遼河の過去(2)
「お邪魔します。」
そう言って湊は遼河の家に入ってきた。
「ちょっと居間のソファーで座って待ってて。」
と遼河に言われて湊はソファーに座り辺りを見回すが何か違和感を覚える。
そしてはっと気づく
「この家には遼河君1人しか住んでいないのか。」
そして仏壇が目に入り、遼河の両親が亡くなっていることを理解した。
そんなことを考えていると、遼河が湿布や絆創膏などを持って戻ってきた。
「中村さん痛みは大丈夫ですか?久しぶりに使うことになったから場所をはっきりとは覚えてなくて時間かかってしまって申し訳ない。」
何故か遼河に謝られてしまった。
「私の方こそ、あそこで気をつけていれば怪我することなんてなかったので。」
そもそも遼河が謝る理由などないのだ。
「こんな優しい人がなんで呪われているなんて言われないといけないの?」
今日の朝クラスの人達にずっと
「遼河は呪われてるから近づかない方が安全だよ」と言われていたのだ。
でも湊はそんなことは全く信じておらず、小さく呟いた。
だがその声は遼河まで届いていたらしく、
「呪われていると言われるのは仕方ないんだ。
だって僕の周りの人達が1年で4人いなくなったんだから」
そして彼は2人の友達に起こった事件について語った。
少しして彼は
「あの後、しばらく学校を休んでたんだ、流石に精神的に持たなくて。でも更に酷いことになるとは思ってなかったけど。」
と苦しそうな、悔しそうな声で言った。
「音川君、無理して言ってくれなくてもいいよ?
でも私は音川君のこと信じてるよ、呪われてなんかいないって。」
湊は今までに無いくらい強い口調で言いきった。
「でも、僕は両親までも亡くした。僕は某名探偵みたいな『死を呼ぶ少年』だったんだよ。」
こういうと遼河は自分の家族の話をし始めた。
「僕が小学校5年生の時に事故は起こったんだ。
僕はその日終業式で、両親は買い物に行っていたんだ。だけど僕を待っていたのは両親ではなく、救急隊員だった。彼らは僕に事故の説明をしてくれた。
どうやら事故を起こした加害者は前科があって執行猶予中だったらしい。
現場の写真を見た時にはその慘さに戦慄した。
結局両親は救命活動も虚しく亡くなってしまった。」
少し間が空いて
「両親が亡くなったあと、本格的に僕は呪われていると言われるようになり親友の駿佑を除いて僕に近づこうとはしなかった。でも駿佑が僕に近づくことによって、駿佑がいじめに遭ってしまった。だから彼とも学校では距離を置くことにした。そして今に至ると言う訳だ。」
「酷すぎる…音川君だって辛いだろうに、更に追い打ちをかけるなんて…許せない」
湊は泣いていた。
そして決心した。
「この噂を断ち切り、音川君を救う」ということを。