世界
アリアの協力を取り付けたが、直ぐには動けず。昨日の今日だったから。【転移】が有っても暫くはムーサ大陸の事に注力する可能性が高いから色々と準備しておく必要が有るから。
アリアは子供達に大人気。いや、大人達にもだ。まあ、早々に馴染んでいる様で何より。
そう思って前倒しで仕事を片付けて帰宅したら、見知らぬ美女が居た。アリアだった。人化か。あと雌──いや、女性だったとは。【鑑識】で見た時は性別が無かったのに……ああ、竜の姿だと無性か。純粋な力の象徴という訳だな。納得。
そう感心していたら──うん、まあ、新たに妻に加わりました。
朝、御強請りするアリアが……くっ……可愛い。判ってる、大丈夫。ちゃんと子供は出来るから。
──という事が有って、俺の伝記の新刊が出た。こうなるって判ってたけど仕事が早いなあっ!
「しかし、我が敗れる日が来ようとはな……まあ、まだ我を倒しただけだがな」
「え? 他にも真竜が居るの?」
「真竜は我のみだ。だが、神々の使徒である存在は我を含め十二体存在しておる。尤も、何奴も此奴も何処かで寝ておるがな」
「使徒としての役目とか無いの?」
「無い。まあ、強いて言えば……世界の終焉か」
「それって……世界を滅ぼすって事?」
「ダンジョンは神々の与える試練。その試練に敗れ世界が呑まれた時、世界と共にダンジョンを滅ぼす事が我等の役目、という事になるな。ああ、それと我等はダンジョンには入れぬ。期待はするな」
「神々の試練は人に対して、という事ですね!」
ティアとアリアの話を聞いてエルが燃えている。本当、王女の鑑で、聖女らしく、ヒロイン然とした最高の妻だな。出来れば、俺は楽がしたいけど。
しかし、今の他愛無い雑談は不味い。ああ、既に気付いた面子が動き出している! 止めに動けない我が身が悔やまれるが──子供達と過ごす時間には変えられない。
神託が有ってから五日後。俺はアリアの背に乗り空を猛スピードで飛んでいる。
最初は穏やかだったが、ついジェットエンジンの加速の仕組みを思い出し、アリアに話してしまい、実行した結果が──音速を超える事に。
これに平然と耐えて座り、景色を眺められている自分が遠くに来たんだと思わずには居られない。
……ん? アリア、今、左の方に何か見えたぞ?
調子に乗って行き過ぎたので戻った。
上空から見たムーサ大陸は確かに大小の島々で、一見しただけでは勢力図は判らない。初見だしな。取り敢えず、小さな島に下りてみた。人が居るのは探知して判っていたから。
そうしたら、神託に出て来た最後のクラス持ちの国の生き残りの王女様達だった。女性ばかり。
アリア、「早速、種付けするか?」とかクラリスみたいな事は言わない。ほら、誤解された。
……可笑しい。ちゃんと説明したら妻が増えた。いやまあ、そういう感じの話だったんだけど。
亡国ヤママトの王女サヤーナを始め、クラス持ち女性二十七人と結婚した。現地で。
うん、一旦戻って、じゃなくてね。
俺が、そうして時間稼ぎをしようとしていたら、アリアが「エル達から許可は出ておるぞ」と言って直ぐにヤママト式の結婚──神々への誓いを。
逃げ道が潰されたので、用意していた此方等での生活拠点用の屋敷を【インベントリ】で取り出して設置工事をして完成。サヤーナ達がアリアと一緒に入浴している間に転移用のマーキングを済ませたら料理を始める。軽い現実逃避だ。
本当はエル達を迎えに行きたいが、アリアからは先に初夜を済ませる様に言われた。如何に俺の妻、俺の子供だろうが、ムーサ大陸の後継者は此方等の正統血統のサヤーナの子以外には務まらぬ、と。
勿論、後々に移住はするが、それは民であって、王公貴族ではない、と。
アリア、ちゃんと神々の使徒だったんだな。
サヤーナ達とアリアと求め合った翌日。エル達を迎えに行って、直ぐに戻る。御対面。
まあ、全員ではなくて、今回の遠征選抜隊だけ。育児等の日常生活も有るから。
改めて──と言うか、初めて。俺もムーサ大陸の現状をサヤーナ達から聞く。
ヤママト王国が滅びたのが十年前。その後、国を脱出したサヤーナ達は隠れながら生きてきたけど、次第に数を減らし、今の人数に。男は? 聞いたら真っ先に死んだらしい。サヤーナに良い所を見せて結婚しようとして。馬鹿だなぁ……
ヤママト王国を滅ぼした国々に当然クラス持ちは存在せず、ダンジョンに飲まれて滅んだ。真面目に考えたらヤママト王国が大事だって判らないか? ああ、そうか。此方のダンジョンも休眠中だから、軽んじたのか。で、ヤママト王国が滅んだ事により一斉に活性化した結果、真っ先に滅んだと。
「此方等にはレイ様が居ましたから、そうは成らず大陸統一と成りましたが……有り得た事ですね」
「“たられば”だけどな」と。思わず言いそうになってしまうが飲み込む。俺以上に皆の方が其処は真剣に考えているだろうから。
俺は結局、自分の力で成した事だからな。其処がエル達との一番の価値観の差だ。だから、使命感や王公貴族の責任に関しての子供達の教育等は妻達に全て任せる事にしている。強くなる為の事なら俺が幾らでも教えて遣れるんだけどな。高貴な精神とか俺には無いからなぁ……
「でも、ムーサ大陸の人々が死に絶えているという訳ではないんだろ? サヤーナ達が一番近くの島に居たから偶々逢った訳だけど他にも人の生命反応が有る島は幾つか有ったからな」
そう言いながらアリアを見て同意を得る。
それにはサヤーナ達が驚いていた。ただ、如何に生き延びていようとも連絡手段は無いし、御互いに警戒し合っている状況では迂闊な接触は危険か。
取り敢えず、この島にもダンジョンが有るから、其処を攻略するか。サヤーナ達の魔改造も兼ねて。大丈夫、自然と強くなるから。
もう、聖交もしたしなー。
「アリア、留守中に万が一、何か起きたら頼む」
「うむ。ダンジョン以外の事であれば任せよ」
「久し振りのオリジナルメンバーでのアタック! テンション上がるなーっ!」
「ティアさん、はしゃぎ過ぎないで下さいね。攻略以上にサヤーナさん達の成長が重要ですわよ?」
「……ニーナさん、嬉しそうですね」
「そう言うクラリスこそ、既に剣呑な気配だぞ?」
「あらあら、皆さん張り切ってますね」
「漸く新技“聖女の滅拳”の御披露目です!」
う~ん……妻達の方が不安の種かもな。
──と言うか、エル、何、その新技って? え? 神託の際に手間賃として授かった?
いや、羨ましいとか、そういう事じゃなくてな。神々よ、俺の愛妻に固有戦技与えたの!
最近、エル達に【鑑識】なんて使わないから全然気付かなかった……油断した。エル、回復役なのに武闘派だからなぁ……
「大丈夫ですよ。ムーサ大陸の解放を成した暁にはレイ様は勿論、私達にも別途、祝福を頂けるという御話でしたから」
「マジッ?! ボク、魔法使える様に成りたい!」
「ティアさん! そんな動機では──」
「……セシリアは要らないんですね?」
「だ、誰もその様な事は言っていませんわ!」
……エル、態と今言ったろ? うん、判るから。ニーナ達じゃなくてサヤーナ達に遣る気を出させる為なんだって。ただ、俺は要らな──強制的に? 正当な報酬だから? ……そうですか。
エルなら俺が、そう言うと判ってるだろうから、確認したんだろうな。良い奥さんだ。でも、強制的なのは果たして報酬と呼べるのだろうか?
因みに、サヤーナ達は皆、見習いクラスの一桁。エル達並みになれるな。年齢はサヤーナが十五歳、下は十二歳から上は十九歳。育て甲斐有るなー。
メンバーを入れ替えながらサヤーナ達を鍛えて、同時進行で周辺の調査。それなりに人数を揃えればアリアを動かせるしな。
サヤーナ達に驚かされたのは見習いクラスの次に俺が知らないクラスが有った事。逆に俺の知ってるクラスは未知だと判った。まさかクラスに地域差が有るとは思わなかった。ちょっと楽しいけど。
調査を進め、十の生存者団体と接触。驚いた事に全員がクラス持ち。ヤママト王国以前に衰退したり敗北した国々の末裔や生き残りらしい。
だが、嬉しいのは、その中に男が居る事!
──駄目だった。女性達は全員が俺の妻に。
男達は真国の女性達に興味を示したから。うん、結婚おめでとう。頑張ってね。
「んー? ああ、おっ久ー。元気してたー?」
そう軽ーい挨拶をしているのは見た目が禍々しい脚が大小二十本を越える超巨大蛸。
気分転換にと釣りをしていたら俺が釣り上げた。寝惚けた様にしていたが、アリアを見て、一言。
巨大で太い足を一本、愛想好く振りながら。
コレも神々の使徒らしい。差が凄いな。
蛸の美女。そんな海の魔物が居なかったかな?
彼女の名はルムシュルムシュフル。長いし呼び難いから“ルル”に。
アリアが「我は敗け、今は主の妻よ」と俺の腕を取って言ったもんだから興味を持たれた。闘った。勝利。「はーい、御疲れ様ー」とは行かなかった。いや、言ったら人化してガチ泣きされた。男なんて女の涙には簡単に敗けるんだよなぁ……妻となる。
あんな軽いノリの割りに滅茶苦茶甘えん坊だし、想像した以上に敏感で弱かった。蛸の姿だった時は腹が立つ位に鈍感だったのに。だからか、ついつい嗜虐心が掻き立てられて可愛がってしまった。
他の妻達に興味を持たれたのでノリノリで攻めた結果、翌々日まで動けなかった。
「あーら、誰かと思ったら、引き籠りっ放しで頭に海藻が生えていそうな、ルムシュルムシュフルさんではありませんこと」
そんな高飛車口調と、「オ~ホッホッホッ!」な鳴き声が妙に似合う豪華絢爛な見た目の超巨大鳥。ルルとは仲が悪い……んじゃないな。これはルルに構って欲しいからか。ツンデレさんめ。
神々の使徒、エミューネルミューレリア。何故に必ず長いのか。“エミリア”に。“エミ”にしようとしたら嫌がった。略し過ぎだと。
人化したら滅っ茶縦ロール。何本有るんだ?
そんな事を思っていたのも見事な肢体を見るまでだったな。ツンデレがデレを見せたら反則だもん。ティアが「セシリアと同じだねー」と言っていたがセシリアは優等生御嬢様でツンデレではない。俺に対してはツンツンしなかったから。最初からデレ。だから真似しなくても……男って単純だな。
そんなこんなでムーサ大陸のダンジョンは順調に攻略が進み、既に七割近い島々を解放し、領地に。十年から三十年程の差は有るが何処も侵食されて、栄えていた筈の文明は過去の遺物に。
ルル、「そうでもないよー?」なんて言わない。エミリアも「野蛮で粗暴故に自壊したのですわ」と傷口に塩を塗る真似はしない。
まあ、そう言われてるのは、神々の恩恵を失った国々だから反論は出来無いが。
アリア、「もう存在せぬ連中の事だ」とか本当の事は言わないの。一応、悪例・戒めに使うから。
兎に角、解放した島々の環境整備も順調。真国の女性と結婚した男性陣を領主として置き、移住者も問題無く順応してくれている。まあ、安定するのは先の話になるだろうけど。
「主よ、北の大陸は獲らぬのか?」
「……え? 北にも大陸が有るの?」
「南にも有りますわよ」
「西にも在るし、海中大陸も有るよー」
「それでしたら、天空大陸も有りますわ」
「へぇー……興味は有るから一度は行ってみ──」
言い掛けて思わず飲み込んだ。
アリア達の他に、まだ九体の神々の使徒が居る。それは何処に? 俺が知らない場所にだ。
これは巧妙な誘導だ! 引っ掛かるものかっ!
「──レイ様ーっ! 新たな神託ですっ!」
「あらあら、次は何処ですか?」
「それならば早く残りを片してしまわなければな」
「この調子では暫くは次の子は御預けですわね」
「……それはそれです。計画的に同時進行で」
「ムーサ大陸解放したら祝福が貰えるんだよね?」
「レイ様、目指せ、世界統一です!」




