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現代社会のモンスターショップ奮闘記 ~そちらのお店から仕入れたスライム、服を溶かしてくれないんだけど、どういうこと!?~  作者: 田島ユタカ
第一章 不良品のスライム

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不良品のスライム 最終話

 俺はアスラの納品物を改める。

 店頭に並べるモンスターは実体そのもの。

 貴志さんへの納品物は1匹ごとに球体のケース、いわばガチャガチャのカプセルみたいなものに収まってる。


 俺はともかく、夜のお店でお客さんに渡す時、剥き身のままというわけにはいかないしな。


 どうやら貴志さんのところへの納品物も含めて、数には問題なさそうだ。


 正直、俺は異世界人ではないし、ましてや魔王と縁はあれど魔王そのものではない。


 見た目に異常がないことまでは判別できるが中身までは知らん。


 仮に元の硬貨がドルでもユーロでも、見た目は同じ。


 そしてカプセルは一度開けたら二度と元に戻らないので、こればっかりはアスラを信じるしかない。


 ちなみにプレイ後のスライムは、お客さんに始末させてるようだ。


 倒した後の硬貨はそのまま、お客さんの懐に入る。


 五百円硬貨で造るスライムは、気性は穏やかで攻撃性と耐久は皆無に等しい。


 カプセルを開封すると、ペットが人間にじゃれつくように飛び掛かり、纏わりつくと衣服だけをじわじわと溶かす。


 しかも人体には一切の影響を与えない。

 夜のお店には、都合の良いスライムなのだ。


 俺は、ひとしきり納品物を確認すると一匹のスライムが目についた。


 金属っぽい光沢感のあるスライム。

 ぷるぷる震えて柔らかそうなのに、硬そうな印象を受ける。


「そいつはレアものか」


「ああ。経験値は豊富じゃが、ちょいと面倒な奴でな」


「レアものは、そちらで引き取ってくれ。数には問題ないから。そいつの五百円、お駄賃として取っておいてくれ」


「子供扱いするな」


「面倒な奴だな。年寄り扱いしたら怒るくせに」


 俺の店では、癖のあるレアものは決して取り扱わない。

 制御ができないからだ。


 それなら最初からレアものを造らなければいい話なのだがアスラ曰く『不良品みたいなもの』らしい。


 工場で大量生産すると極少数、売り物に出来ない品が造られるのと同じとのこと。


 いくら魔王と言えど、有機物を完ぺきに造るのは不可能のようだ。


 その代わり通常個体とレアものの選別は出来るので、商品にならないモンスターは弾いてもらってる。


 ただ今回のスライムみたいに違いが見た目にあるなら、俺でも選別は出来るけど。


「どうした雄作。そんなマジマジとレアものを見つめて……ははーん、さてはあれか?」


「ん?」


「お主も年頃の男子という奴じゃからな。皆までいうな、わかっておる……」


「まあ、こんな店を経営するくらいだし、多少なりともモンスターに惹かれるものはある」


「わしとスライムプレイをしたいのだろう?」


「だから、何をバカな事を言ってんだ! 俺はただ、物珍しいから眺めてただけだ!」


「じゃが、すまない。今は諦めてくれ……あいにくと替えの服を用意してなくてのう」


「人の話を聞けよ!」


「前もって服を用意しておいてくれれば、やぶさかではないのだが――」


「安心しろ! 一生ねえから!」


 すると、何だか妙に鋭い視線を感じた。

 それは痛いものを見るトゲトゲしさではなく、殺気を帯びてるような鋭利さを秘めてる。


 俺は視線の元凶に目を向けた。

 そこには、勤務時間中には決して見せない凛々しい顔立ちのサミィがいた。


 おお、凄いな。

 あいつ、ここに来て一年くらい経つけど、例の魔王を見ると斬りかかる発作以外で、シリアスな顔してるの初めて見るな。


 勇者の称号は伊達じゃないってことか。

 もしかして俺と魔王の会話を聞いて、何か思うところがあったのかもしれない。


 意外と決めるときは決めるタイプなのかもしれない。


「あの! 店長!」

「お、おう……」

「レアものスライム、私が倒しても良いですか!? お店に並んでる雑魚共をいくら倒したところで経験値しょぼくて、うま味がないんですよー」


 反省の色が微塵もない、おもっくそ真顔で私欲にまみれた言葉をぶつけられた。


「アスラに聞いてみな」


 色々と言いたい事はあるものの一瞬考えた後、特に反対する理由がないので、アスラに委ねることにした。


 過ぎた事を蒸し返しても、お互い気分を悪くするだけだ。


 それに俺は、経験値なんぞに興味はない。

 経験値が入るのは、異世界人の体質だしな。


「雄作がそういうのであれば、わしは構わんぞ」


「やったー! 話がわかるねぇ」


 イサミは意気揚々と剣を出した。

 鞘から抜いたのではなくマジックの如く、目の前でポンと出した。


「フヒヒヒヒ、大人しくしててね~。レアものちゃ~ん」


 先ほどの真顔とは打って変わって、性犯罪者を想起させる嫌らしい顔つきでレアものに斬りかかるサミィ。


 ――と、その時。

 突然、店のドアが開いた。

 そこには、でっぷりと肥えた中年男性が居た。


 ファンタジーナイトの店長、貴志さんその人である。


「天城さーん、1秒でも早く欲しいから取りに来ちゃ――んほぅ」


 貴志さんの言葉を止めたのはサミィの剣を、目にも止まらぬ速さで回避したレアものスライムだった。


 そして貴志さんの首から下を隙間なく包み込んだレアものスライムは、否応なしに貴志さんの服を溶かした。


「ぎゃああああああああああああ変態いいいいいいいいい」


「わしの目に汚いものを映すな!」


 貴志さんの服代、経費でどうにかできないかな。


 生まれたままの姿を晒す中年男性と二人の女性の悲痛な叫び声をよそに、俺の頭の中は損益で埋め尽くされていた。

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