孤児を1000人引き取って育てたら貰えるチート武器が欲しかっただけなのに。
「孤児をできるだけ多く集めてほしい」
「という事は魔王について、いよいよ始めるのですね」
「ああ………」
そうだ、あれ?
この侍従に言ったっけ?
子供を引き取って育てた数が1000人になると貰える聖剣エクスカリバーが欲しいって。
魔王への特攻武器なんだよなぁ。
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皆さん、こんにちわ。
異世界に子爵貴族の令息として生まれたベルナルド・ベイル・ベスカーニャだよ。
前世は週末にゲームをやることぐらいが趣味の寂しいITサービス系営業マンでした。
好きなゲームジャンルは剣と魔法の世界シミュレーションローグライクRPG。
そして、お約束のように好きでやりこんだゲームに転生した。
『箱国物語~太陽の沈むダンジョン~』
という不思議な題名だった。
最初にパラメータで性別や身分や容姿や頭の良さ等を割り振ってできたキャラで、イグニス王国の王都ど真ん中に突如として現れたダンジョンを攻略していくというゲームだ。
『名もなき村人』の身分スタートだと、王都から遠い村からスタートのハードモード、貴族だと王都にある屋敷からのスタートなど色々とバリエーションがあって面白かった。
僕?
僕は平日激務してるから疲れてゲームに課金して、最初からある程度ツヨツヨキャラで始めた。
性別「男」、身分「貴族(子爵)」、容姿「まあ貴族として普通」、頭の良さ「ばっちり良い(魔法・武術スキルをすぐ覚える)、スキル「魔法戦士」(魔法が使える戦士の職は結構金がかかった)。
そして、前世いつ死んだのかは覚えてないが、前世でキャラメイクした通りに生まれた。
ーーという事を、ダンジョンに入れる13歳になって思い出した。
これもゲームスタートの年齢通りだ。
「もちろん、魔王を倒したい」
部屋で侍従の淹れたオレンジティーを飲みながら、ぽつりと呟いた。
完璧にやばいやつだ。
部屋に控えている侍従たちを見たけれど、特に聞いてないようだ。
良かった。
まずは、金にものを言わせた装備を持って、王都のローグライクダンジョンで大量の金稼ぎだ。
その次に、ダンジョンの最下層にいる魔王を倒すために有効な装備の一つの聖剣「エクスカリバー」を手に入れる。
これがまた注意なのは聖剣はダンジョンで手に入れるわけではない。
聖なる剣という事で、善行を積むと天から剣を授けられる。
その善行とは孤児を1000人育てるのが一番効率がいい。
それに必要な資金は最低でも200億ラルド(イグニス王国の通貨で大体日本に居た時と貨幣価値はそこまで変わらない)。
「とにかくダンジョンに行かないと」
また独り言を言ってしまった。
友達いない寂しい癖やめたい。
今世では、友達できるといいなぁ。
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やってきましたダンジョン。
「おりゃあ!!」
ダンジョン10階で現れたボスキャラ木の化け物『ビッグトレント』を倒した。
ギルドの物販で買った火の剣でここまでは楽勝だ。(もちろんそこそこお金はかかったが小遣いで買った)
ローグライクダンジョンで10階までなんて余裕だから。
「やー、僕ってば強いなー」
風魔法でボスキャラがドロップしたアイテムを、スキルの『アイテムボックス』に突っ込みながら独り言を言う。
一人。寂しい。
最初ギルドでも、かわいいエルフの受付嬢に、
「パーティーメンバーを募集した方がいいですよー」
と言われたけれど、気づいたんだ。
パーティーを組むと、ドロップアイテムを山分けしなければいけないという事に!
「いや、事情があって一人で向かいます(金を独占したいから)」
キリッ、とした顔で僕は言ったね。
そしたら、受付嬢ちゃんはうっすらと涙ぐみながら、
「魔王もいてモンスターも湧き出るダンジョンにお一人なんて、特別な事情があるんですね………」
って言った。
そうだね、主に金だね。
あれ? ベスカーニャ子爵家が金欠なんて噂たたないといいけど。
まあ、ベスカーニャ子爵家は豊かだけど13歳の嫡男の思い付きに200億ラルドをポンって出せるほどではない。
もちろん、急に魔王が居るダンジョンに行くのを許してくれて装備は買ってくれるぐらいには裕福だけどな。
家で執務をしている父上に(王都に出現したダンジョンへの不安と時々溢れてしまうモンスターへの対処から治安が悪くなって貴族の仕事が増えて大変そう(人ごと))、
「父上ー。ダンジョンでモンスターを退治して参りますので、いくらか用意の為の資金を頂きたいのです」
って言ったら、
「おお! そう言ってくれるか!」
ってそこそこの装備を整えてくれたし、ギルドの物販で物を買うお金もくれた。
父上、めっちゃ感動してたけど、ごめん僕はダンジョンで遊んでくる(最低)。
やっぱり剣と魔法の世界に生まれた以上魔王を倒すのに全力を尽くすのが異世界って事なんだよ!(キリッ)
と、そこまで僕は父上から金を引き出したときの回想を終えた。
でも、回想している間もひたすらダンジョンを走り続けている。
途中の雑魚敵はギルドの物販で買った水の剣で瞬殺している。
でも、時々めんどくさい物理攻撃が効きづらい炎の敵(炎の塊みたいな敵)がいて、熱いし魔法で倒すから魔力減って魔力ポーション飲んでマイナス出るしで、ちょっと疲れてきた。
10階までが余裕すぎたんだと思う。
木のボスは1か月に一回リポップするからそれを倒すとして、ここからは慎重にいったほうがいいんだろうか?
いや、でも20階過ぎたら良質な魔力を含んだ金属を核にするアイアンスライムでて効率良いから(土属性のダンジョンに変わる)、うーん……。
結局12階で炎の塊の敵が一気に10匹ぐらい出てきて、倒した後見つけた帰還陣で帰った。
……………………死ぬかと思った。
ゲームプレイしている時は特になんとも思わなかったけど、死んだら終わりだ。
ゲームでは死んだらレベルが1に戻るのと持ち物の何割かがなくなるという理不尽仕様だったけど、ちゃんと生きているのは優しい事だったんだな。
もっとスムーズにチートする予定だったけど、死んだらそこでゲームは終了だ。
慎重に進めた結果、孤児を最初に引き取るまで1か月くらいかかった。
孤児はギルドにそういう事がしたいとふわっとした感じで伝えて、父上にも話をしたらギルドと父上の間で話が済んだみたいだ。
良さげな孤児が女子3人男子2人が引き取られた。(下は3歳で上は6歳とか)
鑑定ができるギルド職員がスラムの行き倒れている孤児を鑑定して、
「ベスカーニャ子爵家の魔王を倒すという目的に、お役に立てそうなスキルを持っている子を引き取ってきました」
という事らしい。
あれ? 僕ってばギルド職員にもダンジョン攻略の目的って言ったっけ?
それはともかく僕は、
「そんな選別は次からしなくていい。孤児は孤児で誰でも一人の人なんだから」
と言ったら、鑑定が使えるギルド職員はなんだか泣いていた。
いや、1000人の孤児を引き取る目標を達成するには誰でも一人カウントでしょ。
さっそく、王都の外れに大きな建物が借りられた。(まだ購入代金は捻出できない)
そこへギルドから引退した冒険者と、父上の方から子だくさんで職にあぶれている下位貴族が格安で雇われて配属された。
そこの世話はこれまた格安で、商業ギルドから使用人が送られてきてやってくれるらしい。
『ベルナルド・ベイル・ベスカーニャ孤児院』
と看板に書かれた建物があっという間に手配されて驚いた。
それと同時に身の引き締まる思いだった。
聖剣の為に金をもっと稼がなきゃな! って……。
それからは毎日ダンジョンに潜り続ける日々だった。
それと同時に貴族家の嫡男なので、当然貴族家の跡を継ぐ教育も受ける。
ーーーあっという間に時間は過ぎていった。
引き取る孤児は着実に増えたが、なんだかゲームの時よりも育てるコストかかかった。
現場の人間がなんだかんだと追加予算を申し出てくるし、それがもっともな言い分なのだ。
特に最初に引き取った5人が女子が大商人と勇者(?!)のスキル持ちで男が聖人(?!)と聖騎士と大魔法使いのスキル持ちだ。
意味が分からない。
何故、そんなスキル持ちがスラムにいたのだろうか。
……その謎はともかく、そんなすごいスキルに見合った装備や教師やもちろん日々の食料・洋服などなど果てしなくお金はかかる。
……あ、そういう事? いくら良いスキルはあっても育てるコストがかかるって事かな。
確かに前世でもいいスキル持ってるキャラって経験値もどんどん桁違いに必要になるし、専用装備とかもあるしな。
後、ギルド職員も鑑定とか持ってるけど、鑑定料かかるしな。
ただで鑑定すると、鑑定の価値が下がるからとか言ってたような言わなかったような。
後、鑑定もってる人って真実を見抜いちゃうから、護衛に囲まれてないと危ないとか。
……異世界って大変なんだな。
ま、僕には関係ないけどね。
とにかく金を稼がないと。
そんなこんなで途中20階を過ぎたあたりでアイアンスライムを狩って、大量にギルドに素材を流しすぎて価値を暴落させてしまったり、色々ありつつも、なんとか金を稼ぎながら日々を過ごしていった。
でも、こんな調子でやっていたら結構早い段階で地下100階にいる魔王の手前にはいつかたどり着くだろう。
……そんな風に思っていた時もありました。
孤児を1000人とは言ったけれど、あれから『7年』が経っていた。
ダンジョンは90階の中ボスで足踏みしていた。
なんとかここにくるまでに、孤児は999人引き取って、なんか父上とギルドが選んだ孤児以外は王都からちょっと離れた所に学校みたいな施設を建ててもらって育てている。
と言っても、僕のやることはお金を渡すことと、時々顔を出してやってくれと言われるから王都と郊外の孤児院を訪問して菓子とかを配ったりするだけだけど。
最後の1000人目の孤児を引き取るときは、『ベルナルド・ベイル・ベスカーニャ孤児院』の祝賀式典とか言って、大々的に引き取られた。
普通に赤ちゃんで寝ていた。可愛かった。
……え? こんな可愛い赤ちゃんスラムにいて孤児になるの?
僕は戸惑いながらも壇上で儀礼的に引き取るふかふかモチモチしている赤ちゃんを恐る恐る抱っこした。
……赤ちゃんはにっこりしている。
『孤児の引き取り1000人達成おめでとう! そんな善行を積んだプレイヤーに聖剣を授けよう!』
赤ちゃんを抱っこした僕の頭に、そんなめちゃデカボイスが響いた。
「ベルナルド様!」
めちゃデカボイスに驚いて固まった僕に、使用人が心配して声をかけてくる。
慌てて側に控えていた使用人に赤ちゃんを預けると、辺りが強い光に照らされて皆がざわざわしてる。
眩しくて一瞬目を瞑ったけれど、また目を開けると、目の前には聖剣エクスカリバーと思われる一振りの剣が浮かんでいた。
「エクスカリバー……」
いや、ここまで長かったでしょ。
僕が剣の柄を握ると、光は消えて剣は僕の手に……って!?
ガラーン!!
剣のあまりの重さと握りづらさに剣を地面に落とした。
辺りが静まり返る。
「呪いの剣?」
引き取った孤児の勇者が首を傾げて真っ先に発言した。
「違う! 聖剣エクスカリバー! ……のはずだ」
何故、善行を積んで金を出したのは僕なのに、手に馴染まないんだろう?
「なるほどー、ちょっと持たせてもらっていいですか?」
今年13歳になってダンジョンに入れるようになった(だけれど、ダンジョンは危ない所なのでまだ入らないようにと止めている)勇者が壇上に上がってきて、落ちている剣を拾い上げた。
まとめたポニーテールの髪が凛々しい勇者が手に持つと、聖剣は淡く光った。
「おおー、持った感じ良い!」
剣を持ってはしゃぐ勇者に何も言えなかった。
むしろ可愛くて絵になっていて、金を稼ぐのと貴族を継ぐために勉強しかしていない「魔法戦士」の僕より、よっぽどスキル「勇者」の13歳の女の子が聖剣を持つ方が様になっていた。
「持たせてくれてありがとうございました。地面の上に落ちたままだと危ないからこっちの机の上に置いておきますね」
更に勇者は気遣いも見せてくれて、危なくないように近くの机の上に載せてくれた。
20歳のこの世界の成人の年齢も過ぎた僕は自分が情けなかった。
祝賀式典は微妙な空気になって終了した。
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とりあえず、その祝賀式典の日以降、僕は今までのようにダンジョンに向かって今まで以上に金を稼ぐことにした。
聖剣は使えるように何度も試したけれど、重くて手に馴染まなくてとても使えたものではなかった。
……そして、僕の反対を押し切って、祝賀式典の日以降に孤児で13歳になってダンジョンに入れるようになった者からダンジョンに入るようになった。
と言っても戦闘系のスキルを持った子だけだけれど。
それから、最初に引き取った孤児の5人がチームを組んで孤児院を出て、稼ぐようになって僕の孤児院にお金を出すようになったらしい。
5人の孤児が借りた家には『ベルナルド・ベイル・ベスカーニャ孤児院第一分室』、と看板が掛けられていると聞いた。
女の子の大商人と勇者と男の聖人と聖騎士と大魔法使いでパーティーを組み、破竹の勢いでダンジョンを攻略しているらしい。
それこそ90階まで7年かかった僕なんか雑魚だった。
金が独占できないとか考えてソロにこだわってないで、ダンジョンを効率よく攻略して金を集めるためにギルドでパーティーメンバーを募集してダンジョンを攻略した方が良かったのだ。
そんな事を孤児の様子を教えてくれた侍従に、ぶつぶつとオブラートに包んで言ったら、
「いや、ソロで90階まで攻略しているベルナルド様が失礼ですが化け物です」
と妙な慰めをくれた。
5人の孤児のチームは、僕が引っかかってたところもあっさり突破して何か月かくらいで30階までをすぐにクリアしたらしい。
「さすがはベルナルド様が引き取った孤児です」
との侍従の妙な賛辞に僕は完全に諦めた。
鑑定をして目を付けたのはギルド職員だし、計画を進めたのは僕の父上とギルド職員だ。
僕は聖剣がほしいという浅はかな思い付きで、金だけを出して孤児を引き取るという無責任な事をしただけ。面倒も見ないで金を稼ぐしかしていない。
僕はあの勇者の女の子に、僕の部屋に丁重に箱に入れられて置かれている聖剣エクスカリバーを渡すように侍従に指示を出した。
「やっぱり聖剣は勇者が使うべきだね」
「さすがはベルナルド様!」
侍従がうっすらと涙ぐみながら僕を褒めた。
『ここまで状況を読んでいらっしゃったとは』
とか、
『これでベスカーニャ子爵家は安泰です』
とか意味不明な事を言い続けている。
……やめて欲しい。お調子者の気がある僕でも、ちょっとみじめになってきた。
聖剣エクスカリバーが勇者の女の子に送られた翌日、勇者の女の子から手紙が届いた。
聖剣の御礼だと思うけど、僕はちょっとみじめなのでそっと中を見ないで置いておいた。
「お前、自分を犠牲にしてよく決断したな。私もそれで良いと思う」
聖剣を渡したからなのか、父上からも後日そんな風に言われて肩を叩かれた。
そして、そこから3年たって魔王討伐の知らせが届いた。
もちろん、討伐したのは孤児の5人組だった。
僕は最下層にいけないまま中ボスの手前まででずっと金稼ぎをしていたけれど、5人組は僕の半分以下の速度で魔王まで到達して討伐したとの事だった。
これで、ダンジョンは安心だ。
魔王が居ないから、ダンジョンは完全に制御され、モンスターも狩り続けなくても外に溢れ出てこない。
更にこの世界は特殊で、ダンジョンを討伐したら神様によってダンジョンの入り口が神殿風に変わって、討伐を知らせる看板がかかる。
そうそう、ゲームでもこんな感じで看板が……、
『初討伐達成!! 『ベルナルド・ベイル・ベスカーニャ孤児院第一分室』パーティー!! 大商人ベル 勇者ルナ 聖人ナルド 聖騎士イル 大魔法使いカーニャ』
「えええっっ!!!」
僕はダンジョン前で貴族らしからぬ大声をだした。
パーティー名も初めて知ったし、5人の孤児たちの名前も初めて知った。
というか、パーティー名も孤児たちの名前も僕の名前まみれなんだけど?
「ベルナルド様!」
振り返ると、看板でちょうど見ていた5人の孤児たちが誇らしげな顔で立っていた。
「君たちは……」
なんて言ったら良いのか分からなくて僕は立ち尽くした。
「そんな驚いていただけて光栄です! 私たち、ベルナルド様に喜んでもらいたくて、恩返しをしたくて……そして」
代表という事なのか勇者の女の子改め勇者ルナが澄み切った笑顔を僕に向けた。
勇者ルナの背中を他の四人がバシッと叩く。
「手紙にも書いた通り、魔王を倒したのでベルナルド様と結婚させてください! ベスカーニャ子爵にも許可をもらってますし、返事がなかったという事はオーケーという事だと思いますけど、改めてベルナルド様から了承を頂きたいです!」
「え……」
頬を染める勇者ルナに、危うく僕は首を傾げそうになってから『ああ!』と心の中で叫んだ。
聖剣の御礼の手紙だと思ってみじめで読んでなかったけれど、もしかしてあれにそんなことが?
どうりで父上が変な事を言っていたし、貴族家の嫡男なのに一切縁談の話が来ないから僕に諦めているのかと思っていた。
「そりゃあ、魔王を倒したぐらいじゃ、王都の憂いをたったお一人で食い止めて、孤児をも救った英雄のベルナルド様にふさわしくないのかもしれませんが、私も頑張りました! あの時、孤児になって誰も助けてくれないで絶望の中に居た私たちを救ってくれたベルナルド様。孤児の私と貴族のベルナルド様じゃ釣り合わないのかもしれませんが、王家とも話がついていて、男爵の称号をもらえるようです。賞金もいっぱいもらいました! ベルナルド様のお考え通り、私たちで魔王を倒しました! 聖剣まで授けてくださってありがとうございました。私を認めてくださって、私たちに背中を預けてくださってありがとうございました。今度は一緒に隣に立たせてください!」
頬を染めるルナがずんずんと僕に迫ってきて、僕は頭の中で?マークでいっぱいだった。
どういう事なんだろう。
なんか僕が好き勝手していたことにすごく誤解がある気がするなあ。
「ベルナルド様!」
「は、はい」
大迫力で目の前いっぱいになるルナに、大きな声で名前を呼ばれて思わず返事をする。
「やった! 一生幸せにします!」
「「「「おめでとう!!」」」」
すると、ルナは目の前でぴょんぴょん飛び跳ねた後、僕に抱き着いてきて、周りは拍手を始めた。
なんならどこに隠れていたのか、他にもたくさんの知っている人たちが現れて口々に祝福の言葉を口にする。
僕は呆然としていた。
『……どうしてこうなったんだろう、子供を1000人引き取って育てたら貰えるチート武器が欲しかっただけなのに』
「わーい! わーい! 嬉しいなぁ」
勇者ルナは、満面の笑顔で幸せそうな顔をしている。
その無邪気な笑顔を見ていると、僕は自分の複雑な気持ちなんてどうでもいいように思えてきた。
「……うん、よろしくね」
僕がそう言うと、ルナに更にきつく抱きしめられる。
……………………あ、ちょ、骨が折れそう。
背中ギシギシ言ってる。
「ちょ、タンマタンマ………!」
「あー! ベルナルド様すみません!」
晴れた青空にルナの悲鳴が吸い込まれていった。
ーおわりー
読んで下さってありがとうございました。
もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。
また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。