『蒼黒のオーレリア』という新作を連載中です

こちらはファンタジー要素の強い魔法あり世界のお話です

ちびっこ王女が悪役令嬢にならないよう運命改変を目指します

よければこちらも応援よろしくお願いします。

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