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Noble Bright  作者: 桜惡夢
9/10

神託


 俺の即位と共に“ノーブルディネス真国”と名が改められてから早五年。

 国は安定しており、各地の農業や畜産業も順調。人材も育っているし、次代も着々と生まれている。もう自分の子供だけで一万人を越えたからねー。

 妻の数は二千人を越えましたー。どんどーん。


 うん、自棄に思えるけど、違うから。

 まあ、大陸統一国の初代真王になった以上、妻が増える事に関しては、もう何も言いません。

 それが、自分の責任で義務の一つだと考えられる様に成りましたから。


 ただ、妻の姉妹や従姉妹や親族はいい。母娘でも一緒に愛せます。実際に居ますから。

 でもね、姪っ子──実の兄姉の娘で、幼い頃には面倒を見たり、遊んだり、読み聞かせをしたりして俺を慕ってくれていた娘が妻になるのは……

 自分の中では一番抵抗が有った。

 最終的には、泣き落としに屈してしまったが。

 勿論、妻として娶ったからには愛します。

 ただ、その姪っ子が女の顔をして俺を求めている姿を見ると複雑な気分になります。

 抱いている時点で俺が何を言っても説得力なんて有りませんけどね。

 因みに、俺とは七歳差です。


 俺の最初の子供達は四歳に成りました。可愛い。息子も娘も可愛い。勿論、妻達はもっとです。


 ゲームという枠を疾うに越えて、自分達の物語を紡いでいる訳ですが……ふと、考える訳です。

 神々が“レイグリフ生存を達成せよ!”といった無理難題を振ったのだとしても、俺のチート具合は過剰でしかないと思う。事実、過剰だから。

 しかし、大陸統一という観点から見た場合、その過剰なまでのチートさが無ければ此処まで至る事は出来てはいなかったのも間違い無いだろう。


 そう考えると、真の命題(ミッション)は大陸統一?


 そんな疑問が思い浮かばない訳ではない。

 ……まあ、そんな感じの俺の活躍を記した書物を遺そうとした妻達とは長い話が続いた。肉体言語でだった事は言うまでもない。



「御父様ー」



 そう言いながら走ってくるのはエルとの長女。

 屈んで抱き止めると一回転しながら立ち上がる。キャッキャッと喜ぶ笑顔が可愛い。

 そんな俺の様子を見ながら歩み寄るのはニーナ。今は両手を子供達に握られ、身体の前には生まれて三ヶ月の俺との三女が専用具で陣取っている。

 両手を握っているのはノインの長女とミルフィの次女だったりする。

 相変わらず女子人気が高いな。流石は御姉様(・・・)


 そんな事を考えたのを察し、無言の笑顔。

 「よく言った。次の子の分を絞り取ってやる」と宣戦布告される。勿論、受けて立つとも。


 さて、それはそれとして。



「今日はエルと一緒じゃなかったのか?」

「御母様ね、大聖堂に御用なんだってー」

「大聖堂?」

「詳しい事は聞いてはいないが、急いでいたな」



 視線でニーナに問うが、小さく首を横に振った。俺の正妻であり、真国の前身である王国時代最後の国王の娘であるエルは名実共に真王妃。

 だから、色々と忙しい事は確かだが、子育てには手抜きをしないし、人命を左右する様に事でもない限りは子供達との時間を第二(・・)にしている。

 第一は言うまでもなく俺との営みだ。


 そんなエルが、ニーナに何も説明もしないで急ぐという理由が思い浮かばない。

 ──が、何故だろう。急に寒気がした。不吉な。久し振りに、フラグが立った様な感じだ。






「本日、神託(・・)が御座いました」



 夕方、戻ってきたエルが俺やニーナ達、妻の中の重鎮だけを集めて、そう宣った。


 それだけでも五十人近いんだからなぁ……これに慣れた俺も駄目な気がする。

 ……現実逃避している場合じゃないか。


 初めて聞く事だけど、エルはクラスが“聖女”。歳下の妻達を育成しても誰も辿り着けないクラス。メインヒロイン補正か、王家の血統か、俺の正妻が条件なのかもしれない。或いは唯一人だけ(ユニーク)とか。

 そんな訳だから、不思議には思わない。聖女なら神託を受け取る事も有るだろう。可笑しい気もするけれど有り得ない事だとは思わない。

 滅茶苦茶嫌な予感はするけど。畜生。フラグの事なんて考えるんじゃなかった。


 ──等と【並列考動】を無駄遣いしているけど、ニーナ達は誰も何も言わない。判らないもんな。

 だから、エルは少し溜めて雰囲気を作る。うん、そういう演出、好きだよな~。



「大聖堂にて瞑目し、祈りを捧げる私に神々の声は仰有られました。「真国より海を越えた遥か東に、大小の島々から成る“ムーサ大陸”が有る。現在、彼の地ではダンジョンの侵食を止める事が出来ず、滅亡の危機に瀕している。そこで汝等が夫、神々(我々)が認めし救世主にムーサ大陸に行き、彼の地を救い、そして治めて貰いたい」との事です」



 ……まさかの新大陸情報が神々経由とは。いや、其処の「神々が御認めに!」「号外! 号外を出す手配を!」「エル様に引用の許可を忘れずに!」と世間に広めようとしてる君達、絶対に止めなさい。駄目。「えー!」じゃない。

 あと、其処で決めポーズで余韻に浸ってるエル。もう少し詳しく話して。



「つまり、そのムーサ大陸を支配して御姫様とかにレイ様の子種を蒔き捲れって事でしょ?」

「おい」

「流石はティアさんです」



 グーッドッ! ──じゃないからっ! ティアも遣り返して応えない!

 …………え? マジでそういう方向なの?



「はい。ムーサ大陸にもクラス持ち──神々からの恩恵を賜っていた者は以前は居たそうなのですが、欲や疑心には抗えず数を減らし、残る者も年々質が落ちていっていた中、周辺国との戦争で国は滅び、ダンジョンの侵食を止めらる者は居なくなったと」

「話を聞く限り、他人事では有りませんね。私達も同じだったかもしれないのですから……」

「フローラさんの言う通りです。しかし、そうなる未来を救ったのがレイ様です。神々が称賛を以て、その偉業を御認めに成られたのです!」



 ……エルが熱演しているなぁ……

 はい其処、メモらない。没収します。駄目です。大人しく渡しなさい。

 まあ、全員優秀だから頭の中には有る筈だから、この臨時家族会議が終わったら快楽で上書き(デリート)だ。



「話は判ったが、どう遣ってムーサ大陸まで行く? レイの転移が有るから向こうに行きさえすれば、通う事は出来るから統治は問題無いが……」

「あー……そっか、()を渡るんだもんね~」



 ニーナの指摘を聞きティアが頭の後ろで手を組みながら一番の問題点を理解する。

 【転移】に距離は関係無いし、移動距離によって消費するマナの量が増える事も無い。常に一定だ。ただ、人数によっての増加は有る。まあ、今の俺のマナ量なら家族全員でも数十往復出来るけど。

 また、転移の事では実は賢者・聖者・勇者と各々完ストした際に一ヶ所ずつ増加して、現在四ヶ所。自宅と王城(勤務先)と近所のダンジョンが固定。残る一つは必要な時に上書きして使っている。

 だから、ムーサ大陸に行けば、転移が出来る。


 ただ、動く物にはマーキングは不可能。移動する生物や物、水などもだ。昔、実験もしたからな。

 その事は皆、知っている。当然、エルもだ。

 神々だって、そういう仕様なのは判っているから何の考えも無しでの丸投げではない……とは思う。面識が無いから何とも言えないけど。



「大丈夫です。ムーサ大陸に行く為の手段でしたら数日中(近い内)に目の前に現れる(・・・)との事です」



 ……現れる? 出現するか、遣って来るのか? それならまあ、移動はしているのか。飛行船とか、天空を漂流する浮遊城とか、海を彷徨う島とか。

 …………どうしよう、ちょっと楽しみだ。






「ほぅ……久方振りに起きたので散歩をしてみれば随分と面白い小さき者が居るではないか」

「……だ──むごぉ……」


 「旦那様のモノは大陸一です」なんてクラリスが言い出す所をニーナ達が直ぐに黙らせた。ナイス!


 エルが神託を受け取った翌日の昼前。今日の分の仕事を終えて自宅の側の湖で子供達と遊んでいたら大きな影が日差しを遮った。

 子供達とは違い、見上げるより先に接近してくる巨大な生物反応(・・・・)に俺達は身構えた。

 ──が、直ぐにエルが言っていた事を思い出し、それが移動手段(・・・・)だと察した。

 だから、警戒だけはしていた。

 ……正直に言おう。俺としては好奇心も有ったが出来れば通り過ぎて欲しかった。面倒だから。

 だから、普段から抑えているマナやエーテル量を更に抑えたのだけど──それが逆に興味を引いた。糞フラグめっ!


 ──で、その生物反応の正体は真竜(ドラゴン)

 ダンジョン等にもドラゴンは居るが竜種(・・)。要は、その物ではないけど、近い、或いは類似する特徴を持っている存在、という括りとなる。



「えー……何か用が?」

「我と戦え」

「……何故に?」

「面白そうだからだ」

「…………条件が有る」

「我に勝てば何でも言う通りにして遣ろう」



 「話が早いな! 畜生!!」と言いたい。

 溜め息吐き、戦う場所を上空へ。【結界】により特設の空中闘技場を作り、その中で戦う事にする。余波による被害が絶対に有るから。

 ──とか思っていたら、いきなり10メートルを超える火炎弾が飛んできた。防ぐけど。



「挨拶代わりにしては容赦無いな?」

「何を言う。この程度で傷を負う様な軟弱な者ではないだろうに。見る者が見れば一目で判るぞ。その洗練されたマナとエーテルの流れ。自然ながらも、有り得ぬ程の滑らかさ。弱い筈が無かろう」



 世界最強の代名詞から誉められるのは嬉しいが、下の方で盛り上がっている妻達が気になる。俺以外止める者が居ないから。何処だ孔明っ?! 出て来いっ!


 ──とか考えている間に本格的に戦闘開始。

 取り敢えず、傷付け過ぎて使えなくなると困る。判り易く殴って打倒するかな。



「──グゥッ!? フッ……ククッ、フハハハハッ!! いいぞ、いいぞ! いいぞっ! よもや我を殴り飛ばすかっ! 小さき者よっ!!」

「小さき者は止めてくれないか?」

「ふむ、そうよな。それと名乗っておらなんだな。我はアリヴェンツィア。神々の使徒、真竜よっ!」

「俺は真王レイグリフ・メシア(・・・)・ド・スオウ・ラ・ノーブルディネスだ」



 即位と共に自動的に変わった名前。あからさまな名前だから自分からは名乗りたくはない。名乗る事なんて殆ど無かったのに……妻達が沸いているな。そうなるから嫌だったんだよ。



「レイグリフ、レイグリフか……良い名だ」

「名付けた両親が聞けば喜ぶよ」



 俺が認められたからだけど。それはそれだしな。今の会話は絶対に広まるだろうし両親の耳にも入るだろうからな。

 俺が留守中に盛り上がるんだろうなぁ……あー、嫌だ嫌だ、面倒臭い面倒臭い。



「再生力が高い様だが、どの程度の再生速度だ?」

「ん? 可笑しな事を訊くな……まあ、手足ならば一瞬で再生する」

「そうか……なら、一気に行くからな」









「………………我は敗けたか……」

「そうなるな」

「殺さぬのか? 我の心臓を喰らえば、不老不死と成る事も出来るぞ?」

「そんな物に興味は無いし、俺は死を不幸な事とは思わない。死が有るから、生きる喜びが有る」



 そう言いながら眼下の妻達や子供達を見て、手を振って戦闘が終わった事を伝える。

 子供達の尊敬の眼差しは嬉しいけど、忙しく動く妻達の姿は見なかった事にしたい。止め損ねた。



「…………成る程な」

「さて、約束は守って貰うからな」

「無論、敗者は勝者に従うのみ。好きにせよ」

「実は────」



 アリヴェンツィア──長いので“アリア”と呼ぶ事にした──に事の経緯を説明する。

 何の説明もしないで「東に向かって飛べ!」とか言うのは非効率的だ。アリアがムーサ大陸の位置を知っているのなら訊いて任せた程が確実だからな。探して飛び回る時間が省ける。

 事実、説明してみればアリアは知っていたから。やっぱり、報連相は大事だよな~。



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