表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代社会のモンスターショップ奮闘記 ~そちらのお店から仕入れたスライム、服を溶かしてくれないんだけど、どういうこと!?~  作者: 田島ユタカ
第二章 オークED

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/18

オークED その10

 ほらみたことか。

 あいつが、あの程度でへこむわけがない。

 仮にへこんだとしても、伝家の宝刀ビキニアーマーを引っ提げてもオークを元気に出来なかった事が要因だ。


 入口には、パンツスーツ姿の女性が一人。


「お一人様でしょうか?」


 俺はお客様の前に立つと、お決まりの定型文を口にした。


 女性が「はい」と返事したのを確認すると、空いてる席に案内した。


「ご注文とコースはお決まりでしょうか?」


「飲み物はアイスティー、モンスターは抱きしめ放題スライムで」


「かしこまりました」


 俺は注文用紙にお客様の注文を記載すると、近くにいた従業員に引き継いだ。


 ちなみに抱きしめ放題スライムとは、ハグに特化した特注スライムのことである。


 人肌のような温かさと脂肪のような柔らかさと筋肉のようなしなやかさを備えた、極上の抱き枕で仕事に疲れたビジネスパーソンに好評だ。


 引き継ぎを終えると重い足取りで奥井さんの席に戻る。


 先ほどまで俺を刺し貫いてた冷たい視線はない。


 どうやら周囲のお客様は、俺達への興味が失せたようだ。


 各々、注文したモンスターと戯れてる。

 サミィはミカヅキから被せられたパーカーで身を包んで、肌の露出を抑えてる。


「お勤めご苦労様」と奥井さんが切り出す。


 が、妙案が思い浮かばないため、俺は話を切らさないように「まだ営業時間中ですよ」と心にもないことを口にした。


 しかし、誰も俺の言葉に続かない。

 妙案がないなら、せめて話のタネでも……と思い辺りを見渡すと、ミカヅキの視線が俺達ではなく、全く別の方を向いてることに気づいた。


 見回してるわけではない。

 ある一点を注視してるようだ。

 俺はミカヅキの視線を追った。

 

 その先には、先ほど俺が案内したお客様が嬉々とした表情でスライムを抱きしめてる姿があった。


「ミカヅキ、あのスライムが気になるのか? そういやコースを頼んでないようだが――」


「あ、すみません。飲み物しか注文しなくて」


「別に構わねえよ。モンスターに触れるのが怖いとか雰囲気だけを味わいたくて、飲み物しか頼まない客もいるしな」


「恐縮です」


「今からでも遅くはないけどな。気分転換に頼むかい? いつもセレブばかり相手してたら飽きるだろ?」


「お気遣いは無用です。その……お恥ずかしい話ですが、オレが気になったのは女性の方です」


「ふーん」


 俺には先ほど案内したお客様のどこがミカヅキの琴線に触れたのか見当がつかない。


 失礼かもしれないがお客様は、ごく普通のビジネスパーソンといったところだ。


 飾り気もないし、特別美人というわけでもない。


 だがミカヅキにとっては、お客様にしかない魅力があるようだ。


「奥井さんは、あちらのお客様について、何か思い当たることはありますか?」


「ないわね。初めて見たわ……それに、うちの客層には見えないわね」


 俺はサミィに目配せをする。

 サミィは、私は関係ない、と言わんばかりに首を勢いよく左右に振る。


 だよなぁ。

 俺なんてお客様の誰が常連なのか知らないし。


 一見様も常連様も、俺からしたら同じお客様。


 贔屓するつもりはない。

 代金に見合うサービスを提供するだけだ。

 それにしても、あちらのお客様と他のお客様の違いねえ……。


 気乗りしないが他の女性客と比較してみる。


 髪型、スタイル、顔のつくり、服装、化粧の濃淡、立ち振る舞い……ざっと比較しても皆目見当がつかない。


 何分うちの店の客層は、中流層がメイン。

 トラブルを起こさない人なら等しくお客様。


 そのため、お客様の数だけ個性がある。

 そんなお客様から特別事項を抜き出したり、共通項を見い出すには警察や探偵並の洞察力と調査能力を要する。


 いや……よくよく考えれば今回は、そこまでは要らないか。


 何せミカヅキの視線を引き付けた女性だ。

 ここは一つ、身形に絞って、案内したお客様と他のお客様との違いを見つけよう。


 ……見つけた。

 一点だけ明らかに違うところがあった。

 普通なら気にも留めないだろうが、今回は目的が目的だ。


 可能性は大いにある。

 俺は、もう一度サミィに任せることにした。


 これは女性でなければ出来ないからだ。


「サミィ、ちょっと制服のスラックスを履いてきてくれ」


 俺は、サミィに男性従業員用の制服を着用するようにお願いした。


 理由は、これが相違点だからだ。

 単純にボトムスがスカートかパンツか、という違いである。


 俺が案内したお客様はパンツスーツだが、他の女性客はスカートなのだ。


 露出も抑えられるから、気兼ねなく頼めるのも良い。


「……です」


 だがサミィからの返事は、予想に反して芳しくない。


 悪いものでも食ったのか?


「無理です……店長」


「へ? だって、どう考えても今の格好よりマシだろ? 一体何が――」


「メイド服で接客したり、スカートをたくし上げて絶対領域を晒すことは、まだ我慢できます」


「おい! その言い方止めろ! まるで俺が無理強いしたみたいじゃないか!」


「観衆の前でビキニアーマー姿を晒す恥辱にだって耐えられます」


「お前、得意げに披露してただろ!? 何で被害者ぶってんだよ!?」


「だけど……異性装(いせいそう)だけは……異性装だけは許してくださいぃ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ