私のきもち
「好きです。付き合ってください!」
私の初めての告白。
その人は、同じ高校の同級生で、入学式の代表演説で初めて知った。
名前は太田亮。
勉強のできる賢いタイプの人じゃなくて、どちらかというと運動が得意なタイプの人。
選り好みしているつもりはないけど、正直私の好みとはかけ離れていた。
隣の席だったからか、休み時間なぜか声を掛けてくれたり、授業中、真面目に授業を受けている私を笑わそうと色んな事を仕掛けてくる。
気づけば、私たちは友達になっていた。
周りの友達は、カップルとか言って冷やかしてくるからそのたびに私は亮と一緒に誤魔化す。
いつまでもそんな、友達みたいな関係が続くと思っていたけど、ある時を境に私の心境は変化した。
私たちの通っている高校は、たまに男女別れて体育をする。
その日も男女別れて授業していると、グラウンドで男子がリレーをしていた。
その中で誰よりも楽しく、誰よりも早く走っている男子がいた。
もうその時以前から好きだったからそう感じたのかもしれないけど、私が自覚したのは確かにその瞬間だと断言できる。
だから、私はその人に告白しようと決意して勇気をだして校舎裏に呼び出した。
「莉子、ありがとう、でも来週までまってほしい。月曜日には答えは出すから」
亮にそう言われて、来週までこの変なドキドキが続くんだと思うと、不安でしかたない。
そわそわしながら、土日を過ごす。
色々思う事もあって、趣味や食事、お風呂に入っている時、説明がうまくできないが、変なドキドキが現る。
いち早く学校に行った。
亮を待っていたけど、全然登校してこず、今日は遅刻かな。
そんな時、先生が悲しそうな顔で教室に入ってきて、教壇の前に立つ。
「皆さんに大事なお知らせがあります。太田亮君が交通事故で亡くなりました」
先生のその言葉を聞いた瞬間、目の前の背景が白黒になって、その後友達が話しかけてくれていたのかもしれないけど、全く耳に入ってこず、先生が何を言っているかも理解できなかった。
理解できないまま授業が終わり、放課後になり、家に帰る。
明日はきっと登校してくる。
だって答え聞いてないから。きっと来る!
毎日登校しても、亮は登校してこない。
「莉子さ、そろそろ新しい好きな人見つけた方がいいよ。亮の事は忘れてさ」
なんでそんな事言うんだろう。
私は、亮の言葉で好きか嫌いを聞くまで諦めない。
内心もう返事を聞くことができないとわかっていたけど、諦められない私もいて、心がぐしゃぐしゃになっていく。
学校が終わり、家に帰って、自分でも何をしているのかわからないぐらいぼーっとなる。
夜、就寝前、歯磨きをしている時、洗面台に着いてある鏡で自分を見る。
「え、なんで、私、泣、いて、るの?」
自分でも理解できないまま、涙だけが止まらない。
止めようとしても止めようとしても止まってくれない涙に苛立ちを覚える。
「なんで? 私、ど、、うしち、ゃったんだろ」
歯磨きを片付けて、泣きながら自分の部屋に向かう。
お母さんに声を掛けられた。
でも、今の私にはそんな声届かない。
自室のベッドで横になりながら泣いている自分が、情けなくて、でも我慢ができない。
気づけば朝日が出ていて、深夜中ずっと泣いていた。
泣いても、泣いても解決の方法が見つからない事を理解したくなかった。
死んだ事を理解をしていたが、学校に行けば、いつか亮が登校してくるという期待感だけが私にはなぜかあった。
だから、毎日私は学校に頑張って登校していた。
そんなある日の放課後。
「笹川莉子さん。至急職員室まで来てください」
私はなぜか、学校の放送で職員室に呼び出された。
なんだろう?
疑問しか浮かばない中、職員室に向かう。
「失礼します」
恐る恐る職員室のドアを開けると、目の前には私のお母さんと変わらないくらいの女性と担任の先生がいた。
「あなたが莉子さんね」
「そうですけど」
初めて見た女性だけど、どことなく喋りやすい優しい雰囲気がする。
「はじめまして、太田亮の母親です」
その言葉を聞いて、私は慌てて頭を下げる。
わかってはいたけど、やっぱり理解したくなかった。
そんな中、亮のお母さんが話し始める。
「あの子が手紙を書くなんて珍しいから持ってきたんです。笹川莉子さんで間違いないですよね」
「え、っとはい」
私はその手紙を受け取り、中身を亮のお母さんと担任の先生の前で開ける。
私はその場でその手紙を黙読する。
『笹川莉子へ
俺は、莉子が好きだ。
先に告白されたから、この手紙を読んでいる時莉子は喜んでくれていると思う。
俺は、初めて莉子を見た時、同学年でこんな背が小さくて可愛らしい子がいるんだと思った。
それが、初恋だったのか単に衝撃だったのかはわからないけど、なんとなく仲良くなりたいと直感的に思った。
授業中も俺なんかより勉強できて、少し邪魔しようと思って笑わそうとしてみたり、女の子と話すのは緊張するけど、休み時間に勇気を出して声を掛けたりしてみた。
正直、わからない問題があると言ったりしたこともあるけど、話したくて知らないふりをしたことも合ったと思う。
でも、そんな感じでコミュニケーションを取る度に、その好きと言う感情が徐々に増えていって、いつの頃からか、莉子と話すのが毎日の楽しみになるのと同時に、ドキドキしている自分がいた。
遅いかもしれないけど、莉子の告白がなかったら、そのドキドキがラブという意味の言う感情だと言う事に気づいていなかったかもしれない。
それくらい俺は、鈍感で部活の事とかしか見えてないけど、付き合ってもらえるならお願いします。』
私はその手紙を見て、涙が止まらなかった。
手紙に、涙が落ちていき、文字が薄れる。
でも、そんな涙を止めなくていいんだと、その手紙を読んでなんとなくわかる
「亮も好きだったんだ、私の事。両思いだったんだ。もうちょっ、と早く言えばよかった」
悲しい思いと早く言えばよかったという後悔で涙が止まらない。
止めようとすると、また涙が出ててきてどうしていいうかわからない。
「ほんとに亮の事好きだったんだね」
「は、い」
少し落ち着いて私は、亮のお母さんと一緒に電車で帰った。
家に着いて、私は読む相手はもういないけど返事を書こうと思った。
私はその返事を書いて今度は、亮のお母さんに渡そうと思った。
そして、私は目標を作った。そうしないと、今の自分は死んでしまう気がする。
私には高い目標過ぎて無理かもしれない。
自己満足かもしれない。でも、そうやって好きと言う感情にうまく向き合って行こうと手紙を読んで思えた。
だから、私は陸上を始めた。
いつかその夢を叶えて亮を超えることができる気がするから。