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現代社会のモンスターショップ奮闘記 ~そちらのお店から仕入れたスライム、服を溶かしてくれないんだけど、どういうこと!?~  作者: 田島ユタカ
第二章 オークED

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オークED その8

「そこのオークさん、私をよく見てください!」


 サミィは不機嫌そうに言うと両手で制服のスカートの裾を摘まんだ。


 そして、ゆっくりとスカートをたくし上げた。


 裾は下着が見えそうで見えないギリギリのところまで上がった。


 艶やかで張りのある両太ももが露わになる。


 残念なことに色気がないので、俺の息子はピクリともしない。


 それでも、こうして目を向けてるのも悲しい男の(さが)


 若い女性を求める本能が釣られてるだけに過ぎない。


 おまけにサミィは、男なんてこんなもので十分だろ? と言わんばかりのドヤ顔。


 あれでは、逆効果だ。

 って俺のことはどうでもいいか。

 患者はミカヅキだ。

 ミカヅキの息子さんが元気になれば解決なのだ。


「ミカヅキ、アレを見た感じどうだ?」


 俺の質問にミカヅキは何も言わない。

 奥井さんがテーブルの下に潜った。

 どうやら現物の様子を目視するようだ。


 テーブルで隠れてるとは言え危険な構図だから、うちみたいな健全なお店では止めていただきたいのだが、事情が事情なだけに今回は口を挟むことを止めた。


 ほどなくして、テーブルの下から奥井さんの左腕がにゅっと出てきた。


 グーの形をした左手の親指が上がり、グッドの形となる。


 お? もしかして元気になったのか?

 そう思った瞬間、奥井さんの左手の親指が下を向いた。


 どうやらダメだったようだ。

 奥井さんがテーブルの下から出てきた。

 椅子に座るとサミィを睨みつけた。


「ダメね。全然、ダメ。ウンともスンとも、にっちもさっちも、ピクリともしないわ」


「そんなぁ、たかがオークのくせに」


「はぁ……これだから若い娘は嫌なのよ。若ければ男なんて簡単に釣れると思い上がる、浅はかな考えが気に入らないわ」


 奥井さんの言葉にショックを受けたのか、はたまた女としてのプライドがズタボロなのか、サミィはスカートをたくし上げたまま放心してる。


 放心するのは勝手だが、せめてスカートから手を放してくれ。


 うちは、健全なお店なんだから。


「大体ね、若い娘なら、とうの昔にあてがってるわよ。そもそも、ここは河原町よ? 金と欲に目が眩んだ小娘なんて、吐いて捨てるほど居るのよ!」


 まあ誰もが思い浮かぶよな。

 そして、奥井さんの財力なら、自販機でジュースを購入する感覚だろう。


「現地人と言うから期待しましたが拍子抜けね。その程度で治療できるなら、天城家の者に借りを作る真似はしないわ」


 サミィは微動だしない。

 頭の中が真っ白になってるのだろう。

 このままでは埒が明かないので、ミカヅキのためにも一旦バトンをもらおう。


「差し支えなければ、奥井様があてがった女性の具体的な年齢幅をお伺いしてもよろしいですか?」


「下は十八、上は二十九よ」


「普段の接客時の年齢層も教えていただけませんか?」


「概ね三十代~五十代。たまに百歳近い方がお見えになりますわ」


「なるほど。二十代以下のお客様は来店されないと」


「若い方はご年配よりも希少ですわ。何分うちの客層は、日常生活では味わえない刺激的な一夜のために大金を惜しまない富裕層ですので、酸いも甘いも知らない遊び盛りの若い方は滅多に来店されませんの。ちなみに、うちに来店する若い方は例外なく素面で変態ですわ。これらが何かの参考になればよいのですが――」


「ありがとうございます」


 とは言うものの正直、俺には見当がつかない。


 男性の接客にも驚いたが、女性の年齢層の幅広さには舌を巻く。


 どんな荒れ球でもストライクゾーンに入ってしまう。


 ミカヅキの様子から見ても、奥井さんの言葉は信頼してもよさそうだ。


 結局、今の話から得られたのは好みの年齢層という線が消えた、という一点のみ。


「店長! ちょっと中抜けしてもいいですか? すぐ戻りますので!」


 俺が思案を巡らせてると、サミィが声をかけてきた。


 先ほどまで抜け殻だったのが嘘のように溌剌としてる。


 後、スカートから手を放してる。


「理由はあるのか?」


「私に良い作戦があります!」


「戻るまでにかかる時間は?」


「十分くらいです」


「わかった。ちゃんと戻って来いよ」


「わかってますよ。スタブのためですから」


 そう言うとサミィは呪文を詠唱した。

 数秒後、サミィは忽然と姿を消した。


「あらま」と奥井さんは目を丸くしてる。


「勇者というのは伊達ではないようですね」


 ミカヅキは感心してるようだ。

 周囲からは「やべ、間近で魔法見るの初めて」等、いくつもの驚きの声が上がる。


「少し時間が出来ましたね……天城さん、注文いいですか?」


「うけたまわります」


「コーヒーを一つ、ホットでお願いします」


「かしこまりました。奥井さんはいかがなさいますか?」


「そうね……ルイボスティーで」


「ちなみに奢りではありませんよ?」


「ええ。お金には不自由してませんので」


「話のわかる、お客様で大変助かります」


 俺は注文を受けた後、二人の前に置いてある空のカップを回収してからキッチンに移動した。


 いつもの手順でルイボスティーとコーヒーを淹れてから、奥井さん達のテーブルに戻る。


「お待たせしました。こちらルイボスティーとコーヒーになります」


 そう言いながら奥井さんにはルイボスティーを、ミカヅキにはコーヒーを差し出す。


「丁度いい時間ね。そろそろ、あの娘が戻ってくるころかしら」


 奥井さんは美しい所作でルイボスティーを口に運んだ。


 ちなみにうちにはドリンクサーバーの類いはない。


 お茶類なら葉っぱや豆から一杯ずつ淹れてるし、果実系飲料は既製品だが全てフレッシュ。


 その分、値が張るけど歓楽街に来る連中の頭には、倹約や節制の文字はないので大丈夫。


 お値段は、普通のチェーン店はおろか個人経営店と比べたら割高なのは否めないが、適正価格の自信はある。


 奥井さんとミカヅキが各々、注文した飲み物を堪能してると、目の前に忽然と八頭身のテルテル坊主が現れた。


 その瞬間、周囲から拍手が沸きおこる。


「フッフッフッフ……大変、お待たせしました!」と声高々に宣言するテルテル坊主……もといサミィ。

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