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テーマ詩集:あたし

あたしの選手宣誓

作者: 歌川 詩季

 したことないです。

 宣誓!


 あたしはスポーツマンシップにのっとり——



 ちょっと待って!

 シップってことは船のことだよね?


 船をのっとるだなんて

 これって りっぱなシージャックぢゃないの???


 まさか こんな みんなのまえで

 犯行予告をするはめになるだなんて

 あたしは思ってもみなかった


 これぢゃあ いまからはじまるはずの

 大会どころぢゃあないよね

 警察や海上保安庁が

 ほあん ほあん♪ ってサイレンを鳴らしながら

 さっそく動きはじめる



 やばい!

 こんなつもりぢゃあ なかったのに

 お立ち台のうえで犯行声明をあげてしまったからには

 あたしは きょうからおたずねものだ


 正々堂々 戦うことを誓うだなんて

 武力行使まで 断言してしまったんぢゃ

 もう言い(のが)れもできない


 開会式にならんだ選手全員と

 大会運営者 一同

 それにオーディエンスのみなさんが

 お立ち台にのぼったあたしの顔を目撃して

 この選手宣誓を耳にしてる


 100回 取り調べをして

 100回 裁判にかけても

 証人には困らないだろう

 ほんとに なんてことだ

 あたしには シージャックをするつもりなんて

 目玉焼きの睫毛(まつげ)ほどもなかったのに

 とはいえ ここまではっきりと

 犯行を明言してしまえば

 どんなに凄腕の弁護士をつけたってどうしようもない



 だからあたしは たったいまから逃亡者だ

 ごめんね チームのみんな

 ごめんね 応援してくれたクラスメイト

 ごめんね おべんとうをつくってくれたお母さん


 あたしはお立ち台をおりたら

 大会委員長を人質にとりながら

 会場をはなれて どこかに身を隠す


 ごめんね もう二度と

 みんなには逢えないかもしれないけど

 恨むなら あたしに

 選手宣誓をさせたやつを恨んで欲しい

 この件はきっと そいつの陰謀だから


 あたしはそいつに濡れ(ぎぬ)を着せられたのだ



 こうして あたしの大会は

 開会式とともに終わりを告げた



 ちくしょう はめられた!!

 選手宣誓も、シージャックもしたことないってこと。

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制作:冬野ほたる先生

挿絵(By みてみん) 制作:あき伽耶先生
― 新着の感想 ―
[一言] 「あたし」,実はちょう有能なのでは シージャックってかなり難しいです
[良い点]  そんな言葉、普段使いませんよね。  たくましい想像力、もとい妄想力が素晴らしいです。  お母さんのお弁当、きっと教室に置き去りに……! [一言]  小さい頃。 「先生!」  だと思って…
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