23_いつから幽霊を信じられなくなったのだろう。
子供の頃。夜、廊下の奥、暗く静まり返ったリビング。それを視界の隅にとらえながらトイレに行かなければいけないのが、とても嫌だったのを覚えています。
テレビで流れていた『学校の怪談』の映画とか。『奇跡体験アンビリーバボー』でも、定期的に洋物ののホラー特集とか。そういうの、見るのはすごく好きだったのですけど、見たら見たでその日の夜は震えてしまう……そんな子供でした。
いつからか、幽霊それ自体を信じられなくなってしまいました。
大人になるというのがそういうことだからなのか、それとも私の感覚が周りと違うのか……わかりませんが、とにかく、あらゆる霊魂の存在を肯定できなくなってしまいました。
つまりこう思ってしまったのです。
なぜアリがあの世に行くとは誰も思わないのに、人間ならばあの世に行けると思うのだろう? 台風が消えても「台風が死んだ」とは誰も思わないのに、生命活動が終わることを「死んだ」となぜ思うのだろう? 死んだらどこに行くのかという疑問を、コンピューターが壊れたときには想像もしないのに、人間のときにはそう思うのはなぜなのだろう?
私はきっと、人間と自然とをあまり区別していないのでしょうね。人工物とそうでないものも、本質的には区別していない。
等しく、この世界の中で起きている現象にすぎないと感じている。
その考えが確立してしまったときから、霊魂の不在が実感となってしまったときから、幽霊がフィクションの中の登場人物になってしまいました。河童や狼男や、エイリアンやプレデターと同じジャンルのキャラクター類型としての、幽霊──というわけです。
いやだ。
そんなのはいやだ。
幽霊はもっと怖くなくちゃいけない!
背筋が凍り、暗闇に近づきたくなくなるような
理不尽で、不明瞭で、この世の理を侵食するような
恐怖の象徴としての幽霊を!!
私は求めている!!
私は幽霊を信じていません。しかし幽霊に「怖がりたい」のです。
子供の頃に感じたように、震え上がるような幽霊ホラーに浸りたいのです。
「生きている人間の方が怖いんですよ」なんて、そんなことはわかっとるわいなのです。それでも幽霊は生きてる人間より怖くあって欲しいじゃんか!
そのためには私は幽霊を信じられなければいけないのです。
信じていないくせにそんなことができるのかは、私にはさっぱりわからない。
それでも信じたい。幽霊に震えたい。
自分でもこの気持ちがよくわかりませんが、もしかするとこれはノスタルジーなのかもしれないですね。




