9話 創造と召喚
改めてスキルを確認したので、さっそくまだ使っていないスキルを試してみる。
私は家の周辺に落ちている木の枝や小石など目についた素材を適当に集めていく。
それなりの量が集まったので、玄関の前でそれらを広げる。
「さて、初めての≪創造≫だけど、何を作ろっかなー」
素材を見つめながらしばし思案する。
「あんまり難しいのは無理だし、ひとまずは簡単なもので試そう」
私は木の枝をいくつか目の前に置いてスキルを使う。
「えーっと、作りたいものをしっかりイメージして…よし、創造!」
すると、数本の木の枝が光を放ちながら形を変化させていく。
光がおさまると、そこにはほぼイメージ通りの木製のマグカップが出来上がっていた。
「うん、ちょこっと形がいびつだけど、成功!」
マグカップのサイズに対して十分な量の木の枝を用意したからか、数本が使われずに残っていた。
それを見て、気になることが出来たので、もう一度同じくらいの量でスキルを使ってみる。
今度は全ての素材が使われ、ぱっと見は同じようなマグカップが出来上がった。
私はその二つを持ち上げて、見比べてみる。
すると、見た目は同じだが、後から作ったものの方が若干重さを感じた。それに作りもややしっかりしたように見える。
2回目のスキル使用の際に、目の前の素材を全部使い切るようにイメージしたのだ。ただ、使いきるだけでは大きさが大きくなるだけになるので、素材の密度をあげるようなイメージをしてみた。
「つまり、同じものでもイメージ次第で強度や重さを調整が出来る、と」
これは、かなり可能性が広がる気がする。
このスキル≪創造≫は素材を準備すれば、自分のイメージしたものを創造できるという超便利スキルである。
ただし、素材自体を変化させる事は出来ないので、木からは木製の物、鉄からは鉄製の物といった具合に、用意した素材製の物が出来上がる。
私はこのスキルにかなり可能性を感じている。だって、どんなに硬くて加工の難しい素材でも、このスキルを使えば自分のイメージ通りの形に変えられるということだ。めちゃくちゃ頑丈な武器や防具だって作れるし、拠点を充実させるのにも有用だろう。さらには、薬草などの素材から何かしらの薬なども作れるようになるかもしれない。
まぁ、扱える素材はスキルのレベルで制限があるようなので今すぐは無理だけど。
そこから何度かスキルを使って、あっても困らない食器類を作ってみた。
段々と使いなれていくのが分かる。本当に自分のイメージ次第でなんでも作れそうだ。
なんて考えながらせっせと作っていると、いつの間にかスキルレベルが2に上がっていた。
最初は上がりやすいのかな?これからもコツコツレベルをあげていこう。
そうだ!もっとレベルが上がっていい素材が見つかれば、フォルティナ様の神像もつくろう!
とりあえず、今日のところはこの辺にしよう。
さてさて、それでは次のスキルに参りましょう。
実はこのスキルを使うのが一番楽しみだったりする。
そう≪召喚≫である。
おそらく長い年月を過ごすことになる今世で、ずっと一緒に過ごしてくれる存在が私には必要だと思った。そして、それは同じ人間では難しいことは承知している。不老不死の人間なんてそうそういないだろうからね。
じゃぁ人間以外の家族をつくればいいじゃん!ってことでこのスキルを選んだ。
そもそも私は動物が大好きだ。ペットを飼うのが夢だった。
しかし、このスキルを転生後すぐに使わなかったのには理由がある。
≪召喚≫で呼び出せる生物は基本的に魔物だ。スキルのレベルに応じて呼び出せる数が変わる。今は(0/2)となっているのは、2体召喚可能で現在0ということだ。
そして、召喚者自身の強さに応じて呼び出せる魔物もかわってくる。自分と同じ程度かそれ以下の強さの魔物しか呼び出せないのだ。つまり今の私に呼び出せるのは、最弱の魔物ということ。ということはだ、自分の身を守る術も確立出来ていないのに、さらに自分より弱い存在を呼び出すのは無責任では?と考えたのだ。
一度、召喚した魔物は召喚者との間に強い繋がりが出来る。その繋がりは強く、私が死ねば召喚した魔物も死んでしまうそうだ。
ただし、私が死なない限りは死なない。
どんなに傷付いて瀕死の状態になっても、時間を置いてから召喚し直せば元の状態に戻るらしい。
でも、私はきっと傷付くさまを見て平気ではいられない。出来るだけ怪我をさせないようにしてあげたい。
私は、自分を守ってもらうために召喚をするのではない。生涯を共にする家族として召喚するのだ。
それがあって、まだ召喚を試していなかったのだが、少し考えが変わった。
私ひとりでは出来ないことも多いし、スキルは使わないとレベルが上がらない。なので、ひとまず1体目は早々に召喚しようと思いなおした。もちろん、怪我させないように、そして私自身が死なないように細心の注意を払おうと思う。
初めての召喚。一体どんな子が私の元に来てくれるのかとても楽しみだ。
異世界での最初の家族である。
私は心を落ち着けるように深呼吸をした。
「ふぅ…よし!召喚!」
私がそう言ってスキルを使用すると、目の前の地面に魔法陣のようなものが現れた。