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現代社会のモンスターショップ奮闘記 ~そちらのお店から仕入れたスライム、服を溶かしてくれないんだけど、どういうこと!?~  作者: 田島ユタカ
第三章 夢見るサキュバス

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夢見るサキュバス その5

「お前は、俺を過労死させる気か!?」


「だって、この前のオークのお悩みを解決したら、たんまり報酬をもらったじゃないですか~」


「ああ。お前はスタブ一か月分だもんな」


「私、知ってるんですよ~、店長もちゃっかり報酬を頂いてるの」


 何で知ってんだよ!?

 サミィには黙ってたのに。


「あの後、奥井さんとオークと連絡先の交換をしたからです」


「人の心を読むな!」


「だからホラ、ちゃんと有償って書いてますよね。タダ働きじゃないですよ」


「命あっての物種だ! 確かに俺は、タダ働きは嫌いだけど、かといって仕事に命はかけてないの」


 確かにオークのお悩みを解決したら成功報酬として七桁程の金額を現金一括、手渡しで頂いたけど、あれはたまたま奥井さんの金払いがよかっただけにすぎない。


 それにモンスターカフェとモンスターショップの経営で、俺のキャパシティは上限に達してる。


 これ以上、仕事を増やすのは勘弁願いたい。


 俺にとって余暇の無い人生なんて、生きてる意味すらない。


 幸いにもアカウントは開設したばかり。

 今すぐにでもアカウントを削除すれば、労働強化は免れる。


 黒歴史(メイドすがた)の拡散は手遅れだけど……。


「サミィ、今すぐにでもアカウントを削除しろ。今ならまだ偽アカウントで押し通せる」


「もう遅いですよ~、認証バッジついてますし」


「何でだよ!? こんな怪しげな商売を公言してるアカウントに秒でお墨付きを与えるバカがいるわけねえだろ!」


 そう思い、アカウント名を注視する。

 だがサミィの言う通り、アカウント名の横には公認を示す青いマークがついてる。


「魔王に頼んだら、数分後につけてくれましたよ。コネがあるみたいで――」


「お前ら、仲いいのな」


「対面しなければ発作は出ませんからね。普段はメッセージをやり取りする仲ですよ」


「まるでネット友達だな」


 という事は、魔王(アスラ)も俺の黒歴史に目にしたのか。


 もう色々と手遅れであることを悟った俺は、あらためてお店のアカウントに目を通した。


 案の定、黒歴史に対するクソリプまみれだった。


 閉店時間までたっぷりあるのに、既に残業を終えた直後のような疲労感に見舞われる。


 魔王(アスラ)に知られてるってことは、今更アカウントを削除したところで無駄な足掻きだろうな。


 禁止ワードを打ちまくってBANされるように仕向けても、アスラの鶴の一言で翌日にはアカウントが復活してるに違いない。


 こうなったらもう、相談者が来ない事を祈ろう。


「という事で店長! 早速、相談者第一号ですよ!」


「え!? 誰が!?」


「この人ですよ。店長、鈍いですねー」


 サミィの手の平が俺の視線を誘導する。

 ああ……そういう事か。

 ゴスロリ女性(このひと)が相談者ね。

 確かによくよく気配を探ると人間じゃない。


 先ほど聞いたセリフを考慮すれば、ゴスロリ女性(このひと)の正体はあれしかないだろう。


「あんた……サキュバスか」


 サキュバスは俺の方に顔を向けないけど「そうです」と肯定した。


 ついでにスマホの画面も明後日の方向に向けてる。


 そのためか店内から、俺に対する冷ややかな視線を感じる。


「かしこまりました! ご相談は、あちら(ショップ)でお伺いしますので――」


「若、こいつらはあっしの方で何とかしておきやす」


「助かる。凶器と個人情報を押さえてからリリース、な」


「へい!」


 俺は強引にゴスロリ女性の手を引っ張って、逃げるようにショップに駆け込んだ。


 カフェとは違い、いつも通り閑散としてるモンスターショップに俺、サミィ、サキュバスの三人。


 先ほどまで店番だった従業員には、現金を握らせてからカフェにまわってもらった。


 俺はカウンターの椅子に、サミィとサキュバスはバックヤードから引っ張り出したパイプ椅子に、腰を掛けてる。


 サミィは退屈なのか欠伸をかみ殺してる。

 サキュバスの方はまだ幻覚を視てるのか、それとも幻覚を求めてるのか、売り場のマイコニドに熱い視線を浴びせてる。


 目を合わせないのは若干気になるが聴覚は正常に機能してるみたいなので、このまま話を進めることにした。


「それじゃまずは……えっと、あなたのお名前をお聞かせください」


「は、はい。アムと言います」


「アムさんね……大変申し訳ありませんが最初にお伝えしたいことがあります」


「まだ要件を話してないのに――」


「だからです。こういうのは、一番最初に価格設定が大事です。その辺りは、うちの従業員とお話はされましたか?」


「はい! スタブのプリペイドカード一万円分とダイレクトメッセージでお伺いしました」


 欲望に忠実なら、せめて現金にしろよ!

 俺はサミィを睨みつけた。

 サミィは軽快な口笛を吹きはじめた。

 あれでシラを切り通すつもりのようだ。


 アムさんには申し訳ないが、ここは改めて価格設定を見直した方がよさそうだ。


 割に合わない価格なんて百害あって一利なし。


 ただ迷惑料として、相談の内容だけは無料で聞いてみよう。


「アムさん。うちの従業員とやり取りしたダイレクトメッセージは、一旦忘れてください」


「え!? そんな――」


「俺は善人、悪人である前に商人なんです。儲け話は歓迎しますが、割に合わない話は御免こうむります」

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