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Noble Bright  作者: 桜惡夢
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襲来


 学園から10キロ程離れた所に有る広大で危険なモンスターも居る“ウヴォラス大森林”の中で班で各々に指定されたポイントでキャンプする。

 支給されるテントは二人用か三人用。俺は一人で二人用、女性陣は三人用を二つ。一緒ではない。


 キャンプするポイントは毎年違うそうだが、連続という事ではないだけで判る者からすれば使われた痕跡が有るのは判る。俺には丸判りだった。

 それが切っ掛けで自然とリーダーっぽい立場に。王女が俺を頼るから周りも仕方無く……だったら、楽だったんだけど。素で頼られている。

 ポイントに着くまでに遭遇したモンスターを軽く狩ってしまったのが原因だな。ちゃんと料理をして皆で美味しく頂きましたけど。テント設営、料理の下拵えや調理の手際、不測の事態への対処等々。

 俺にとっては当たり前の事だっただけに無意識に遣っていたのが……いや、遣らないのも問題だから無理だったか。この班でなければ!



「レイグリフ様、パーティー等で御会いした覚えが有りませんが、何か御事情が?」

「あー……いや、単純に昔から鍛練をしていたから参加していなかっただけで深い事情無いんだ」

「ですが、五歳の顔合わせにもいらしては……」

「其処は体調不良だったな」



 その時に前世の記憶が戻って転生者だと自覚して鍛練を始めたから、以降は参加していない。



「でも、エレオノール様、よく覚えていましたね」

「もしかして気付いていないのか?」

「……? 何を?」



 俺の一言に女性陣が顔を見合せ、代表する格好でニルヴァーナが一言。意味深なんですが?

 実は俺、王女と何処かで会った事が有る?



「レイグリフ様の髪色は珍しいですから、一度でも御会いしていたのなら忘れません」



 そう王女に言われて、「へぇー」と思う。

 レイグリフ()は白に近い銀髪。確かに家族の中では俺しか居ないが、話では母方の血筋に稀に現れる色という事だった筈。興味が無かったが。



「全く興味が無さそうですわね」

「セシリア、鋭いな」

「私でなくても判りますわ」

「単に珍しいというだけでは有りませんよ?」



 思い掛けない流れから俺の髪色に関して六人から長い講義を受ける事になった。

 そんなん言われても知らんがな…………




 一日目の深夜。モンスター達の襲来が起きた。

 事が起きると判ってはいたが起きる正確な時間は判らなかった。だが、自力で魔法や奇跡、アーツを扱う俺にとってはマナとエーテルを用いた探索網や警戒網を敷く程度は既に児戯に等しい。

 ただ、飽く迄も自分を中心にした技術になる為、全域をカバーしようとすると広範囲になるが。


 【並列考動】の御陰で眠りながらでも継続可能。外周に反応が有った瞬間に起きた。

 起きたが──何の因果か一番最初の反応が俺達のキャンプ地に向かっているのは何故なのか。

 まあ、好都合だったが。

 目が覚めた振りをしてテントを出て今夜の夜番の担当だったニルヴァーナと話す。

 話している途中で、異変に気付いた振りをして、他の五人を起こさせ、事態に備える。

 其処へ襲い掛かってきたモンスターの群れを見て直ぐに自分達よりも格上の敵だと判った六人は身を強張らせたが、俺が即座に一掃し、何事も無し。


 だが、これで終わりではない。六人に異常事態と説明して他の生徒達の救出──保護と避難誘導へと動き出し、深夜の森の中を駆けた。


 結果から言えば負傷者は出たが全員生きている。負傷者も王女を筆頭に回復役が頑張ってくれた。

 教師達が合流したのは夜が明けて直ぐの事。

 異変──俺達の戦闘に気付き、急行はしていたが距離が有る為、どうしようもなかった。

 教師達──学園側の落ち度ではない。こんな事は一度も無かった事なのだから。


 取り敢えず、野外演習は中止。放棄された荷物は教師達が後片付ける事で、俺達は学園に直帰。

 まあ、俺達の班は片付けも終わっている。襲撃の前に片付けたから。

 これには王女が入学に際して王家から貸与された魔道具である[収納鞄]が役立った。

 中身は空での貸与だったそうだが、荷物運びには大活躍するから問題無し。

 中でも俺達が──殆ど俺だったが──倒した襲撃してきたモンスター達の屍を放置する訳にはいかず困っていたら、それを出してくれた。

 知ってはいたが、気付かない振りをしていたし、教師達と他の生徒の手前、使わなかったからだ。

 その後は遠慮無く倒し、全て回収して貰った。

 数が千を越えていたのは聞かなかった事にする。知りたくはない情報だったからな。


 こうして、夕方には俺達は学園に到着。深夜から徹夜だった上に学園までの移動で全員が疲れ切って風呂と夕食の後は部屋に戻って爆睡。俺も寝た。

 何しろ、死亡フラグを折り生存を達成したんだ。気が抜けたし、緊張感から解放された気分も有り、グッスリと眠れる気がしたからな。




 学園生活三十三日目。

 油断した。いや、こうなる展開なんて誰が予想出来ただろうか。想像さえしていなかった。


 そして、彼女達の事を侮っていたと気付いた。

 俺の学園での行動パターンは調べれば判る事だ。それを中止させる事は容易い。学園の中だろうが、権力が有効な場合というのが有るからだ。


 それが今回の事──結婚(・・)

 婚約ではない。結婚だ。


 今朝、食堂に行ったら学園長が居て吃驚したが、それ以上の爆弾を投げ渡された。

 俺は拉致られ、王都の大聖堂に。制服の仕立てで採寸されているからピッタリの白い衣装を着せられ舞台が整えられた結婚式場に放り込まれた。

 入場する花嫁達(・・・)。はい、六人(・・)全員です。

 根回しもされ、逃げ場は無し。流されるしかなく気付いた時には新居として与えられた王家の別邸の一つの寝室に仰向けに倒れている。

 現在、此処ね。


 急展開過ぎて理解が追い付かず考えるのは早々に止めた。どうにも為らないから。


 昨日、帰還した後、彼女達からパーティーを組む打診を受けたのを保留したのが裏目ったか?

 今朝、誰かに捕まりそうだとは思ってはいたが、人生を掴まれるとは思わなかった。しかも全員で。女同士の結束って怖いなぁ……


 ……現実逃避をしても何も変わらないか。

 まあ、美少女ばかりだし性格も良いし家庭的だ。浮気という考えや可能性が無いから夫婦仲が険悪な状態には成り難い。両親も仲が良いしな。そうか、父にも母の他に妻が居る。この世界──この国では一夫多妻は主流だったっけ。

 以前はクラスに関わらず強くなる為に。洗礼後は死亡イベントを乗り越えて生き残る為に。結婚とか恋愛なんて考えてなかったからなぁ……反省。


 ただ、結婚願望が無かった訳ではないし、将来の事を考えた事が無い訳ではない。しかし、いきなり一夫多妻の生活になるなんて全く考えはしない。

 だって、ゲームはヒロイン1人を選ぶだけだし、エロゲーではなく家庭用。恋愛要素も純愛物だからエロゲー的な展開は頭に無かった。


 しかし、現実に考えれば、彼女達からしてみれば譲れないし渡したくないし引く気は無い。

 「それなら皆で一緒に」となるのは頷ける。

 まさか、昨日の今日で結婚するとは思わないが。そういう考えに至るのは判らない訳ではない。


 昨日の帰路。俺の左腕を王女──エル(・・)が取って、密着して着痩せする秘密兵器を押し当ててきたし、愛称呼びを求めた事から、ロックオンされた事には気付いていた。姉妹とのスキンシップとは違って、意識してしまったしな。

 更に、他の面子からも隙有らばという感じで結構アプローチされた。「モテる男は辛いね~」なんて言って能天気には笑えなかった。カオス過ぎた。

 それでもまあ、自分達の授かった力と血の恩恵の事を考えれば御互いに一線を越える様な事は無い。そう思っていた──のが油断だった。俺の馬鹿!


 昨日の事を回想し、反省しながら天井──天蓋を見詰めているとドアが開いた音がしたので上半身を起こして顔を向けた。

 直後、目が覚め──否、意識を奪われる。


 六人の妻が部屋に入ると同時に羽織っていた白いバスローブみたいな上着を脱げば、六人六色六様のシースルーのネグリジェと下着でさえも、彼女達の魅力を引き立てる為の小道具でしかなかった。

 その後の事は言うまでもない。まだレイグリフ(この身)は清くても、中身は何人かとの交際経験が有った男。多少の緊張は有るが、本能は正直だった。




 翌日、俺達は学園に戻った。

 ただ、俺は男子寮から、妻達達は女子寮から夫婦専用の戸建ての特別寮に変わった。そういう建物が有ったのを思い出したが、極めて稀な事らしい。

 俺達の荷物も全て運び終わっていた。今回の件で改めて「貴族社会って凄いなぁ……」と思った。

 まあ、もう結婚したし手を出した以上は開き直り全力でイチャイチャして勝ち組になってやる!




 妻達に貪──癒され、昼からダンジョンに潜る。夫婦に成ったし、妻達の魔改造(育成)を始める為だ。

 一気に階層を進み、十七階層に着いて直ぐの事。前衛という事も有り、クラリスが最初にレベル40に到達。クラスチェンジが可能になった──のだが何故か驚き、戸惑っていた。

 …………もしかして──



「クラリス、問われている(・・・・・・)のか?」

「──っ!?」

「そうか、それなら保留(・・)しろ」

レイ(・・)様?」

「エル、話は後だ。クラリス」

「……判りました」



 光っていた紋章が収まる。【鑑識】で確認してもクラリスのクラスは変わっていない。

 取り敢えず、結界を張って安全を確保する。皆、それに驚いているが、後回し。クラスチェンジ時の選択に関して体験した様に話す。嘘ではない。

 流石に「実は前世の知識で知っていたんだ」とは言えない。精神異常者だと思われるからな。


 クラスチェンジの可否を問われた事、保留をして最後は自動的にクラスチェンジする事。それにより大きく力が高まっているという事。

 更に、俺がスキル持ちな事や賢者まで至った後、現在は見習い僧侶から聖者に至っている事。

 専用装備の事、自力で魔法・奇跡、アーツを使う事が出来るという事まで話す。

 夫婦なんだから話して置いた方が面倒が無いし、いざという時に彼是考えなくて済むからだ。まあ、正直に言えば[金魔の羅玉]の事は伏せたかったが女の勘は恐ろしい。そして妻達の獰猛な眼差しも。尤も、肉食系妻なのは構わないが。



「つまり、それがレイ様の強さの源なのですね?」

「まあ、そういう事になるな」

「ですが、その様な話は聞いた事が有りません」

「それは俺もだ。家族からも聞いた事が無いから、自分が可笑しいのかとも思ったが……気にするより活かす事を優先した。だから、クラリスの戸惑った様子を見た時、もしかしたらと思ったんだ」

「それでしたら、(わたくし)達も同じ様に?」

「可能性は高いだろうな。多分、俺と結婚した事が要因なんだろう。まあ、公表は暫くは出来無いが」

「どうして? 本当なら凄い事じゃない?」

「ティアさん、クラスチェンジの可否を問われて、保留をする。それは簡単な事の様で難しい事です。モンスターと戦う以上は直ぐに戦えるだけの強さを得る事が普通は最優先になります」

「強く成れるとしても保留しても戦えるだけの力が無ければ命を落とすだけですしね。無理をしてまで行う事では有りませんから」



 ティアの疑問にエルとフローラが答えてくれる。二人の言った様に、その選択は命懸けだ。しかも、任意でクラスチェンジする事が出来る訳ではない。次のレベルアップまで出来無くなる。

 俺はレベルが判るし、そう出来る強さが有った。エル達の場合も俺が守るし、サポートする。


 しかし、他の者は自力か、そう出来る状況を先に整えなければ難しい。

 そんな余裕は有るのか? 無い。この学園こそが成長の迅速さと自立性(・・・)を求める証だからだ。


 公表はしても構わない。だが、その責任を俺達が負う事も助力も出来無い。全ては自己責任になる。そうなると公表しても無駄だろうからな。



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