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遼河の過去(1)

まあまあ長文回です

遼河は家に着いたあと湊のことについて考えていた。

「湊って子の声どこかで聞いた事ある気がするけど…気のせいなのかな?でも直接彼女に聞くのは流石に気が引けるしなあ」


遼河は小学校の高学年の頃から今までに話したことがある人は全員声を覚えている。話した人が合計でも両手で数えられる程しか居ないのだから当たり前ではあるが。


気づけば数時間が経っていて、もう家の中には夕陽が差し込んでいた。

「夜ご飯の準備をしないとな…」

適当にスーパーの特売で買ってきた野菜やら肉やらを切って炒めたり、味噌汁を作ったりして手早く夜ご飯を作った。

準備をすると言っても1人分なのでそこまで大変ではなかったし、もう長らくこういう生活をしていたので慣れてしまったというのもある。


遼河は元々一人っ子で家族3人暮らしをしていた。

しかし遼河が小学校5年生の時に両親を事故で亡くした。

両親を事故で亡くし、悲しみにくれる遼河に掛けられた言葉はひどいものであった。


「遼河の周りの人って全員いなくなるよね」

「遼河って呪われてるんじゃない?」

「遼河は人殺す趣味なんだ、家族にまで手を出して」


そうだよ、僕は呪われているんだよ。

そうでなければ1年で関わりのあった3人が亡くなって、1人が一時重体になってその後転校するなんてことある筈なんてないんだから。


4人の内の3人は交通事故で亡くなっていて、理由は正直よく分からない。

でも後の1人…今井湊叶だけはそうではなかった。


湊叶とは小学校低学年の頃から親友だった。

地味で目立たずクラスで孤立していた彼女はよく図書室にいた。

僕は本を読むことが好きでよく図書室に通っては本を上限まで借りて、数日で読んで返してまた借りるということが日課だった。

小学校の図書室にはほとんどと言ってもいいほど人がいることはなく、大体僕と湊叶の2人だけでいた。


そんなある日、湊叶が

「君さあ、毎日本をたくさん借りてるけど本好きなの?」

と聞いてきた。

「僕は、本を読むことが趣味なんだ。作者の考えとか、物語だったら登場人物のことを考えるのが好きだから。かくいう君も毎日図書室にいるけど本は好きなの?」


と聞き返すと、彼女は

「私も今は読書が好きだよ。最初の頃はクラスの人達や雰囲気に馴染めなくて…図書室に逃げていただけだったから本にはあまり興味はなかったけどね」

と答えた。


それ以降僕たちは数年間毎日図書室で本を読んでは感想を言いあったり、おすすめの本を薦めあったりしてとても楽しい日々を送っていた…はずだった。


小学校4年生になってからも2人は一緒に図書室にいた。

しかしその時の湊叶には変化があったのだが、鈍感だった僕は全然気づくことが無かった。


そして小学校4年生の終業式の日の少し手前、12月の半ばのある日事件は起きた。


その週は僕は当番があって少し図書室に向かうのが遅くなってしまった。

しかし図書室には彼女の姿はなく、代わりに1枚の手紙が置かれていた。


「はるか君へ

低学年のときからいつもいっしょに本を読んだり、たくさんのお話をすることが出来てとても楽しかったです。

2人で話をする時だけが私にとって楽でいられるとっても大切な時間でした。

だけど私はクラスの人からのいじめを耐えることがもうできません。

何度も先生には相談したけど、相手が四天王の1人だったからなんにも話に真面目に対応してくれなかった。

私は君のことが好きです。

また長い時間が経って天国で会えたらいいね。

今井湊叶」


僕は急いで普段は立ち入り禁止の屋上に行こうとした。

普段はもちろん扉は閉じているのだがその日だけは違った。

屋上に登ると彼女は既に柵にのぼっていた。

僕は全力で「死なないで!」と叫んだ。

だけど彼女はこちらを見て「ありがとう」といって飛び降りてしまった。


その後騒ぎを聞きつけた先生たちが僕に色々なことを聞いてきたけど、あの手紙があったこともあり僕の無実はすぐに証明された。


ここまでも決して良くなかった。

だって…僕も湊叶のことが好きだったから。

だからこそ悔しくてずっと泣いていた。


しかし本当の地獄はここからだった。

実はこの事件が起こる1ヶ月くらい前に、僕の友達が車にはねられて亡くなってしまった。

これに関しては完全に車側が悪く、居眠り運転をしていた為に起こった事故らしく勿論僕は何も関与していない。


しかし、その1件と今回の1件で僕は完全に何かしら

呪われているとの噂が出回った。

大事な人を失った悲しみに噂の件も加わり、僕は完全に疲れてしまっていてしばらくの間誰とも話すことはなかった。


そんな中声を掛けてくれたのは、親友の村上と湊叶の担任の先生で、今のクラス担任でもある大薮先生だった。


村上は、初めはみんなの前で噂を否定してくれていて僕自身とても救われていたけれど、流石に親友にまで被害を負わせたくないという僕の一心でみんなの前で言うのはやめてもらった。

でも村上とは途中まで帰り道が同じなのでそこまで一緒に帰ったりその中で慰められることもとても多かった。


大薮先生は、休み時間や放課後によくお世話になった。

1人だった僕を呼んでは、色々な話をしてくれた。

先生の過去や、時事問題、趣味など…

校内で蔓延している僕の噂を僕自身に気にさせないようにしようとする優しさあってのことだろう。


そんなことを思い出していたらもう寝る時間になっていた。

両親のことはまたちゃんと思い出すと自分に誓って、布団に入った。


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