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Noble Bright  作者: 桜惡夢
7/10

連鎖


 フラグという罠は目には見えないものだ。


 学園生活五十五日目。王都の大聖堂。結婚式。

 誰の? 俺のだよっ!

 ニーナのシスコンパワーを侮った。いや、女性の立場から考えると可笑しくはない。ニーナにしても妹は可愛いし期待もしているから厳しくしていたし気に掛けてもいた訳だからな。

 あーっ、畜生っ! 親族席で嬉し涙を拭っているニーナ達が恨めしいっ! 今夜──は五人との初夜だから明日の夜──いや、朝、遣り返すっ!




 学園生活七十日目。

 この世界の一年は12ヶ月で、1ヶ月が30日。半年毎に3日間の祝祭日。合計で366日。

 まだまだ学園生活は続く。

 続くんだけど……妻達が更に人数を増やす算段を日々考えている。せめて、卒業後にしない? そう思うだけで口にはしない。言質を取られるから。


 アルサイスとエドマースの想い人を寝取った様な感じはするが、婚約していたという訳ではないし、彼女達が二人を好きだった訳でもない。幼馴染みで好意は少なからず有ったかもしれないが、異性とは意識していなかったみたいだからな。

 確認した訳ではないが俺の妻になってからの姿を見ていれば判る。誓いを立てた以上は他の男に心を奪われるという事も無いからな。


 それはそれとして、新しい妻の五人も順調に力を付けている。一度目のクラスチェンジをしていたが二度目からは保留が可能に。一度目の時には保留の問いは無かったらしい為、俺の妻になったからだと考えて間違い無いだろう。

 ……最近、学園の生徒ではない名前が出ている。エル、「歳上は何歳までなら大丈夫ですか?」とはどういう意味なのかな? 恐くて訊けないが。


 それはそれとして俺は学園長に呼ばれている為、一人で学園長室に向かう。結婚関係の話でなければ何でもいい。






「王国南東部の“アゴラウス黒山”ですか?」

「其処の調査──と言うよりかは攻略になるかな。学生にさせる事ではない気がするが」

「レイ様であれば出来るという信頼ですね」



 そう言うエルを無言で襲う。両手を広げて笑顔で迎えられると逆に退けなくなる。今は馬車の中だが遣るしかない様だ。




 アゴラウス黒山に一番近い街──を治める貴族の屋敷の一室を借りる。ラパラス伯爵家。ミルフィの実家だから歓迎はされているけど、若干の居心地の悪さも有る。新婚だから。その気遣いがね。

 まあ、だからと言ってエル達は気にしないけど。うん、激しいし貪欲だし可愛い。励んでしまった。


 今回のアゴラウス黒山の件はゲームのイベント。当然、ミルフィのルートのだ。

 ──というか、本来ならイベントを経て卒業時にプロポーズし、成功する事でハッピーウエディングからのエンディングに進み、エピローグとなる。

 イベント──好感度や関係の構築をすっ飛ばして結婚する様な事は無い。……ゲームだからか。


 さて、このアゴラウス黒山のイベントになるが、ゲームでは終盤。街や周辺に大きな被害が出て伯爵夫妻に続き、後継ぎだったミルフィの兄夫妻までが亡くなってしまう。その後、事態を収めた主人公に婿入りの話が有って──という流れだった。

 今は異変だけだが、それは野外演習の件が有って各地で調査が行われた事で判明した。伯爵が部隊を率いて調査に向かったが負傷。死者・重傷者は出ず全員が生還したが、危険だと判断。王国に報告して俺が指名された、という事らしい。学生ですが?

 まあ、妻の家族──実家の関係者や領民の生活に関わるので遣りますけど。文句は言いたい。


 翌日、アゴラウス黒山を登り、中腹で発見されたダンジョンに入った。さくさく進みゲームと同様に五十階層にボスが居た。楽勝だった。

 ただ、問題が一つ。

 俺のクラスである聖者がレベル99に到達したら自動的に“勇者”という未知のクラスに。何ぞ?

 ボーナスは同化した天器[覇血の統王]。効果は俺と俺の子供を産む女性の力──基礎能力を子供が受け継ぐ様になるという物。100%ではないが、当然ながら高い程、優秀な子供が生まれる。

 結果、エル達の会議が熱を帯びてきている。




 学園生活七十五日目。今、俺達は学園ではなく、ロロンバーク子爵家に居る。

 理由? 王都に戻る途中で、新しい調査の依頼が国から届いたから。ユリアノの実家で、今回の件もゲームでのイベント。“モーバック地底湖”で発見されたダンジョンが目的地。

 学生は学園で学ぶ者では?


 まあ、今回のダンジョンもゲーム終盤の物なので確かに今の王国の戦力では難しいのだろう。俺より詳しいエル達からの進言が判断の主軸というのは、どうなのかとは思うが。それだけ見る目(・・・)が確かだと信頼されているのだろう。

 そのエル達に見初められたのは誇らしい。




 洗礼により人生が変わってから百五日目。

 まさか、この1ヶ月でゲーム終盤の各ヒロインのルート専用のダンジョンを完全制覇するとは。


 そして、妻が滅茶苦茶増えた。エル達を含めずに百人以上。皆さん、何処で何をしていたの?

 いや、判ってます。学園を卒業して直ぐに結婚と成るのは長男・長女だけ。入学時には婚約している場合が殆どらしいので。だから十代でも独身という女性は多いのも頷ける。

 頷けるが……一度に百人以上と結婚するなんて、有り得ない事でしょう?

 結婚したものは仕方が有りませんが。


 判ってます。その一番の原因が学園のダンジョンに異変が起きた為、俺達が攻略したからだと。

 仕方が無いんですよ。安全第一だから。最終盤の学園最後のイベントが夏期休暇前に起きるだなんて有りですか? 起きたのだから仕方が無い。

 その結果、学園は半ば機能しなくなった訳です。はい、大問題。王国の根幹に関わります。

 だから仕方無く、【インベントリ】の事を話し、学園の移転(・・)を行う事を提案しました。

 幸いにも、以前のダンジョンと難易度が近い物が最近見付かった──と言うか、俺達が見付けたのを利用する形で提案した──という事にして貰った。目立たない為に。

 無事に学園は移転し、細々とした調整も終了して生徒は改めてダンジョンに──となっている中で、俺達は卒業させられました。結婚させる為に。

 横暴だ! 神々よっ、何故罰しないっ?! それが王公貴族の役目でも有るからかっ! 畜生っ!!


 ──という訳で、妻達を鍛えながら子作りに励む日々を送る事になりました。

 貰った家を高難易度のダンジョンの近くに移転。湖も有るし、最近は大規模な農場や畜産系の牧場を作って事業も始めた。貴族らしくね。

 だからまあ、何だかんだ言っても幸せなんです。奥さん達は魅力的ですし、打付かる事は有っても、決して不仲ではないですから。


 エル達は最上位のクラスに達した為、妊活優先。毎日激しい……え? エルが妊娠した?

 嬉しいのは嬉しい。ただ、まだ実感が湧かない。この辺りは男女の差かもしれないな。

 うん、判ってる。判ってるから、ちょっと待って下さい。王家に連絡はしないといけないから。




 妻達と王国内の危険なダンジョンを潰しながら、日々を送っていたら、夏が終わり、秋を抜けて冬。あっと言う間だったなぁ……


 この世界には水着の文化が無かった。貴族的には女性が肌を露出するのは好まれないから。

 本当は男達が自分の欲望に抗うのが辛いからとは誰も言わない。事実はそんな物だから。


 夏、直ぐ側に自家所有の湖が有るので、エル達に水着を用意した。これはこれ。別物なの。

 尚、どういう経路かは不明だが、水着の話が貴族女性の間に広まり、小遣い稼ぎに。

 あと、王公貴族の男性から妙に感謝された。


 秋、俺の手掛けた農作物や料理が大流行。それが原因で王公貴族以外の妻が五十人程増えた。

 戦力的な意味ではなく、農業関係の技術継承者を望まれての事。一応、抵抗はした。独占するつもりなんて無いから広く使って欲しいと。

 だが、この世界──特に我が王国の王公貴族への信頼の強さや尊敬の高さを軽く見ていた。

 エル達からも言われた。血が物を言うのだと。


 そして、冬。久し振りに学園に顔を出す。

 学園長から生徒への指導依頼が有ったからだが、俺も同期だったんですけど? 無視された。

 ただ、思っていた以上に皆、成長していた。

 俺達夫婦が可笑しいだけで、皆は優秀だからな。其処は間違ってはいけない。……判ってる?

 そう言われると、それはそれで少し傷付くな。


 指導が終わり、学園長に挨拶に言ったら、何やら分厚い書類の束を渡された。……嘆願書?



「貴男の所のダンジョンを使って、より優秀な者を鍛えて貰いたいのです」

「……あの、考えは判りますが、それは俺の一存でどうこう出来る事では……え? この書類を?」



 学園長が書類を捲る様に促したので捲った。

 …………陛下(御義父さん)っ!?

 いや、それだけじゃない。ニーナ達の各家からの許可も揃っているし……くっ、実家もか。

 顔を上げた時の学園長の笑顔が憎い。



「卒業前に貴男達の方で選抜試験を組んで下さい。人数は男女十名ずつの二十名で御願いします」



 詳しい事は書類を見て下さい。

 そう言って追い出された。


 これって、ガッツリ国政に関わらされてるよね? 俺、子作りで免除されてなかったっけ?


 帰ってエル達に話したら、「政治に直接は関わる事では有りませんから」と言われた。抜け道か。


 翌朝、湖に分厚い氷が張った。ちょっと自棄糞で試作だっていたスケート靴を履いて滑っていたら、妻達が誉めてくれたので、調子に乗ってフィギュアスケートみたいな演技をして見せた。此方も試作の蓄音器とレコード盤を用いた演奏付きで。


 失敗した。エル達の両親が顔を出していた。誰も俺に教えてくれてなかったよねっ?!

 娯楽の少ない世界だから、物珍しいのは判るけど行動力が有るから、この国の王公貴族は苦手だ。

 数日後には、選抜された候補者達に再度実演して見せてから本格的な指導を行う事になった。其処、俺の事を崇めない! 俺の発言を集めた名言集とか発行した全力で燃やし尽くすからなっ?!


 尚、一般人でも楽しめるスケートリンクの開発と設計に実物の建造、スケート靴の設計と製造により新しい事業が立ち上がっていた。

 こういう方面にエルが滅茶苦茶優れている上に、妊娠中でも部下を使っても仕事が出来るから。

 夫としては頼もしいし誇らしいが、敵でも有る。どうしても俺を有名にしたいらしい。もう十分だと思うのは俺だけなのか? ……俺だけだった。

 有って困る事は無い? そんな事は無い。将来、子供達がプレッシャーを感じる事になる!

 …………俺の子供という時点で既に期待値が高い事は確実だから増えても変わらない? 正論!



「やれやれ……御前は変な所で子供の様だな」

「俺は目立たずに暮らしたかったからな」

「レイさんの実力では不可能ですわ」

「セシリアまで……」

「初代様が神々より賜った御力の性質上、他国への侵略行為は出来ません。それが出来る状況であれば間違い無く貴男が大陸統一を成し遂げた筈です」

「フローラ、そんな不吉な事を言わないでくれ」

「出来無い事なんだし、気にし過ぎでしょ?」

「ティア、此方等からの(・・・・・・)侵略が出来無いだけで、侵略に対する反撃(正当防衛)は出来るからな?」

「……旦那様、素晴らしい御慧眼です。その時には私も動ければ良いのですが」

「いや、違うからな、クラリス?」

「それではレイ様、いつでも動ける様に御父様達に許可を頂いて置きますね」

「待ってエル! 考え直そうっ?!」



 ちょっとした愚痴のつもりが、可笑しな流れに。そして、こういう時のエルは動く。絶対に動く。

 強情とかではなく、こうと決めたら突き進むから止めたくても止められない。

 しかし、不可能ではない。方法は有る。有るけど今は使えない。エルが妊娠中だから。いや、安定期だから使えない訳ではないけど初産だからな。安全第一なのは譲れない。だから手詰まり。


 許可を貰っても、そうなるとは限らないけれど、物凄いフラグ臭がしてる! 立たせてたまるか!



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