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現代社会のモンスターショップ奮闘記 ~そちらのお店から仕入れたスライム、服を溶かしてくれないんだけど、どういうこと!?~  作者: 田島ユタカ
第三章 夢見るサキュバス

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夢見るサキュバス その3

「気ぃ失ったみたいですね……それより若。お怪我はありませんか?」


「大丈夫ですよ。宮田さんに比べたらな」


「はっはっは、ご冗談を。若も見たでしょ? あんなガキどもに遅れは取りませんよ」


「いや……左手に、凄い歯形がありますよ」


「こいつぁ名誉の負傷って奴ですよ」


 少なくとも俺の目には、強盗じゃなくて宮田さんに怯えてたように見えたけど黙っておこう。


「愛しのバニーちゃんを守れたなら、これくらいの怪我なんて、どうってことないですよ。ねー」


 そういって宮田さんは、気持ち悪いくらいのニヤケ面で殺人兎(ボーパルバニー)の真っ白な体に頬擦りしながら席に戻った。


「はぁ……ここは極楽。モンスターはいいねえ。動物と違って俺から逃げないし。ねえバニーちゃあん……もふもふ、ちゅっちゅっ」


 凄い絵面だが当人が幸せならそれでいいか。


 殺人兎(ボーパルバニー)には、今しばらく我慢してもらおう。


 元々、そういう個体として作ってもらったんだしな。


 こうして強盗騒ぎは自警団の活躍によって幕を閉じた。


 俺は店内を見渡した。

 ふうむ、さすが河原町に遊びに来る客人は一味違う。


 この程度の騒ぎでは、動揺しないようだ。

 皆様、自分の世界に入り浸ってる。


 開店当初は落ち着きを取り戻すためにお客様への補填を要したが、今では自警団の存在とこの店の特別な事情の認知が広まったおかげで店内がパニックに陥ることはなくなった。


 郷に入っては郷に従え、とはよく言ったものだが、お客様の河原町への順応には目を見張るものがある。


 お客様に問題がないなら……と俺は気絶してる強盗の処置について考えた。


 と言っても大した事はない。

 要するに、どこに放り出すか、である。

 こういう時、近くに交番がないのは不便に思う。


「店長! そこで寝てる賊、どかしてもいいですか?」


「ダメだ。お前に任せたら、こいつらの有り金、全部奪うだろ」


「それが敵役の運命というものです! 敵というのは死んだら経験値と有り金を全て勇者に差し出すのが決まりなんです!」


「勝手に殺すな」


「それじゃあ、お財布だけでいいので拾ってもいいですか?」


「だから、こいつらはまだ生きてるっての。だから財布は落ちてるんじゃなくて、こいつらのものなの」


「何で店長は、賊に甘いのよー。私には厳しいのに」


「お前に任せたら仕事が増えるからだ。こいつらは俺が処置しておくから、お前はさっさとに自分の仕事に戻れ」


「私だって何時までも昔のままじゃないですよ~」


「ほう。では、具体的な解決案を言ってみろ」


「お店のレビューに星5付けなかったら、素っ裸の写真をバラまくぞって言い聞かせます!」


「サクラレビューはいらん。というか、昔とどう違うんだよ!」


「全然違いますー。前は、全部ひん剥いて捨てただけですが、今回はちゃんと弱みを握ってますー」


「そういう事やるから、お前に頼まないの!」


「待ってください! それなら同業他社のレビューに星1を付けなかったら、以下略」


「それは、いい考えだな」


「でしょでしょ?」


「モンスターカフェなんて酔狂な商売をする奴が、この世で俺以外に存在しないことを除けばな」


「うう……ああ言えばこう言う……」


「ほらほら、働け働け。対価は出してやるから」


 余談だがサミィに荒事の対処を頼まない理由は、これだ。


 普通に考えて、荒事なら勇者に丸投げした方がより安心安全なのが共通認識だと思う。


 そう考えて昔、サミィに荒事の対処を任せたら、女性相手でも容赦なく身包みを剥ぎ取った後、交番に突き出したため大騒ぎになったことがある。


 案の定、逆恨みでお店の悪評がSNS、レビューサイトに連投。


 このスマホ全盛時代、悪評なんてインフルエンザより簡単に広まる。


 おかげでお店が軌道に乗るか否かの大事な時期に、モンスターカフェに閑古鳥が舞い降りた


 以来、荒事は極力、俺が出張って穏便に済ませるようにした。


 今となっては河原町の認知も広まり、ちょっとやそっとの悪評程度では売り上げに影響はない。


 それでも避けられるリスクなら避けたい。

 きっと強者であるサミィには、郷に入っては郷に従え、という言葉は通じないんだろうなぁ。


 悪に対する気持ちは分かるけど、すこしはこっちの世界の規律に歩み寄って欲しいものだ……。


 サミィへの親心はここまでとして、いい加減こいつらをどかさないとな。


 俺は床で寝てる強盗に目を向けた。

 すると強盗の傍らには、いつの間にかゴスロリ女性が座り込んでいた。


 ゴスロリ女性のか細い両手は、それぞれの強盗の額に添えられてる。


「お客様、大変危険ですので速やかに離れてください」


 俺の呼びかけが聞こえないのか、女性は微動だしない。


 代わりに二人の強盗が薄ら笑いを浮かべた。


 その直後、二人の強盗の体がビクンと跳ねた。


「ふふふ……久しぶりの若い男達の精気」


 ゴスロリ女性はそう言いながら立ち上がるとサミィの側に近づいた。


 そしてサミィに向かって「あなたが天城さんですか?」と言った。

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