デートに病弱従姉妹を連れてくる婚約者、嵐が怖いのなら嵐の目に入れば良い令嬢の話
私の婚約者カール様が、デートに従姉妹を連れて来ました。
「カ、カール様!その方は!?」
「ハイデリア、従姉妹のミミリーだ。すまないお祖父様から面倒を見ろと言われて・・・」
「まあ、ハイデリア様、初めまして、カールの従姉妹のミミリーですわ。私が病弱なばっかりに、ご迷惑をかけて申し訳ございません」
淡い金髪を手で巻き上げながら、涼しい顔で病弱と言いますわ。
肌の血色が良いですわ。
嘘に決まっていますわ!浮気ね!
「カール様!お父様に言いますわ!グスン」
と背を向けて帰ろうとしたら・・・ゴロツキたちがいましたわ。囲まれたわ。
「グヘへへへへ、兄ちゃん!女の子二人でええな~」
「ゲヘ、ゲヘ、グヘ、俺らも交ぜてよ」
「ヒヒヒヒヒ、そっちの姉ちゃんは喧嘩別れかい?俺たちとデートしようぜ!」
「ヒィ」
「君たち、止めないか?いくら命があっても足りないぞ!」
「はん?何を言っている?俺たちは強いぜ。王都で1番のハンス愚連隊だ」
「おい、色男、その細い体で何が出来るの?喧嘩したことないだろう」
「「「「プゥ~クスクスクスクス~~」」」
「馬鹿!ミミリーが危険なのだ!今すぐ平伏してわびろ!」
すると、ミミリー様はトコトコと前に出て。
ゴロツキのリーダー格に・・・抱きついたのです。首に手を回しますわ。
「ウホ、姉ちゃん。分かっている~」
ゴロツキの首の後ろで手を組み。
「あれ?あれ?」
すごい力でゴロツキの頭を下げて。
そのまま膝をゴロツキの顎にヒットさせましたわ。
バチン!と何かが割れた音がしました。
ミミリー様は金きり声を上げましたわ!
【キエー!後ろの早口の精霊様が見ている!お前を殺せ!と言ってリュリュリュリュ~~】
「「「何だ!」」」
それから、肘をこうして・・90度にしてゴロツキ達に襲いかかりました。
【私の目の中の車輪が回ってリュリュ!近き者は見ろ!遠き者は近くによって見ろ!グヘー!】
途中、「コーホー」と呼吸を整えながら丁寧にゴロツキ一人一人をぶちのめしていったのです。
その間カール様からは説明を受けました。
「ミミリーは心が病弱なのだ。私がいると比較的落ち着く・・・家門の長老の命令だ。どうやら、先祖の呪いがミミリーに現れたらしい。心が病弱だと現れる呪いだ。すまない、ハイデリア・・・」
戦いは1分もかからなかったわ。最後に立っていたのはミミリー様ですわ。
ミミリー様は瀕死のゴロツキの首を片手で掴み引きずりながら言いましたわ。
「グヒャ、カールゥ~、ハイデリア様~、もう大丈夫ですわ。私の目の中の車輪がもうすぐ治まりますわ」
意味が分かりませんわ。
「ヒィ」
目は翡翠から真っ赤になっていました。片目が光っていましたわ。
ピカッ!
「ハイデリア!大丈夫か?」
私は気絶をしましたわ。とても怖かったですわ。
カール様のお家は武家ですわ。何でも『狂戦士の呪い』だとか・・
高名な聖女様、賢者様でも呪いを解くことができませんわ。
戦いは本能、無理矢理解呪すると、死に至るかもしれないとの事ですわ。
もう、怖くて、カール様とデートも出来ませんわ。婚約解消も視野に入れています。
どうしたら良いかと、転生者の噂のある占い師『ピンクブロンド先生』にご相談に参った次第ですわ。
・・・・・・・・・・
「ピンクブロンド先生じゃないんだからねっ!サリーよ。サリーだからね」
「ヒィ、サリー先生、申し訳ございませんわ」
・・・全く、大銅貨2枚(二千円)の占いで、そんな王国級の呪いの相談されても困るのだからね。
「お父様と相談すれば良いのだからね。猫ちゃんでも愛でて気分転換するのだからねっ!」
これぐらいしか言えない。
「そ、そんな。・・・困りますよね。解決したら金貨30枚(300万円)差し上げようと思ったのですが・・・私のドレスの予算ですわ。グスン、そうでしょね。困りますわよね」
「ちょっと、待つのだからね!サリーにお任せだからねっ!」
「はい!」
私はサリー、現世では13歳、平民スタートだからねっ!
前世、弟がK1の道場に通っていた。
あのミミリーの使った技はムエタイに近い。
だから、ハイデリアを特訓したのだからねっ!
自分で倒させて解呪するのだからねっ!
「走るのだからね!」
「はい!はあ、はあ、はあ、もうダメですわ」
「しっかりするのだからね。100メートルも走ってないのだからね!」
「腕立てだからねっ!」
「ウグ、はあ、はあ、はあ」
「一回もしていないじゃない!」
「体幹を鍛えるのだからねっ!馬歩立、足をアーチ状にして立つのだからね」
「ウグ、先生、もうダメですわ」
扇よりも重い物を持ったことのない令嬢だからね。これじゃ、金貨30枚もらえないのだからね!
「ハイデリア様、人生の中で一番持った重い物は?」
「はい、フルートですわ。幼少の頃から習っております」
「フン、やってみるのだからね!」
ピラ~~♩~♩ピラ~~~~~♩
中々じゃない。風を感じる。上手いじゃない。そう言えば本場のムエタイ戦士は音楽と共に戦う。ワイクルーだっけ?
音楽で何とか出来ないか?
「じゃあ、山に行くのだからね!」
「はい、分かりましたわ」
山に行って、蛇の穴の前でフルートを吹かせた。
「こう、プワ~と吹くのだからねっ!」
「はい、先生!」
♩プワ~、プププワ~、プワワワワワワ~♩
すると、蛇が穴から出てきて鎌首をもたげて威嚇してきた。1メートルくらいの蛇だからね!
「シャアアアアーーーー」
「ヒィ」
「逃げちゃダメだからねっ!ミミリーに捕らわれたカールを助けるのだからねっ!蛇を静めるのだからね!」
「カール様!」
「逃げるのだからね!」
初日は逃げた。
中々上手く行かなかった。
しかし、記憶を頼りに、ラッパみたいな笛を作ろうと提案した。
「騎士団のラッパがありました。これを改良して」
「これでいいのだからね」
さすが音楽令嬢だからね。イメージを言ったら用意してくる。
段々と蛇を操るコツが掴めてきた。
一月経つ頃には、蛇がとぐろを巻いてハイデリアの前に集まるようになったのだからねっ!
♩プワ~、パーパパパー♩
「行進の音曲!」
「「「「シャーーーーーー」」」」
「魂鎮魂の音曲、穴に戻れ!」
プワ~ン♩プワ~ン♩
「「「「シャ!シャ!」」」」
「すごいじゃない。次は街でやるのだからね!」
「はい、先生!」
蛇を一匹壺にいれて、市場で実演したのだからねっ!
☆☆☆市場
「壺から蛇が出てくるのだからね!」
プワ~!プワ~!パパパパパ~♩♩
「おおすげー!」
「キャア、蛇だわ!」
「スゲー!」
「次は鎌首ダンスだからね」
パパパパパー♩パパパパパー♩
「蛇が首を左右に揺らして」
「ダンスしているわ」
「おもしれー」
チャリン♩チャリン♩チャリン♩
お金稼げたのだからね。
「もう、大丈夫だからね」
「はい!先生有難うございました。お代です」
「いらないのだからね。これでドレスを作るのだからねっ!報酬はハイデリアの笑顔で十分だからねっ!」
「グスン、先生」
大儲けしたから報酬はもらわなかった。金貨100枚、ヌイグルミの蛇で実演してくる大道芸人が現れた。止め時だからね!
これで男爵のパパが迎えに来たら学園の工作費として使おう。
ピンクブロンド、もはやヒロインではなく「ざまぁ」される存在に成り下がった。
学園で無事に過ごすための資金だからねっ!
☆☆☆その後
私は久しぶりにデートをしたわ。
「ハイデリア・・・すまない。そのラッパのような楽器は何だ」
「大丈夫ですわ」
「何が大丈夫なのか?」
プワ~!プワ~♩パパパパパパパーー♩
笛を吹くと、ミミリー様はビクンと反応して。
「ウギャー!精霊様の敵はどこかぁ~!」
目が緋色になり。彷徨いだしたわ。
その時、ちょうど良いゴロツキたちが現れたわ。
「おい、この前の姉ちゃん!仇討ちだ!」
「今度は30人集めた」
「謝罪をすれば許してやる!頭一つ下げれば手打ちにしてやる!」
「行くのですわ!ミミリー様!本能の赴くままに!」
【ウゲー、車輪が回ってリュリュリュ~~~!】
プワワワワワワワワ~♩
テンポを早くした。
「まず、話会いを・・・」
「「「「ウゲーーーーーーーー!」」」」
超近接戦闘、膝、肘鉄、まあ、頭突きまで。あれがローキックというものかしら。
「「「「「「ギャアアアアアアーーーーーー」」」」
ゴロツキたちは3分で全滅したわ。
「ウギャーーーー!」
雄叫びをあげるわ。あれ、雌叫かしら。
だから、鎮魂の音曲。バラード!
プワ~ン~♩プワ~ン♩
そしたら、ミミリー様は正気に戻ったわ。
「はっ、またやってしまったわ」
「フフフフフフ、ご苦労様ですわ」
「まさか、ハイデリア様が・・有難う。グスン」
ミミリー様はゴロツキ30人殺し令嬢の異名で呼ばれるようになったわ。
そして、ミミリー様は手を振り去ったわ。カール様から離れるようになった。
屋敷では一人楽士をつけて暴れたら静めるようになったわ。
最終的には婚約者様が出来たら習わせるとカール様から聞いたわ。
「ハイデリア、少しも解決していないが、これで良かったのか?」
「ええ、これもサリー様のおかげよ。さすが、転生者だわ。これは・・・なんでしたっけ?」
カール様は首をかしげながら言いましたわ。
「チート?異世界人が活躍する現象を言うらしいのだが・・・」
そう、チートね。
サリー様。
大空にサリー様の顔が浮かんだわ。青空にピンクの髪のお顔がしっかりと浮かんだわ。
最後までお読み頂き有難うございました。