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現代社会のモンスターショップ奮闘記 ~そちらのお店から仕入れたスライム、服を溶かしてくれないんだけど、どういうこと!?~  作者: 田島ユタカ
第三章 夢見るサキュバス

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夢見るサキュバス その9

「バーチャル配信者とアムさんの因縁については理解しました。そこでいくつか確認がしたいのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」


「大丈夫ですよ。キノコがある限り」


「女性から精気を取ることはできませんか?」


「私、若い男性じゃないとダメなんです。女の子ですから」


「それじゃ男装させるんで、それで何とかなりませんか?」


「店長、何で私を見ながら言うんですか?」


「私、若くて青臭い男子じゃないとダメなんです。女の子ですから」


「それじゃ性転換させるんで、それで何とかなりませんか?」


「だから店長! 何で私を見ながら言うんですか!?」


「私、若くて青臭くて線の細い男子じゃないとダメなんです。女の子ですから」


「悪かったわね! 細くなくて!」


「そもそもサミィは女性だしな」


「アムちゃん。店長はどう?」


「……私、わ・か・く・て! 女を知らなさそうな線の細い男の子じゃないとダメなんです。女の子ですから」


「悪かったな! 若くなくて!」


「店長がダメなら、店の従業員に店長より若い男性が何人かいるけど、どう?」


「私、女を知らなさそうな線の細い薄幸の美少年じゃないとダメなんです。女の子ですから」


「どんだけ属性盛れば気がすむんだよ」


「でも私好みの美少年に限って、真夜中の夢を求めてないの……日本って性教育後進国だし」


「アムさんの好みのタイプは、嫌ってほど理解しましたので気が済むまでイケメンでも美少年でもストーキングしてください」


「それが出来るなら、こんな勇者のオーラが充満した恐ろしい場所に来ないわよ!」


 うーむ、従業員に危険が及ばないのは喜ばしいことだが、この様子では俺の手に余る。


 一応、次善策を提案して、それでダメならお引き取り願おう。


「まずアバターの中の人を全て始末することは不可能です。というか犯罪なので、いくらお金を積まれても引き受けません。ですが企業勢なら、数十億ほど用意していただければ経営権を得ることは可能でしょう。経営権さえ手に入れれば、あとは時間の問題です」


「そんな、お金があるなら今頃、故郷に帰って逆ハーレムを築いてるわよ! それにあなたのプランだと、企業勢は何とか出来ても個人勢が止まらないじゃない」


 おお、キノコガンギマリ状態のはずなのに頭はまわるようだ。


 それじゃ、これから口にするド本命のプランも冷静に判断出来るだろう。


「ご安心ください。お客様は運がいい。今ならダイレクトメールでお伝えした通り、今ならスタブ一万円コースをご用意しております」


「本当!? もう、それならそうとさっさと言ってよ。勇者が働くお店らしく、人が悪い店主ねえ」


「アムさんのお悩みの根源は、こちらの世界でもあなたの故郷でもライバルが多い、この一点に尽きます」


「そうね」


「アムさんの要望である、こちらの世界のライバルを排除することは予算の都合上、不可能と言わざるを得ません。ですが、あなたの故郷のライバルを排除するだけならスタブ一万円で請け負いますよ」


「天城さん、一つ聞いてもいい?」


「何なりと」


「天城さんの言う、あなたの故郷のライバル、とは何を指してますか?」


「あなた以外のサキュバスですよ」


「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい、ああああああ悪魔! 魔王様にも劣る畜生とは、あなたのような人を言うのね」


 配下に畜生呼ばわりとは、アスラって意外と人望が無いのか?


「失礼ね! 魔王様に対する畜生は称賛です!」


「異世界人どもは俺の心を読めるのかよ!?」


「わ、私に同族を売り渡せと言うの!?」


「同族同士で争ってたんじゃないのか!?」


「鬼! 悪魔! 外道!」


「まあまあ落ち着いてくださいアムさん。サキュバスの排除は、ここにおわす勇者にやらせればいいんです」


「なるほど! 勇者に倒されたなら事故死みたいなものですね。うん、それなら私が心を痛めることも、何かの間違いで生き延びた同族から後ろ指さされることもないわね。さすが天城さん、それ採用です! お願いします!」


 さすが純粋な魔族。

 私欲のためなら同胞を売り渡すことを躊躇しないところが素晴らしい。


「――というわけで勇者サミィよ。サキュバス討伐の緊急クエストを発注するから、あとよろしく」


「え!? 店長がやるんじゃないの!?」


「当たり前だろ。ちなみに異世界遠征中は、無給だからな」


「そんな~」


「いいか? 元はと言えば勇者であるお前が元凶じゃないか」


「どういうことですか?」


「アムさんはこう言ってただろ。同族(ライバル)は増加の一途、と。つまり勇者が魔族討伐をサボったツケがまわってきたんだ」


「だって争いの無い平和な世界だから、魔王軍とガチでやりあう必要なくなっちゃったし――」


「そう……つまり、お前がもたらした平和な世界のせいなんだよ」


「何で平和をもたらしたのに、悪者扱いされてるの!? 私はただ勇者としての使命を全うしただけなのに!?」


「だが現にこうして人間の平和の犠牲者がいるじゃないか! こうしてる今もアムさんは、苦しんでるんだ!」


「苦しんでるって……どう見てもエロい顔してますよ。今頃、幻覚ガンギマリで美少年と掛け算してますよ」


「とにかく、お前が悪いの! サキュバスの天敵である勇者が働きもせず、こっちの世界でバーチャル配信者に入れ込んでたから、こうなったの!」


「理不尽すぎる! ちゃんと働いてたもん! ニートじゃないもん!」


「それにな、アムさんがこの店に来たのも、お前がスタブ代を稼ぐために、俺に黙って勝手に開設したお店のSNSアカウントを見たからなんだよ。その責任を取れよ、勇者」


「ぐぬぬ……でも、いくら何でもスタブ一万円で、全てのサキュバスを倒すのは嫌です! 割に合いません! 過重労働です! それに勝手にサキュバスを根絶したら、魔王がめっちゃくちゃ怒りますよ!」


「お前に言われるのは癪だが、ごもっともな意見だな」


「でしょでしょ?」


「ちょっとバックヤードに行ってくる。少し待ってろ」

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