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パイロット作品集  作者: 怪人工房


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最弱の四天王

第一章:遭遇

「ついに魔王城!三年間の修行の成果を見せる時だ!」

勇者アレンが意気揚々と城門に到着すると、そこには小さな少女がお弁当を食べていた。

「んむんむ...あ、勇者様ですか?」

ご飯粒を頬につけたまま、リリィが立ち上がった。

「そうだ。貴様が門番か?」

「違います!私、四天王の夜闇のリリィです!」


          「...は?」

挿絵(By みてみん)


アレンは目を疑った。情報では四天王は全員恐ろしい強者のはず。目の前の少女は、どう見ても近所の子供だ。


「では、戦ってもらおう」アレンは剣を構えた。

「わ、わかりました!」リリィは杖を振りかざす。

「出でよ!冥界の黒き軍勢!ダークサモン!」

モコモコモコ...


 現れたのは、子犬だった。

「ワンッ!!」

それもゴールデンレトリバーの子犬。


     「...え?」

「あれ?おかしいな。もう一回!」

モコモコモコ...

今度は

「ニャ~ン」

子猫だった。

「なんで!?」

リリィは泣きそうになっている。

「昨日の練習では闇の騎士が出たの!!!!」

「キミ...本当に四天王なのか?」

「そうです!ほら、四天王バッジもあります!」

ふんすっと鼻息も荒くリリィが見せたのは、明らかに手作りの画用紙バッジだった。

「…………………。よし、戦闘開始だ」

「待ってください!せめて召喚魔法が成功するまで...」

ヒュッ!シャリイイイイイン!!!!

アレンの聖剣が一閃。リリィは「きゃー!」と倒れた…。

「よし、これで四天王一人撃破。あと三人だ」

その時、城全体が揺れた。

第二章:溺愛四天王の逆襲

「リリィちゃああああん!!!」

城の壁をぶち破って現れたのは、全身筋肉の巨漢、業炎のザイードだった。が、涙と鼻水でグシャグシャの顔で叫んでいる。

「貴様ァ!リリィちゃんに何をした!」

「………………。倒しただけだが?!?!」

「リリィちゃんは四天王で一番弱いんだぞ!だから俺たちが守らなきゃいけなかったのに!」

「知るかぁ!?!?」

ザイードが炎を纏う。その炎は...なぜかハート型だった。

「リリィちゃんは毎朝『ザイード様、今日も筋肉すごいですね!』って褒めてくれたんだ!俺、それが生きがいだったんだぞ!」

「だから、知らんて!」

「許さん!俺の全力、見せてやる!リリィちゃんの仇ィィィ!」

ザイードの放った業炎は確かに強力だった。が、涙で前が見えていないらしく、全部明後日の方向に飛んでいく。

「まずはお前が落ち着け!!!!ザイード!!!!」

「落ち着けるか!リリィちゃんが...リリィちゃんがぁぁぁ!」

 ザイードは泣き崩れた。可燃性の涙と鼻水が床に落ち巨大な火柱が上がる。地獄の業火もかくやと言う炎の中ザイードが崩れ落ちる。完全に戦闘不能である…。


「何をしているの、ザイード」

残る四天王の二人のうち一人、氷結のセレスティアが現れた。クールビューティーだが、目が明らかに赤い……。嫌な予感がアレンを襲う。

「別に、リリィが倒されたからって動揺なんかしてないわ。私はただ、四天王としての務めを果たすだけよ」

「………………。そうか?」

「でも!」

セレスティアの声が裏返る。

「リリィは私が氷魔法を教えてたのよ!あの子、百回やっても成功しなかったけど、『いつかセレスティア様みたいになります!』って目をキラキラさせてて...」

涙がポロポロ落ちる。

その涙が氷の刃になってアレンに襲いかかる。

「可愛かったのよ!すっごく可愛かったのよ!『セレスティア様、お茶入れました♪』って、いつもお茶を持ってきてくれて!」

「頼むから落ち着けお前ら?!?!」

「落ち着いてるわよ!」

完全に泣いている。ギャン泣きである。

「私、ツンデレじゃないから!本当はリリィのこと大好きとか思ってないから!」

「それ完全に好きだろ!!!!もうヤダこの魔王軍………………。」

セレスティアは泣きながら氷魔法を放つが、涙で視界がぼやけてまったく当たらない。やがて泣き崩れ膝をついたセレスティアの足元から氷の柱が立ち上がる!言うまでもなくセレスティアの涙と鼻水である!カッチカチの氷の檻がセレスティアを閉じ込めた…。


そして…、最後に現れたのは雷鳴のグラムヴェルト。巨大な雷の魔人が、号泣していた。

「うわああああん!リリィィィィ!」

「だから泣くなって?!?!?!」

「リリィは俺の妹分だったんだぞ!いつも『グラムお兄ちゃん』って呼んでくれたんだ!昼寝の時は俺の膝で寝てたんだぞ!」

グラムヴェルトは泣きながら雷を放つ。が、泣きすぎて力が入らず、静電気レベルの雷しか出ない。

「この前なんか、『お兄ちゃんのためにクッキー焼きました』って持ってきてくれて...焦げてたけど、俺、全部食べたんだ...美味しかったんだぞぉぉぉ!」

「知らん!」

「うわああああん!」グラムヴェルトは泣き崩れた。床が涙と鼻水でびちゃびちゃになりグラムヴェルトは制御不能になった自分の雷で感電して戦闘不能に…………………。

第三章:魔王登場

三人の四天王を(勝手に泣き崩れて)倒したアレンは、魔王の間へ辿り着いた。

玉座に座る魔王ヴォルガノスは、膝にリリィを抱いていた。

地の底から響くような声で、語りかけてくる……。

「...勇者よ……。」

「魔王ヴォルガノス!覚悟しろ!」

「この子を、見たことがあるか……?」

「さっき倒した」

「そうか………。」

魔王は立ち上がった。

「ならば教えよう。この子がどれほど愛されていたかをッッッ!!!!」

魔王が指を鳴らすと、城中から魔物たちが集まってきた。

「リリィ様が...」「リリィちゃんが...」「リリィお嬢が...」

全員泣いている。

「この子は毎朝、城中の魔物一人一人に『おはようございます』と挨拶していた」

「リリィ様、俺の名前覚えてくれてたんだ...」下級魔物Aが泣く。

「掃除当番の時、いつも一緒に手伝ってくれたんです...」下級魔物Bも泣いている。

「先週、俺が風邪引いた時、お粥作ってくれたんだぞ...」下級魔物Cも号泣。

「私は毎朝、この子のためにお弁当を作っていた……。」

魔王の目にも涙が浮かぶ。

「昨日も『魔王様のお弁当、世界一美味しいです!』と言ってくれた……。」

「だから!!!!知らんわ!!!!」

「だが、もういない……!!!!」

魔王の魔力が爆発する。城が揺れる。

「待て、魔王ヴォルガノス!」

「何だ!?勇者?!?!今さらの詫びならもう受け付けんぞ!?!?」

「その子、動いてるぞ?」

「...え?」

リリィがもぞもぞと動いた。

「あれ?私...?」

「「「「「「「「「「「「「「リリィィィィィィ!!!」」」」」」」」」」」」」」

魔王城全体から歓声が上がった。

終章:真実

「えっと…?どうして皆さん泣いてるんですか?」

起き上がったリリィを、四天王が抱きしめる。

「リリィちゃん、生きてたぁぁぁ!」

「当たり前でしょ!...って、ちょっと苦しいです」

アレンは呆然としていた。

「あの...勇者様」

リリィが申し訳なさそうに言った。

「私、魔法防御だけは得意で...攻撃魔法は全然ダメなんですけど、防御魔法だけは完璧なんです」


       「は?」


「だから、勇者様の攻撃、全然効いてなくて...でも怖くて気絶しちゃって...」


 つまり、リリィは倒されてなどいなかった。

ただ気絶していただけだった。


「そ、そんな...」

「というわけで勇者よ……。」

魔王が魔剣を構える。刀身から禍々しいオーラが立ち上る。

「我が愛しき四天王に恐怖を与えた罪、償ってもらおうか」

「待てぇ!!」

「リリィちゃんを泣かせた罪は重いぞぉぉぉ!」ザイードが炎を纏う。今度はちゃんと狙いが定まっている。

「許さないわ」セレスティアの氷が的確にアレンを狙う。

「うわああああん、怖い思いさせてごめんなリリィィィィ!」グラムヴェルトが号泣しながら雷を放つ。

「ちょ、皆さん!落ち着いて〜勇者様は悪くないです〜〜!!」

リリィの声は、四天王の怒号にかき消された。

それから三日三晩、勇者アレンは魔王と四天王の追撃から逃げ続けた。

最終的に、リリィが「もう許してあげてください」と土下座して懇願したことで、ようやく解放された。

「よいか!?二度とリリィに近づくな!!!!近づいたらお前の里の連中全員にお前にかけたのと同じ、『タンスの角に小指を一日最低三回ぶつける呪い』をかけるからな!?マジで!!!!」


と、魔王に釘を刺され、アレンは這々の体で魔王城を後にした。魔王城の調度品や柱に何度も足の小指をぶつけて泣きながら……。

「魔王様、私、役に立ててませんよね...」

城に戻ったリリィが落ち込んでいる。

「何を言う」

魔王はリリィの頭を撫でた。

「お前は魔王軍の宝だ」

「リリィちゃんがいるから、俺たちは頑張れるんだ!」と、ザイード。

「そうよ。貴方がいてくれるだけで、みんな幸せなの」と、セレスティア。

「リリィ、大好きだぞぉぉぉ!」と、グラムヴェルト、また泣いている。

「みなさん...」リリィの目に涙が浮かぶ。

そして翌日。

「リリィ様が泣いた!誰だ、リリィ様を泣かせたのは!」

「四天王だ!」

「許せん!」

魔王城は再び大騒ぎになったという。

四天王最弱のリリィは、今日も魔王城で愛されている。

そして勇者アレンは、二度と魔王城に近づかないと心に誓った。日に最低三度はタンスの角に足の小指をぶつける痛みが勇者の心を完全にへし折った…。


 愛は偉大である。特に溺愛は。知らんけど…。

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