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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

言いなり王子

婚約破棄されたら側室になった話

作者: 高月水都

言いなり王子リヒャルドの母の話です

「エヴァンジュリンさま。わたくし、婚約破棄されました」

 王太子妃のエヴァンジュリンさまに誘われてのお茶会。王太子妃になったとたん公務が多くなって疲れている感じのエヴァンジュリンさまにせめて寛ぐ時間を与えてほしいとお願いして調整してもらったが、まさか、そんなお茶会の前日に婚約破棄されるとは思っていなかったのでつい弱音をこぼしてしまった。


「スフィアが婚約破棄? 相手は伯爵家の令息だったわよね」

 エヴァンジュリンさまの脳内で元婚約者の顔がすぐに浮かんでいるだろうと察する。エヴァンジュリンさまの前には何度か元婚約者は顔を出していたし、エヴァンジュリンさまの夫である王太子殿下もわたくしを通して繋がりが出来ていた。


「はい」

 上手くいっていると思っていた。それがわたくしだけの思い込みだったのが辛かった。でも、辛いからと言って今日のお茶会は延期にしたくなかった。


 エヴァンジュリンさまにゆっくり休んでもらいたいから王太子殿下と公務の予定を作っている関係者に頼み込んだのだ。


「理由は?」

「それが………」

 元婚約者が破棄を言いだした時の言葉を思い出す。正直、理解できなかったのもあって聞いてもらった方が納得いくかもしれない。


「わたくしが常に反対ばかりするから気に入らないと……」

「反対? 何でも賛成してくれる貴方が?」

「はい……」

「…………例えば、どんな時に反対したの?」

 エヴァンジュリンさまに聞かれて元婚約者とのことを思いだしてみる。


 あれは、デートの時だった。

 最近はやりの店だと誘われて向かった宝飾品の店。そこではたくさんの宝石が所狭しと飾られていて人も多く繁盛していた。


『スフィア。君に似合うよ』

 そう告げて差し出された首飾りを見て、

『すみません。こういうものは好みではなく……』

 確かに流行っているのだろう。見た目が綺麗な物が多く、豪華そうに見えた。


 だけど、ここは好みではないと感じたのだ。


「――貴方がえり好みするなんて珍しいわね」

「そうですね……わたくしも普通に受け取っておけばよかったと思いましたね。その後、何も買わずに婚約者を怒らせてしまいましたので」

「――で、その店は?」

「あっ、はい。***という店で……」

 と店の名前はきちんと覚えていたので答えるとエヴァンジュリンさまの表情が険しくなっていく、

「エヴァンジュリンさま……?」

 何かまずいことを言ってしまったのかと不安になるとエヴァンジュリンさまはすぐに表情を緩めて、


「他には、そんな一回だけじゃないでしょう」

「そうですね……。ドレスを買いにお店に行ったこともあります」

 デートの仕切り直しであった。



『このドレスの生地は最近作られた珍しい生地なんだ』

『これに目を付けるなどお客様素晴らしい審美眼をお持ちですね』

 誇らしげに告げる元婚約者と店員の説明を聞きながらその貴重な生地を触らせてもらう。


『………すみません。この肌触りは』

 ざらざらして動くと肌に擦れて痛そうな感じがするのだ。


 元婚約者は舌打ちしていた。

 店員は不愉快そうに顔を歪めて、すぐにそれを取り繕った。




「そんなこともありました……」

「そう。――その店の名前も教えてくれる?」

「はいっ。店の名前は……」

 それからも元婚約者の話をしてほしいと言われて話していくと、

「なるほどね……」

 何故か妙に納得されてしまった。


 それから沈黙が流れて、

「ねえ、スフィア」

「はいっ」

 いきなり沈黙が終わったので反応が遅れた。


「貴方側室になりなさい」

「えっ? 側室っ⁉」

 何でいきなり。


「実はね……わたくしがなかなか子供が出来ないことをいろいろ言っている人が居るのよね」

「お子さま……結婚してまだ二年ですよね」

 二年でできないところは出来ない。第一公務で忙しくてゆっくりできないことも理由の一つだろう。


「そうよね……。だけどそんな言い方がされていたら心労で出来るものも出来ないでしょうね。だからね。貴方が一緒に居てくれれば少しは気が楽になると思ったのよね」

「エヴァンジュリンさま………」

 エヴァンジュリンさまにそんなことを言われて頷かないわけにはいかない。


「分かりました」

「やっぱり、貴方はわたくしのお願いはすんなり頷いてくれるわね」

 エヴァンジュリンさまの言葉に言われてみればエヴァンジュリンさまに言われたら何でも頷いて、叶えようとしていたのに元婚約者にはそんなことなかったのが不思議だった。





 そんな感じで側室になったとたん、エヴァンジュリンさまは、

「リラックスできるわね」

 心労と公務をわたくしに分けることが出来たので時間に余裕が出来たのでお子さまをお二人お生みになった。


 そして、わたくしも王子を一人生んだ。実家にいろいろあったけど、まあ平穏と言えば平穏の日々だろう。




 そう言えば、元婚約者の家は貴族籍を没収されていた。なんでも、盗品の宝石や装飾品を売っている店と我が国では販売禁止されている燃えやすい生地を使っていた洋服店。食中毒を起こした店の総責任者だったとか。


 デートで連れて行ってもらった店はすべて元婚約者の店だったとか……。


言いなりになる相手は選んでいるマーゴック家です。

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― 新着の感想 ―
割と血筋的に王族に入れたらまずい系の血筋じゃねえか
可愛い❤ ただ、お名前スフィア様ではなかったのですか?別の方ですか?
いい王太子妃さまですね♪ 萌やすい…「燃えやすい」の変換間違いでしょうか?
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