湊の秘密と過去
湊はそう決心し、少し遼河の家で休んでから家に帰った。
「これは遼河の問題であるとともに私の問題でもあるのだから。」
湊は昔の自分の写真を見てそう言った。
…………彼女こそが今井湊叶である。
湊叶は自殺未遂をして一時期は命が危ういと言われていた。しかし奇跡的に一命を取り留めたのであった。
「湊叶、元気になって良かったよ。で、これからのことなんだが…」
湊の父、今井浩介は少し詰まって言った。
「流石にあの学校にはもう戻りたくないだろう。
私は大企業社長という立場から各方面の人から取り計らって貰って湊叶を安全な学校に転入させてもらえることになった。」
「だけどそこは元いた学校からそこまで離れていないし、私の名前は生憎世間的に有名だから湊叶には苗字と名前を変えてもらうことにした。名前は任意だけどな」
ということを父から告げられ、湊叶は正直安堵した。
でも一つだけ心残りもあった。
「もう音川君には会うことはできないのか…」
すると浩介はこう言った。
「実は私の兄の子供、つまり湊叶にとってはいとこにあたる人があの学校の教師だから音川という子の面倒を見てくれているとの事だ。
状況次第だが、その子とも会える可能性はあるよ。」
音川君に会える希望があると知った私は、今井湊叶から中村湊へと名前を変えて小学校に転入したのであった。
もう前の学校のようなことは起こらないとは分かってはいたもののやはり少し怖さはあったため、湊は全体的に明るい雰囲気にイメチェンし、人達の会話に積極的に入るようになった。
……正直輪の中にいるのは辛かった。昔から人とはなすことが苦手で図書室に入り浸ってたんだから。
だけど前の学校とは決定的に違うところがあった。
それは、クラスや学校の皆が湊のことを歓迎して、暖かく迎えてくれたということだ。
だから次第にクラスメイトとは打ち解けることができ、放課後に遊んだりすることになることもあった。
しかし遊んでいて楽しいのにも関わらず、湊の中では何かの思いが澱のように沈んでいた。
「音川君大丈夫なのかな?変な噂が流れていないといいけど…」
しかし1年近くたったある日その心配が的中することになる。
とある日の朝、湊が学校に行くと何人かのクラスメイトが私のところに向かってきて話をしてきた。
「うちらの学校から近い隣の小学校の子が呪われてるって噂されてるらしいね。一昨日にまたその子周りの誰かが亡くなったらしいし。」
「なんでその子は呪われてるなんて言われてるの?」
湊はすぐに聞いた。
「その子の周りでは1年の間に3件も事故があってそのうち2件が死亡事故だったのよ。
1人は屋上から飛び降りたらしいんだけどね。」
クラスメイトの1人が言った。
湊は「呪われている」と言われている人が遼河だということにすぐに気づいた。
だって…飛び降りたの私だから。
「それって誰から聞いたの?」
湊は尋ねた。
「私はその小学校の習い事で一緒の友達から聞いたんだ。
でもこの噂は学校中で広まってるらしくて、一説にはその学校の四天王、勉強の成績とか運動が特にできる4人の中の誰かが発信源だとか。」
もしもその噂が本当ならば四天王の遼河を除く3人の内の誰か、もしくは全員が何かしらの関連を持っているだろう。
意図は全く分からないけど。
とりあえずこの件についてはあんまり使いたくは無かったけど親の権力で色々と調べてもらおうと湊は思い家に帰った。