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現代社会のモンスターショップ奮闘記 ~そちらのお店から仕入れたスライム、服を溶かしてくれないんだけど、どういうこと!?~  作者: 田島ユタカ
第四章 異世界で買い付け

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異世界で買い付け その3

 農場への道中。

 昼間だというのに村は、夜更けのように静まり返ってる。


 ただ閑散としてる理由も大体、察しが付く。


 盗人(サミィ)がいるから戸締りをして篭ってるのだろう。


 家を空けたら何を盗まれるか分かったもんじゃないからな。


 村の通りを抜けると家畜の香りが漂ってきた。


 サミィは露骨に顔をしかめてる。

 辺りをざっと見渡すと、川に水車、土に風車とソーラーパネルが設置してある。


 ソーラーパネルだけはいただけないなぁ、と思いながら歩いてると表札が目に入った。


 そこには『対価を支払わぬ愚か者には死をくれてやれ!』という物騒な文字が踊ってる。


「サミィ、絶対に盗みを働くなよ?」


「大丈夫ですよ。加工前の食物なんて興味ないですから」


「加工してれば盗んでいいわけじゃないぞ」


「居住地はくまなく漁るべし! こればっかりは勇者の(さが)ですからねー」


「勇者になる前からじゃないのか?」


「うーん、勇者になる前はそんなことなかったんですけどねー」


 どうやら勇者というのは罪深い職業のようだ。


 このように取り留めのない話をしながら、さらに歩くと木造の建物が見えてきた。


 そして木造の建物の中に入り、オーナーのいる部屋に通された。


 俺達がオーナーの部屋に入るや否や、先導してくれたエルフの女性は「これで失礼しますー」と軽い口調で言ってから部屋を出て行った。


 部屋の中は、ざっくり言うとペン一つない綺麗な仕事机と書類と本が詰め込まれた棚が壁沿いにあるだけの簡素な部屋。


 美形と呼んでも差し支えない端正な顔立ちの若い男性のエルフが椅子に座っている。


 見た目だけなら完全に二十代で、風貌と体格に成人のそれ。


 ただ彼の視線は、俺達の存在に気づいていないかのように、手元にある携帯ゲーム機に向いている。


 尖った耳の穴は、無線接続の小さなイヤホンに塞がれてる。


 金髪碧眼の美男子が椅子に腰を下ろしているというのに、全く絵にならない構図。


 正直、見慣れた光景なので苛立ちはしない。


 ただ呆れて何も言いたくないだけ。

 この人が村の外に巡回に出てくれれば、勇害税なんて払わずに買い付けできそうなのになぁ、と思いはするが望薄だろう。


 ちなみに携帯ゲーム機があるからといって、魔王(アスラ)のようにメッセージをやり取りするのは出来ない。


 異世界と俺の世界で交流はあるが、異世界のインフラが先進国並みに発展してるわけではない。


 当たり前のように享受してるインターネットの恩恵は、インフラの整備と定期的なメンテナンスがあってのもの。


 俺達の世界の人間と金銭のやり取りをするために、タッチ決済が出来る程度の脆弱な電波とサーバーのみ存在する。


 そのためスマホはおろか固定電話回線もないし、電線もない。


 それじゃ目の前の携帯ゲーム機がなんで可動してるのかって?


 電気に関してはソーラーパネル、水力、風力を駆使してかき集めれば、カードリーダーはおろか一台分の携帯ゲーム機と無線接続のイヤホンの電力を賄えるから。


 目の前でゲームに耽ってるオーナーの口から聞いたから間違いない。


 ちなみに、この村の電化製品はこの三つしかない。


 洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどの生活を豊かにする家電の類いは一切ない。


 大抵の事は、魔法でどうにでもなるから、電化製品が不要らしい。


 魔王との交信だって、スマホではなく魔法やってるみたいだし。


 にしても……こいつ動かないな。

 体感で一分ほど棒立ちしたが、オーナーは携帯ゲーム機に夢中みたいだ。


 このままでは埒が明かない。

 俺は仕事机に近づくと、大きな音が鳴るように天板を叩いた。


 ダン、と騒ぎを鎮めそうな激しい音が部屋に響く。


 手の平が少しだけジンジンする。

 当の本人はと言うと、音に気づいたのかこちらに視線が向いた。


 普段は宝石のように透き通った碧い瞳は、ゲームのやりすぎで曇っている。


 目と目が合う。

 その瞬間、オーナーの視線は再び携帯ゲーム機に向いた。


 両の親指と人差し指がリズミカルに動いてるのを見て、思わずへし折りたくなる。


「ほんと、いつ来ても変わらないね。カルロスは」と、背後からサミィが言った。


 カルロスとは、目の前で来客者よりもゲームを優先してる人物の名前である。


「サミィ。俺じゃダメだから頼むわ」


「店長でもダメなら、私なんてもっとダメですよ……だから強硬手段に出るのが一番です。こうやって――」


 サミィは俺の隣に立つと、何の警告もせずにカルロスから携帯ゲーム機を奪い取った。


 すると「ちょっとおおおおおお! サミィ! 今、良い所なんだから邪魔しないでえええええええ!」とカルロスが絶叫した。


 これが巷でよく聞く、親の手によってゲームを取り上げられた子供の反応という奴か。


「元パーティメンバーがわざわざ辺境の村に来たのに、ゲームに夢中になってるのがいけないんでしょ」


 サミィがため息混じりに言う。


「いやあ~、君達なら待たせてもいいかなって思ってさ」


 カルロスは両耳のイヤホンを外しながら、笑顔を浮かべてる。

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