復讐への布石
「…ということがあってね。どうにかして音川君を助けてあげることはできないのかな?」
湊は父親の浩介に今日の出来事について話した。
「うーむ、これは相手はかなり手強いかもしれんな。
私からあの学校の教師たちにいつも以上に目を光らせるように指示したんだか…教師に漏れないあたり策士なのかもしれないな。」
浩介は続けてこう言った。
「そういえば前に湊がいじめられたのは四天王の一人、 岸野田という男だったよな?」
その人の名前は今でもよく覚えている。
普段は手下の輩にいじめられていたが元凶は彼である。
湊は頷いた。
「実は、音川君の周りで起こった2件の事故はどちらも同一人物による犯行のようだった。2件目は執行猶予中のものだったが。
そしてその人物は岸野田の親戚にあたる人物らしい。
だから岸野田がこの事件に関わっていることには間違いが無さそうだ。」
湊は絶句した。
このことが本当なら、どういった意図で彼はこんなに酷い仕打ちを音川君にしたのだろうか。
そもそもこんなことが許されるはずがないと。
そして「私は、岸野田に復讐する。私自身のためにも、音川君のためにも。」と言った。
「湊がそんなに強く思いを持っているのなら私も全力を尽くそう。ただ色々な情報とか証拠を集めるのには時間がかかる。そして準備が終わった暁には1つ湊には危険な仕事をしてもらわなければならない。それを受ける覚悟はできてるか?」
湊は大きく頷いた。
そして「危険な仕事って具体的にどういうことなの?」と尋ねた。
「多分証拠とかを集めたりまとめたりしてたら2年近くはかかると思うから、中学2年生になるタイミングで音川君と同じ中学校に転入してもらう。
もちろん理由とかは私の方で何とかするから安心してくれ。」
こうやって岸野田や大部分に関する情報が集まったことによって、今に至るのである。
……予想外の事態が起こっていたが。
岸野田が中高一貫校に進学していたのだ。
「でもそれならどうして、噂の内容が段々と過激になってるのでしょうか?」
湊は思案した。
まだ学校が始まって2日目ということもあって中学生は午前中で帰宅することになっていたのだが、手当てをしてもらったり、家に帰ってからもずっとこれからの事を考えていたらすっかり夜になってしまった。
そして彼女は1つの結論を出した。
「岸野田の意思を継いだ人がいる。」ということだ。
そうすると思い浮かんだのは岸野田の手下のことだった。
父が教師に頼んで岸野田の手下でありそうな人をピックアップしてもらった表を見る。
「手下で岸野田の意思を継ぎそうなのは…最有力は村上で次点が奥本ですかね。」
明日からその2人に特に注目することに決めた湊は疲れですぐ寝てしまった。