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現代社会のモンスターショップ奮闘記 ~そちらのお店から仕入れたスライム、服を溶かしてくれないんだけど、どういうこと!?~  作者: 田島ユタカ
第三章 夢見るサキュバス

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夢見るサキュバス その2

 そう。

 この男の言ってる事は間違いない。


 河原町の歓楽街周辺は、風営法対策の一環として、ありとあらゆる公共施設が存在しない。


 基本的に学校、図書館、医療施設が無ければいいのに、クソ姉貴は法改正を見越して役所、交番、消防署も排除した。


 そのため、この近辺に警察はいない。

 110番をかけたところで一般居住区から、ここに到着するまで軽く数分はかかる。


 金を奪って撤収するまでの時間はたっぷりあるのだ。


 強盗の怒声で店内はどうなってるかと言うと、実はさほど変わってない。


 一部のお客様が動揺してるくらいだ。

 この光景を見慣れた常連様と従業員は平然としてる。


 俺自身も特に緊張してないし、脈拍も至って正常。

 鳥肌は立たないし、体温も上がらない。


 むしろ強盗の反応の方が面白い。

 凶器を披露し、力いっぱい叫んだにも関わらず、店内が粛然としてるため面食らってるようだ。


 強盗の二人は不安にかられたのか、何度か顔を見合わせた。


 そして、中背中肉の男性が改めてナイフの切っ先を俺に突きつける。


 ナイフの先端が小刻みに震えてる。

 悪事に慣れてないのだろう。

 可愛そうに。


 せめて、うちの店を選んだ度胸に免じて、凶器を取り上げるだけで済ませてやろう。


 こういうのは穏便に処理した方がいい。

 お客様に、うちの店の警備が万全であることをやんわりとアピールできるからだ。


 ちなみに強盗の将来なんて1ミリも気にしてない。


 かと言って、お客様の目の前で力任せに強盗をフルボッコにしたら、それこそ俺の悪評が秒で拡散して、客足が遠のく。


 だから穏便に処理するのだ。


 俺は、わざとナイフに近づいた。


 その様子に驚いたのか、はたまた腹が据わってないのか「ひぃ!」と中背中肉の男性が小さな悲鳴を上げつつ、一歩後ずさる。


「詳しい話は、あちらでお伺いしますよ」


 俺は、いつもの態度でご案内した。


「てめえ! おちょくってんのか!」


 俺の態度が気に障ったのか、メタボ気味の男性が殴りかかってきた。


 欠伸が出そうな鈍い右ストレートが俺にめがけて放たれる。


 殴られても痛くはなさそうだが、お客様を不安にさせたくないので右掌で受け止めることにした。


 俺が右掌を上げた、その時――右ストレートが止まった。


 俺に届くよりも早く、メタボ気味の男の右手首を掴んだ者が居るからだ。


 結果的に俺を守ってくれた者の顔は、俺の知人であった。


 ポマードがたっぷり塗りたくられたリーゼントに真っ白なスーツをまとったガタイの良い男性。


 強盗を前に見せる余裕たっぷりの顔には、深いほうれい線が刻まれてる。


 見た目だけなら、ヤのつく御仁である。


「休憩中じゃないのか? 宮田(みやた)のおっさん」


「うちらの目の届くところで若にもしもの事があったら、姐さんにどやされますので……」


「お勤めご苦労様。でも、ヤクザのノリは勘弁してくれ……それに男の俺に継承権はねえよ」


「承知してます。ですから近い将来、若はわしらを背負って立つのでしょう?」


「冗談は、顔だけにしてくれ」


「その言葉、そっくりお返ししますよ若」


「はいはい……それじゃ物のついでだ。この場を任せていいか?」


「へい!」


 宮田のおっさんは二人の強盗にぐいっと詰め寄る。


 ……小脇に真っ白な殺人兎(ボーパルバニー)を抱えたままで。


「な……なんなんだよ! お前!」


 中背中肉の男性は、体も声も震えてる。

 きっと宮田さんをヤクザと勘違いしてるのだろう。


 もはや強盗を目論んでた入店時の勢いは、どこにもない。


 宮田さんの目が鋭くなる。


「おい、ガキども!」


「「ひぃ!」」


「せっかくバニーちゃんと遊んでたのに、お前達のせいでこんなに怯えてるじゃねえか!」


 たしかに宮田さんの左腕に抱えられてる殺人兎(ボーパルバニー)はジタバタしてる。


 どうみても殺人兎(ボーパルバニー)は、宮田さんが怖くて暴れてるようにしか見えないけど黙っておこう。


「い、いや……僕たちは関係ないと思い――」


「ああん? 俺とバニーちゃんのイチャコラタイムを邪魔しといて何だァ、その言い草はァ!」


 言葉はともかく、宮田さんの凄味に二人の強盗は尻もちをついた。


 中背中肉の男性の手から離れたナイフが床に落ちる。


 それを宮田さんが蹴って、ナイフを強盗から遠ざけた。


 尚、左腕に力が入ったのか、殺人兎(ボーパルバニー)は苦しそうに口を開けてる。


 整然と並ぶピラニアのように鋭い歯を覗かせる。


 ちなみにジンバブエドルから造ってるので、人間の肉を噛み千切る力はない。


 せいぜい甘噛みだ。


「残念だったなお前達。確かに、この近辺にサツはいない。だがな……治安を維持するための組織は、ちゃあんとあるんだよ。俺達は自警団って奴だ」


「どこから、どうみても暴力だ――」


「自警団って言ってんだろうが!」


 宮田さんの言う通り、河原町には警察の代わりに、天城家が組織した自警団がある。


 そして警察ではなく自警団を置いてる理由は意外と単純で、異世界人に関する法整備が間に合わないから、と聞いたことがある。


 今でこそ法整備も国際法も進み、異世界人は世間に認知されてるが、昔は異世界人の対処に苦労したみたいだ。


 ちなみに現在の自警団の役割は、歓楽街の治安維持。


 悲しいことに現実は、残酷なまでに力が物を言う。


 如何なるルールも暴力の前では、只の文章に過ぎない。


 だからこそ暴力への抑止力として自警団が存在する。


 構成員には異世界人もいるので、魔法でひと暴れする輩が出ても即対処できる。


 そんな彼らの助力のおかげで、多くの異世界人が住む河原町は今日も平和だ。


 河原町の平和を守る自警団の尽力によって、二人の強盗は腰が抜けてるのか立ち上がる様子がない。


 それどころか宮田さんの迫力に圧倒されて言葉もないようだ。


「そこんところ理解したなら、とっとと失せな! それとも痛い目にあわないとわからんか? 安心しな。ちょっとやそっとの暴力沙汰なら表に出ることはない。何せ、ここいらにはサツはいないからな」


 その言葉がダメ押しになったのだろう。

 二人の強盗は、パタンと背中から倒れた。

 二人揃って白目をむいてる。

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