賞味期限の切れた小麦粉
久々に小麦粉を捏ねようと思った。
挟む具材まで買って、よし、とボウルを据える。
冷蔵庫から袋を取り出す。
念の為に賞味期限を確認。
すると、あろうことか2022年11月で切れていた。
2024年7月の私は、時空の捩れでも起きたかと疑った。
これから作ろうとしていたサンドイッチ的な食べ物は、以前はよく作っていたもので、妻にも好評だった。
ついこの間も作って食べたような錯覚さえある。
しかしながら、小麦粉の賞味期限は1年半以上も過ぎていた。
これはどういうことか。
思えば、賞味期限が切れた1ヶ月後に、子供が生まれていた。
当時は妻の実家に帰っていた。
いわゆる里帰り出産である。
家を空ける前から、その小麦粉はあったらしい。
そして一年半も、使われることなく冷蔵庫の中に眠っていた。
実に一年半ぶりに、子供が生まれる以前によく食べていた料理を、作ろうと思い至った。
結果は失敗に終わったが、なんというか、やっと余裕が出てきたのだなと思い、嬉しくなった。
以前好きだったものに、手が出るようになってきたのだ。
一年半という年月を、こんなにもあっという間だと感じたことはなかった。
無為に過ごした学生時代よりも、あっという間である。
ただ、歳を食っただけかもしれないが。