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現代社会のモンスターショップ奮闘記 ~そちらのお店から仕入れたスライム、服を溶かしてくれないんだけど、どういうこと!?~  作者: 田島ユタカ
第一章 不良品のスライム

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不良品のスライム その5

 ちっ……仕事に集中してろよ魔王さんよ。

 そして面倒な言い回しをするな。


「えっ!? やっぱり!? ただならぬ関係とは思ってましたけど、まさか魔王と人間の禁断の恋!? ド陰キャの店長もやる事はやってたんですねー。いつも仏頂面で人生を達観したフリをしてても、男だったんですねー。ただれてますねー」


 サミィは嬉々とした表情で目を輝かせている。


 今頃、あいつの頭の中では、成人向けの映像が流れてるに違いない。


 俺は堅気だから、舐められたくないとか誰かに偉ぶりたいという事は微塵もない。


 しかし、勘違いや思い違いは別だ。

 無理をして疑惑を晴らすつもりはない。

 ただただ事実を淡々と告げるだけだ。


「アスラ、誤解を招くような言い方をするな」


「そんな照れるでない。つい、この間なんてオシメも取り替えたし、ミルクもあげただろうに」


 この親戚のオバちゃんみたいなノリうぜェえええええええ!


「オシメにミルク!? 店長、普段からどんなプレイをしてるんですか?」


「物心つく前の話だよ! 大体、あいつは魔王だぞ!? 体感時間を人間と一緒にするな! あいつの、ついこの間は、人間換算すると数十年前だからな!」


「いくら陰キャでムッツリで犯罪者予備軍だとしても、さすがに赤ちゃんプレイはドン引きですよ」


「仕方ないだろ! 当時は、赤子そのものだったんだから」


「それとも店長って職業は大変なんですか? 幼児退行したくなるほどに」


「ああ大変だよ。お前みたいなのがいるからな!」


 幼児退行はしないけどな。

 個人的には仕事のストレスなんてリーマン時代に比べたら皆無。


 実入りが想像よりも少ないことに思うところはあるが、生活する分は稼いでるからマシと言えよう。


 それよりもアスラに昔話をされると色々と面倒だ。


 最も厄介なのは、物心つく前の俺を知ってる事。


 俺自身の事なのに、何が飛び出てくるのかが予測できないからだ。


「ミルクで思い出したが、わしが雄作を抱き上げるとな泣き喚くどころか、わしの胸をこう――」


「ちょっと待った! それ以上、口を開くな!」


 その先は大体想像がつく。

 だって赤子の時だろ?

 実母や乳母ならともかく、あいつにか?


「お主の空腹を満たそうとする強い意志に、わしも懸命に答えようと努力はしてみたのじゃが――」


「するなよバカ! というか、本当にそんな事をしようとしてたのか俺!? 初めて聞いたぞ!」


「当たり前じゃ。今、初めて言ったからのう……今度、実家に帰った時にでも聞いてみい」


「目撃者もいるのかよ……」


 これだからアスラに昔話をさせたくないんだ。


 毎度のことながら、俺の知らない黒歴史が紐解かれていく。


「ねえ魔王! 他に何か店長の裏話とかスキャンダル的なものはないの!?」


「そんなの腐る程あるわ……次に――」


「黙れ、ババァ!」


「年寄り扱いするでない! わしはまだ千歳程度のピチピチギャルじゃ!」


「今の若い子は、ピチピチギャルなんて言葉使わねえよ!」


「待った! 今の無し! アレじゃろ!? アレ――」


「年寄りの語彙力じゃあ、若者にはなれねえよ。とっとと仕事をすませて、玉座にふんぞり返ってろ!」


「そう! モガじゃ! ちょっと前に、お主の祖母にモガと呼ばれた事があるぞ」


「古文と成り果てた流行語を何て言うか知ってるか? 死語って言うんだ死語」


「知っとるわ。わしは魔王じゃぞ? 人に死をもたらす闇の根源であるがゆえ、死後については、きちんと熟知しておるわ」


「意味が違ェよ! とうとう脳みそにまで老化が進行したか? 若年性健忘症か?」


「とにかくわしは、まだまだ若いのじゃ! 若者なんかに負けない、とかいう老人特有の対抗意識とは違うぞ!」


「酷いですよ店長。私の世界には、五千年以上生きた魔王がいたんですから、今の魔王をオバサン扱いするのは酷いですよ! フェミニストに訴えられますよ!?」


「そうじゃそうじゃ、千年くらいで年寄り扱いしおって――」


「サミィ、アスラ! いいから黙って仕事に集中しろ、お前ら!」


 俺が強引に会話を止めると、サミィとアスラが嘆息をついた。


 アスラは顔を引き締めると五百円玉をモンスターに変えた。


「ちっ! 店長の弱みを握れるかと思ったのに……」


 イサミはぶつぶつと文句を言いながら、床に散らばった五百円玉や破損した設備を片し始めた。


 ちなみに五百円玉が床に散らばってるのは、イサミとアスラの戦いに巻き込まれたモンスターの成れの果てだ。


 モンスターは倒すと硬貨に戻る。

 だから俺がバックヤードから持ってきた金とは別に、床に散らばってる。


 ただモンスターの製造と店内の清掃を併行した方が効率がいい。


 店の売り物と納品物は一秒でも早く用意するに越した事は無い。


「ゴミは持ち帰っていいが、硬貨は一つ残らず返せよ。在庫と五百円硬貨の数が合わなかったら、給料から天引きするからな」


「わかってますよ~」


 イサミは不満を露わにしつつも仕事に勤しんだ。


「こんなところじゃろ……雄作。頼まれた奴らは一通り揃えたぞ」


「ああ、確認させてもらう」

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